独断的映画感想文:塀の中のジュリアス・シーザー
日記:2013年10月某日
映画「塀の中のジュリアス・シーザー」を見る.
2012年.監督: パオロ・タヴィアーニ/ヴィットリオ・タヴィアーニ.
出演:コジーモ・レーガ(キャシアス(カッシオ)),サルヴァトーレ・ストリアーノ(ブルータス(ブルート)),ジョヴァンニ・アルクーリ(ジュリアス・シーザー),アントニオ・フラスカ(アントニー(マルカントニオ)),フアン・ダリオ・ボネッティ(ディシアス(デチオ)),ヴィンチェンツォ・ガッロ(ルシアス(ルーチョ)),ロザリオ・マイオラナ(メテラス(メテロ)),ファビオ・カヴァッリ(舞台監督).
イタリア/ローマ郊外にあるレビッビ刑務所では,毎年演劇実習を囚人の志願者を募って行い,その上演は一般観衆を刑務所内劇場に招待して行われる.
今年の演目は「ジュリアス・シーザー」と決まり,早速オーディションが開始される….
この映画はドキュメンタリー映画である.
事実,演じる俳優は皆囚人で,唯一のプロの俳優であるブルータス役のサルヴァトーレ・ストリアーノも,かってこの刑務所の囚人であった.
囚人達はいずれも十年以上の懲役刑,中には1975年に逮捕されて以来の終身刑服役者もいる.
ドキュメンタリーではあるが,この映画は素人の囚人が実習を重ねて次第にいっぱしの俳優になっていく過程を描く,等というものではない.囚人達はオーディションの時から既に,凄まじい存在感と強烈な個性を遺憾なく発揮している.
刑務所の各棟を舞台に繰り広げられる練習風景は,そのまま異形のローマ市中の舞台化と見えてくる.謀略と殺人の物語であるこの劇を演じる囚人達は,自らの罪状とこの配役の設定との二重の負荷に直面し,独特の迫力と苦悩を画面に繰り広げるのだ.そこに於けるタヴィアーニ監督兄弟の才腕には舌を巻く.
ベルリン国際映画祭金熊賞受賞の傑作.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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