独断的映画感想文:鍵泥棒のメソッド
日記:2013年8月某日
映画「鍵泥棒のメソッド」を見る.
2012年.監督:内田けんじ.
出演:堺雅人(桜井武史),香川照之(コンドウ/山崎信一郎),広末涼子(水嶋香苗),荒川良々(工藤純一),森口瑤子(井上綾子),小山田サユリ(香苗の姉),木野花(香苗の母),小野武彦(香苗の父).
水島香苗は大手出版社で雑誌の編集長をしている34才の女性,この年末には結婚すると予定を決め相手探しに乗り出す.
夜の公園脇で高級車で待機している山崎信一郎,団地から出てきた初老の男を一撃で刺し殺すと死体をトランクに押し込み,手際よく後処理をして車で去って行く.
桜井武史は30代の売れない俳優,今首つりに失敗し(紐が切れた),アパートの自室で呆然としている.やがて桜井は気を取り直して風呂屋へ行くことにする.
山崎も一部浴びてしまった血を洗い流そうと同じ風呂屋に入る.分厚い財布をロッカーに入れる山崎,ところが山崎が石けんで滑って倒れたのを見た桜井が,ロッカーの鍵をすり替える.
桜井はそのまま車で逃亡し山崎の豪華マンションに入ることに成功,一方山崎は失神したまま救急車で病院に運ばれるが,記憶喪失で入院,その後病院で知り合った水島の助けで,桜井としてぼろアパートに帰宅する.
一方桜井の持つ山崎の携帯には殺しの依頼をした工藤から連絡が入り,桜井は山崎として新たな殺しを受ける羽目になる.
片や山崎は桜井として前向きに俳優の仕事に取り組むが,演技理論を素直に猛勉強して受け入れる一方,リアルな殺し屋像を演じて評価され,俳優に前向きに取り組むことになり,香苗もそんな山崎を助けるのだが….
という訳で山崎の記憶喪失状態で仕込まれた伏線が,ひょんなことで山崎の記憶が甦ると同時に急転直下動き出す,この仕掛けがまず面白い.
更に,駄目人間桜井,超真面目お嬢様香苗,殺し屋山崎がそれぞれに持ち味を発揮して苦境を乗り越える物語の展開が絶妙で(予告編にはこれから先は出てきません),要するにこの映画はラブコメでハッピーエンドなのだ.
主役3人がそれぞれに魅力的,特に広末涼子演ずる水島香苗ははまり役と言えよう.
映画の冒頭ではこれがハッピーエンドにまとまることは至難と思われたが,よくできたプロットである.視聴覚芸術としての映画の魅力と欠陥を遺憾なく発揮した楽しい好編,見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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