独断的映画感想文:オレンジと太陽
日記:2013年9月某日
映画「オレンジと太陽」を見る.
2010年.監督:ジム・ローチ.
出演:エミリー・ワトソン(マーガレット・ハンフリーズ),デヴィッド・ウェナム(レン),ヒューゴ・ウィーヴィング(ジャック).
1986年,英国ノッティンガム.ソーシャルワーカーのマーガレット・ハンフリーズは,豪州からやってきたシャーロットの訪問を受ける.
幼いとき豪州に送られた彼女は,自分の出自を求めて,微かに記憶にあるノッティンガムでの調査を彼女に託す.子供のみで豪州に渡ったという彼女の話に,そのような違法行為はない筈,と考えたマーガレットは,しかし自分が主催する養子出身の成人のケアの会で,ニッキーという女性から昔別れたきりになっていた弟と最近再会したという話を聞く.
その弟ジャックも幼少時に単独で豪州に送られた一人だった.
シャーロットは親が生存しているのに孤児院に収容され,そこから豪州に送られた,又親には養子に出したという虚偽が伝えられていた.マーガレットは調査に乗り出すが,やがて英国・豪州の両政府が行った組織的違法行為が明らかになり始める….
映画では,マーガレットが上司の協力により公的資金を受け,この児童移民の実態調査と親探しを続ける活動を描く.
彼女の活動は児童移民に関わった教会やその周辺の団体の利益を損ねる結果となり,マーガレットは言われ無き誹謗中傷を受けたり,脅迫や嫌がらせに直面する.又移民達の受けた仕打ちに心理的ショックを受けたマーガレットは,心的外傷後ストレス障害にも苦しむこととなる.何よりもこの活動に従事して,彼女自身の家庭が崩壊の危機に瀕することになる.
映画はその過程の一つ一つを丁寧に淡々と描いていく.
エミリー・ワトソンの演技が素晴らしい.また移民達を演じる俳優達が皆心にしみる演技を披露する.一見の価値ある映画.
映画の終盤,マーガレットの家族も豪州にやってきて,移民達との夏のクリスマスパーティーを楽しむ.移民の女性からプレゼントをもらい,「あなた方は何かプレゼントを用意したの?」と聞かれたマーガレットの息子が,「ママをあげたよ」と答えたシーンが印象に残る.
★★★★(★5個が満点)
なお,児童移民についてのWikipediaの記載は以下の通り:児童移民とは、養護施設の子供たちを長い間イギリス連邦の旧植民地に移住させた事業。作中におけるオーストラリアでは収容施設での重労働、暴力、性的虐待がはびこったが、教会により長く隠されてきた。児童移民の数は13万人を上回ると推計され、2009年11月にオーストラリア首相が、2010年2月にイギリス首相が事実を認め、正式に謝罪をしている。マーガレット・ハンフリーズは原作の印税をもとに基金を設立し、現在も児童移民だった人々の家族を探す活動を続けている。
人気ブログランキングへ
コメント