番外:独断的歌舞伎感想文:八月納涼歌舞伎 第三部 狐狸狐狸ばなし/棒しばり
日記:2013年8月某日
歌舞伎座で「八月納涼歌舞伎 第三部」を見る.
「一、江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし(こりこりばなし)」.
出演:伊之助(扇雀),おきわ(七之助),おそめ(亀蔵),おうた(歌江),福造(巳之助),又市(勘九郎),重善(橋之助).
北条秀司作の新歌舞伎.
元上方女形の伊之助は今は手拭いの染め屋.女房のおきわは女郎上がりで,伊之助が惚れている弱みにつけ込み,住職の重善と密通している.
重善が大店の娘おそめとの養子縁組話に傾いているのに苛立つおきわは,重善から亭主を殺して見ろと挑発され,弟子の又市が買ってきた染め薬をふぐ鍋に盛って,伊之助を毒殺する.
無事葬式が終わり伊之助を荼毘に付した翌朝,伊之助が普段通りに立ち働いているのでおきわは吃驚…,というブラックコメディ.
扇雀が如何にも元上方女形という役柄を,コメディアンて体を張って演じているのが印象的.この人は本当に何でも出来るんですね.
露見すれば死罪という「密通」を居直ってやってのけているという緊張感がもう少しあっても良いかと思えたが,全体としてはテンポの良い抱腹絶倒の楽しい一幕であった.
「二、棒しばり(ぼうしばり)」.
出演:次郎冠者(三津五郎),太郎冠者(勘九郎),曽根松兵衛(彌十郎).
八月歌舞伎の筆頭と言って良い素晴らしい舞台.狂言の「棒しばり」にもとづくもので,筋は皆様ご存知と思う.
三津五郎の踊りはまさに絶品.棒のさばきを見せる序盤から,縛りの形となって以降の踊りまで,誠に楽しく間断するところがない.踊りのことなど何も判らない小生が,ああ楽しい,面白いと時の経つのを忘れて見惚れてしまう三津五郎の藝の力は,勘三郎亡き後のこの人の執念を感じさせて,誠に印象的であった.
これを受けて立つ勘九郎,彌十郎の踊りも文句のつけようもなく,最後まで楽しく見た.
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