独断的映画感想文:ゼロ・ダーク・サーティ
日記:2013年11月某日
映画「ゼロ・ダーク・サーティ」を見る.
2012年.監督:キャスリン・ビグロー.
出演:ジェシカ・チャステイン(マヤ),ジェイソン・クラーク(ダニエル),ジョエル・エドガートン(パトリック),ジェニファー・イーリー(ジェシカ),マーク・ストロング(ジョージ),カイル・チャンドラー(ジョセフ・ブラッドリー),エドガー・ラミレス(ラリー),ジェームズ・ガンドルフィーニ(CIA長官),クリス・プラット(ジャスティン).
2001年の9/11以来,首謀者と目されたオサマ・ビン・ラディンを追い求めるCIA,しかし膨大な費用をつぎ込み人手をかけても,ビン・ラディンの行方を掴むどころかテロの続発を押さえることも出来ない.
パキスタンに配属された若いCIA要員マヤは,執念の捜査でアブ・アフメドという名前を掴みその行方を追う.彼こそがビン・ラディンの連絡員との確信を持ったからだ.
しかしCIAパキスタン支局長始め要人は彼女の捜査を評価せず,9/11以来10年の歳月が流れた….
圧倒的な情報量とアメリカ軍のリアルな映像を使って描かれる,ビン・ラディン追跡のスパイアクション.
映画としてはプロットの出来の良さと言い,その緊張感の高さとリアルな画面展開と言い,一級品と言わざるを得ない.外国市民の逮捕と拷問という無法な活動にも関わらず,マヤの必死の捜査を見れば,観客は彼女に共感し,全てが終わった後に彼女が流す涙にも納得するだろう.
しかし「テロとの戦い」が世界に何をもたらしたかを考えるとき,そのまっただ中に題材を求めてアクション映画の新ジャンルを確立したとも言えるこの映画には,微妙な違和感を持つ.映画に引き込まれた自分自身が腹立たしいのである.
考えてみればこの映画は,事実に徹底的に取材したと言いながらも,最初から最後までCIA要員マヤの視点のみから見た映画であった.
同じ監督の「ハート・ロッカー」は,同じ「テロとの戦い」を題材にしていたが,主人公達は爆弾処理班という実務部隊だった.
その延長線上に,CIA要員の目から見たビン・ラディン殺害作戦の映画化を置いたビグロー監督の「一歩前進」は,この先どういう映画に繋がっていくのだろう?見終わって複雑な思いに落ち込む映画である.
★★★☆(★5個が満点)
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