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2014年4月に作成された記事

2014/04/29

独断的映画感想文:凶悪

日記:2014年4月某日
映画「凶悪」を見る.0
2013年.監督:白石和彌.
出演:山田孝之(藤井修一),ピエール瀧(須藤純次),リリー・フランキー(木村孝雄),池脇千鶴(藤井洋子),白川和子(牛場百合枝),吉村実子(藤井和子).
数々の殺人を犯して死刑判決を受け上告中の須藤が,新潮社の記者藤井に手紙を寄越す.自分は起訴された事件の他に3件の殺人を犯しているとの告白の手紙である.3_2
面接に行った藤井に対し,須藤は「先生」と呼ばれる木村の存在を挙げ,木村が無事生き延びることは許せないと,事実の裏付けを依頼するのだった.藤井は,新潮社上司の売れないからとの制止を振り切り裏を取る作業に没頭,やがて恐るべき事件の様相が浮かび上がってきた….
事実に基づく映画である.
淡々と記述される須藤・木村の犯罪の実態には驚くしかない.木村の錬金術の犠牲者は,体を壊した老人や認知症の老人だ.彼等に保険をかけて殺し,或いは土地を奪って売り抜ける.2_2
荒っぽい享楽的な人生もさることながら,人の命を屁とも思わない容赦ない殺しとその殺しを楽しむ姿勢にも嫌悪を感じる.
しかしそれ以上に印象的なのは,山田孝之演じる藤井の方だ.
彼等の事件に引き込まれた藤井は,仕事として我を忘れて取り組む一方,自宅に同居する認知症の母親の世話を一切妻に任せ,妻からの訴えに全く耳を貸そうともしない.事件の報道では上司に決断を迫りつつ,妻から母親のことで決断する様求められてもそれからは徹底的に逃亡する.1
この藤井の狂気じみた行動にも同じ荒涼を感じずには居られない.藤井を含めた人間の凶悪さに,打ちのめされる映画である.
俳優では山田孝之,ピエール瀧,リリー・フランキーが秀逸.見応えあり.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:緋牡丹博徒 一宿一飯

日記:2014年4月某日
先日の「地獄でなぜ悪い」に引きずられて,映画「緋牡丹博徒 一宿一飯」を見る.Photo
1968年.監督:鈴木則文.
出演:藤純子,若山富三郎,待田京介,村井国夫,菅原文太,城野ゆき,白木マリ,山城新伍,玉川良一,小島慶四郎,天津敏,遠藤辰雄,西村晃,水島道太郎,鶴田浩二.
明治の中頃の上州,お竜が厄介になっていた戸ヶ崎一家の戸ヶ崎は,高利貸しの倉持に苦しめられる農民の訴えで倉持と談判をしに行くが,警官隊に待ち伏せされ射殺される.
これは戸ヶ崎の弟分だった笠松が倉持と組んで企んだことで,笠松は生糸工場を起こし女工を酷使する.
戸ヶ崎の計らいで四国の熊虎親分のもとへ身を寄せていたお竜は立ち返るが,笠松の手で戸ヶ崎の跡目を継ぐ勇吉は惨殺される.遂にお竜は流れ者周太郎の助けを借り,笠松一家に殴り込みをかける….
喜怒哀楽をバランス良く配置し,お竜姐さんの魅力満載のやくざ映画である.若山富三郎の熊虎の親分は大好き.
お竜の義理一筋の人生と見せて,片肌を脱ぎ刺青を見せて戸ヶ崎の娘を諭すシーンや,周太郎の遺骸に取りすがり頬ずりして悲しむシーンで見られる別の面が,印象的だ.
やくざ映画全盛時代の好編.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:地獄でなぜ悪い

日記:2014年4月某日
映画「地獄でなぜ悪い」を見る.1
2013年.監督・脚本・音楽:園子温.
出演:國村隼(武藤大三),堤真一(池上純),長谷川博己(平田鈍),星野源(橋本公次),二階堂ふみ(武藤ミツコ),友近(武藤しずえ).
高校生の時仲間と映画サークルを作った平田は,出入り中のやくざ池上を撮影したことで更に映画に夢中になる.2
池上はその時の出入りで敵対する武藤の組を襲うが,武藤の妻しずえに逆襲され失敗,池上の所属する組は壊滅する.しずえは懲役囚となり,その時CMで人気絶頂だった娘ミツコは芸能活動から閉め出される.
10年後,独立した池上は武藤と対立,一方武藤はしずえの出所祝いにミツコの主演映画を完成させようとするが,ミツコはそれに反抗する.3
偶然そこに加わった橋本と未だに自主映画を撮り続けている平田は武藤の依頼に応じ,武藤と池上の抗争をそのままミツコ主演の映画として撮影することにするが….
暴力を本業とするやくざの世界を借りて展開される,流血&スプラッター・エンタテインメントだが,実は映画大好き宣言映画.園子温監督の映画キ○ガイぶりが爆発的に表現されている.4
とにかく各シーンがこれほどはまっている映画も滅多にない.血の海の中で歌うミツコの少女時代の子役・原菜乃華ちゃんの可愛らしさ,二階堂ふみの凄惨な色っぽさ,でんでんや神楽坂恵という園子温映画の常連が,ホンのちょい役で登場するシーンの贅沢さ.
滅茶苦茶な映画はどんどんヒートアップしてクライマックスまで,一気に見せる.最後にあなたが「何じゃこりゃ!」と叫ぶときには,あなたのストレスはいささか解消されていることでしょう.5
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2014/04/13

