独断的映画感想文:許されざる者
日記:2013年10月某日
映画「許されざる者」を見る.
2013年.監督:李相日.
出演:渡辺謙(釜田十兵衛),柄本明(馬場金吾),柳楽優弥(沢田五郎),忽那汐里(なつめ),小池栄子(お梶),近藤芳正(秋山喜八),國村隼(北大路正春),滝藤賢一(姫路弥三郎),小澤征悦(堀田佐之助),三浦貴大(堀田卯之助),佐藤浩市(大石一蔵).
クリント・イーストウッド1992年公開の名作のリメイク.
映画の冒頭,北海道の雪原を走る6騎の官軍兵士.幕軍の敗残兵・「人斬り」十兵衛を森に追い詰める.しかし待ち伏せた十兵衛は官軍兵士を皆殺しにしてしまう….
1880年,十兵衛は落ち延びた地でアイヌの女性と出会い剣を捨てることを誓うが,その妻は3年前に死に,今は二人の子供と暮らしていた.
ある日かっての戦友馬場金吾がやってきて,賞金稼ぎに誘う.一度は亡妻との約束を楯に断った十兵衛だが,冬を越す資金を得るため止むなく同行する.
目的地鷲路の街には,かって幕軍の残党狩りをした大石一蔵が,警察署長として絶対的支配を敷いていた….
大筋はほぼイーストウッド版と同様,しかしイーストウッド版が穏やかな終わり方で,時にとぼけたユーモアもあったのに比べると,本作はより痛切な悲哀に満ちている.
「人斬り」十兵衛の業は深いと言わざるを得ない.
それにしても,渡辺謙の演じる十兵衛の迫力はどうだろう.特に最終局面,一蔵との対決シーンでの十兵衛の悪鬼の様な恐ろしさと凄みは,観客を圧倒するだろう.
全てが終わった後,重ねた殺人の重さにうちひしがれる十兵衛の悲哀は例えようもない.
俳優では他に柄本明,柳楽優弥,忽那汐里が良かった.
柳楽優弥と忽那汐里によるエピローグは,この重厚な悲劇の幕を引くのにふさわしい.
美しい自然とそのなかで繰り広げられる殺人劇の双方を見事に描いたカメラ,映画全体の雰囲気を決定した音楽の美しさも,賞賛に値する.
見て損はなし,特に終盤の30分は暫く忘れられそうにない.
★★★★☆(★5個が満点)
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