独断的映画感想文:舟を編む
日記:2013年10月某日
映画「舟を編む」を見る.
2013年.監督:石井裕也.
出演:松田龍平(馬締光也),宮崎あおい(林香具矢),オダギリジョー(西岡正志),黒木華(岸辺みどり),渡辺美佐子(タケ),池脇千鶴(三好麗美),鶴見辰吾(村越局長),宇野祥平(宮本慎一郎),又吉直樹(戸川),麻生久美子(ポスターの女優),伊佐山ひろ子(佐々木薫),八千草薫(松本千恵),小林薫(荒木公平),加藤剛(松本朋佑).
玄武書房では新しい辞書「大渡海」の編纂を開始している.
担当編集者の荒木は,自分の定年後の後任に社内の変わり者・馬締光也をスカウトする.営業は大の苦手,コミュニケーション能力に著しく欠ける馬締は,しかし下宿先の1階の殆どを書庫にしてもらっている程の本の虫,早速異動してきて,調子は良いが地味な辞書編集にはいまいち向かない先輩西岡,ベテランの女子契約社員佐々木と共に,主管・松本の指導の下,気の遠くなるような辞書編纂の仕事に取り組む.
更に馬締は,下宿の小母さんと同居するようになったその姪・林香具矢に満月の夜に一目惚れしてしまう….
結局15年かかった「大渡海」の編纂と馬締・林のロマンスを描くほのぼの映画.
辞書編纂という地味な作業を気負うことなく淡々と,しかしテンポ良く描く監督の腕はなかなか素晴らしい.上映中観客席からは幾度も笑い声が上がったが,この映画の笑いは主に間の良さと間の外し方にある.
若いが達者な俳優からベテランまで(猫も含む),皆この呼吸が良く発揮されていて見応えがあった.
男性3人のキャラクターの配置も宜しい.
松田龍平は只のオタク社員から,ところを得てどんどん仕事に没頭し力強くなっていく,しかしやはり変わり者の編集者・馬締を好演.これに対する,辞書には向いていないが辞書作りがやはり好きで,営業的才覚で「大渡海」をサポートする西岡の対比が面白い.
また,ベテラン加藤剛の,辞書の監修者で動かざること山の如き人物に見えて,用例採取のために女子高生の溜まり場に出没し「チョベリグ」等と書き留める老研究家が印象的.特にこの人の,深い暖かみのある台詞術は,実に聞き応えがある.
女優陣もいつも通りで素敵,安心して笑ったり涙ぐんだり最後まで楽しめる映画である.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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投稿: 藍色 | 2015/10/06 16:50