独断的映画感想文:風立ちぬ
日記:2013年8月某日
映画「風立ちぬ」を見る.
2013年.監督:宮崎駿.
声の出演:庵野秀明(堀越二郎),瀧本美織(里見菜穂子),西島秀俊(本庄季郎),西村雅彦(黒川),スティーブン・アルパート(カストルプ),風間杜夫(里見),竹下景子(二郎の母),志田未来(堀越加代),國村隼(服部),大竹しのぶ(黒川夫人),野村萬斎(カプローニ).
映画の冒頭は堀越二郎少年の夢.
自宅の大屋根の天辺に取り付けた自作の飛行機に乗り込み大空へ飛翔するも,街を襲う敵の航空隊との空中戦になるや眼鏡が吹っ飛び敢え無く墜落,二郎少年は近眼なのである.
この頃イタリアの高名な航空機設計家カプローニ伯爵と夢で出会った二郎は,設計家として生きる決意をする.以降二郎は,事あるごとにカプローニ伯爵と夢で話し合うことになる.
大学に進んだ二郎は,帰省先から下宿に戻る途中の列車で,飛ばされた帽子を拾ってくれた少女菜穂子と知り合うが,直後に起こった関東大震災の中,菜穂子を自宅まで送り届ける.
やがて三菱に就職した二郎は,設計家としての人生を歩み始める….
この映画は二郎・菜穂子の純愛と,少年の夢についての物語である.
二郎と菜穂子の生きた日本は未だ貧しく,科学技術の後進性に悩まされていた.空を飛びたい,素晴らしい飛行機を作りたいという二郎の夢は,その時代,戦前の日本では,軍用航空機を作ることに直接結びついていた.
少年の夢をそのままに大人になった天才技術者は,優れた戦闘機を懸命に作り,その結果故国の破滅に向かっての進行を図らずも後押しすることになる.
物語は,二人の純愛の結末と二郎の新型戦闘機のテスト飛行が成功したことを述べて終了するが,それに続くエピローグ・カプローニ伯爵と二郎との最後の夢は,哀切極まりない.苦い印象を後に残す,しかし感動的な映画.
それにしても,全編を貫く航空機の飛翔シーンの美しさは例えようがない.エピローグで画面一杯に現れる失われた飛行機達の幻には,涙を禁じ得なかった.
なお,二郎は実在の航空技術者で零戦の生みの親である堀越二郎氏をモデルに創作された人物,里見菜穂子も架空の人物である.
★★★★☆(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント