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2013/11/01

独断的映画感想文:ハンナ・アーレント

日記:2013年10月某日
映画「ハンナ・アーレント」を見る.1_3
2012年.監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ.
出演:バルバラ・スコヴァ(ハンナ・アーレント),アクセル・ミルベルク(ハインリヒ・ブリュッヒャー),ジャネット・マクティア(メアリー・マッカーシー),ユリア・イェンチ(ロッテ・ケーラー),ウルリッヒ・ヌーテン(ハンス・ヨナス),ミヒャエル・デーゲン(クルト・ブルーメンフェル).
ネタバレあります.
主人公はフランスのユダヤ人キャンプに抑留経験のある政治哲学者.映画でも触れられる「全体主義の起源」は1951年に出版されセンセーションとなった.
その彼女が,1960年にイスラエルの諜報組織・モサドに逮捕され1961年4月からエルサレムで裁判が始まったナチの幹部,アドルフ・アイヒマンの裁判傍聴記を執筆することになる.この映画はその執筆と出版後の顛末の物語.2_5
イスラエルに飛んだハンナはアイヒマンの裁判を傍聴するが,苦しんだ挙げ句に彼女が発表した論文は,アイヒマンを思考を放棄した平凡な官僚と評したものだった.一方裁判で明るみに出た,アイヒマンに協力したユダヤ人社会の指導者に言及した.
これらの論評は各々一人歩きし,ハンナはアイヒマンを悪魔と断ずることを期待したユダヤ人社会から,激しい非難を浴びる.
ハンナは思考を放棄した官僚が,いかに重大な悪を実行することが出来たのかを問題にしたのだった.
しかし長年の同僚達もことごとくハンナ非難の側に回る.ハンナは学生で満員の講義室で自説を展開し,批判する同僚を論破して学生の喝采を浴びたのだが….
映画はアイヒマン裁判の模様を延々と描写し(使われるのは実写フィルムで,つまりアイヒマン役は本人だ),続いてその傍聴記を書くのに苦しむハンナの姿を延々と描写する.
そして先に述べた講義室のシーンに至って映画は一気にクライマックスを迎えるのだ.
ハンナの講義は素晴らしい.論旨明快でしかも心に訴える.しかしその中にハイデッガーの影はなかったか?
実は彼女と同僚達はかってハイデッガーを師と仰いだ同士で,ハンナはハイデッガーの愛人だったことも示される.ハイデッガーはナチに傾倒し協力していたことでユダヤ人の弟子達から批判されていた.ハンナの旧友ハンスは講義終了直後に,ハイデッガーに言及して彼女を痛烈に批判し去って行く.3_2
映画はアイヒマン裁判事件での彼女の孤高の行動を支持しつつも,彼女の限界も示唆して終わるのである.
日本人には馴染みにくい題材での映画だが見応えは充分.全体主義に於ける人間の悪とは何かを追究し続けたハンナの強烈な人生が,共感できる形で描かれる(彼女の政治主張に共感できるということではない).
見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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