独断的映画感想文:苦役列車

日記:2014年4月某日
映画「苦役列車」を見る.0_3
2012年.監督:山下敦弘.
出演:森山未來(北町貫多),高良健吾(日下部正二),前田敦子(桜井康子),マキタスポーツ(高橋岩男),田口トモロヲ(古本屋の店長).
自他共に認める私小説家・西村賢太の自伝的作品を映画化.
北町貫多は日雇い人足として働き,稼ぎは酒と風俗に消える19歳.父が犯した性犯罪のため一家は離散,貫多は中卒以来こういう生活を続けている.1_3
同じ現場に入ってきた専門学生日下部正二とは年が同じということで友人となる.正二のお陰で片思いだった古本屋の店員康子と友達になることに成功,ぎごちないつき合いが始まるが….
激しい劣等感と高い矜持,酒と風俗に流れながら一方で本を読むことに強い執着を持つ,原作者の放蕩無頼の青年期を描く.
森山未來の好演が際立つ作品.
突っかかる物言い,ぎごちない体の動き,上目遣いの三白眼が,孤立し寄る辺ない貫多の胸中を伺わせ,印象的である.2_4
同じ現場で事故で負傷した高橋と飲んでいるときに,遂に口にした「本を読んでいるんです」「いつかは何かを書きたい」という言葉が胸にしみる.
原作にない康子の参加は,映画に受け入れ易さを加えた一方,普通の青春映画に近づけ過ぎた趣もあって功罪半ばというところ.3_4
映画のラスト,相変わらずの放蕩無頼の列車が,目的駅を見つけて走り始めたことを観客は感じ取るだろう.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:甘い鞭

日記:2014年4月某日
映画「甘い鞭」を見る.0_2
2013年.監督:石井隆.
出演:壇蜜(32歳の岬奈緒子),間宮夕貴(17歳の奈緒子),中野剛(藤田赴夫),中島ひろ子(奈緒子の母・加代子),竹中直人(醍醐),屋敷紘子(木下景子),中山峻(鳴海).
両親と幸せな高校生活を送っていた奈緒子は,ある夕立の午後,近所の独身男に地下室に連れ込まれ,監禁生活を強いられる.2_3
1ヶ月後,男を刺殺して辛くも脱出し自宅に戻った奈緒子は,しかし母親に受け入れられず家庭は崩壊する.
やがて女医になった奈緒子は,昼は患者に寄り添う不妊治療の医師として活動,しかし夜はSM倶楽部のマゾの娼婦として過ごしていた….
石井隆監督らしい血とエロスの世界.アダルトビデオ以上にハードで「痛い」映像が続くが,壇蜜と間宮夕貴の真っ向勝負の本気の演技を監督がうまくさばいて,なかなか見応えのある物語となった.3_3
マゾ嬢の壇蜜の突き放したような目の表情は,印象的である.
共演の竹中直人・屋敷紘子も好演.劇場では女性客が多かったと聞くが,壇蜜の魅力というのは,一般のセクシー女優とはちょっと違った味なのかも知れませんね.
見て損はなし,但し好き嫌いによる.5
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:グランド・イリュージョン

日記:2014年4月某日
映画「グランド・イリュージョン」を見る.0
2013年.監督:ルイ・ルテリエ.
出演:ジェシー・アイゼンバーグ(J・ダニエル・アトラス),マーク・ラファロ(ディラン・ローズ),ウディ・ハレルソン(メリット・マッキニー),メラニー・ロラン(アルマ・ドレイ),アイラ・フィッシャー(ヘンリー・リーブス),デイヴ・フランコ(ジャック・ワイルダー),コモン(エバンス),マイケル・ケイン(アーサー・トレスラー),モーガン・フリーマン(サディアス・ブラッドリー).
タロットカードを送られて集まった4人の奇術師達.彼等は1年後に「フォー・ホースメン」と名乗ってラスベガスのステージに登場する.1_2
ここで彼等は会場の一観客をステージに上げ,特殊な装置で彼をパリの銀行の金庫室に送り込み,金庫内の金を奪ってステージの上空からばらまくという,前代未聞のイリュージョンをやってのける.
この大事件にFBIのディラン捜査官とインターポールのアルマ刑事は,捜査を開始する.2人はマジックのネタを曝露する専門家・サディアスの協力を求め,サディアスは見事パリ銀行襲撃の謎を解くが,「フォー・ホースメン」は更にニューオーリンズでのショーに現れた….2_2
鮮やかなイリュージョンと意表をつく物語の展開,快調なテンポで,一気に見せる好編である.
まあ見終わってからは突っ込みたいところが一杯出て来ますが.この人が黒幕?とかこの人が全てを知っている?とか思わせる登場人物達が,次々してやられていくのは,なかなか痛快である.
圧倒的な力を見せる「フォー・ホースメン」,特にメリットの催眠術の力は強力.彼がキーワードを口にした途端,全ての観客がディラン捜査官に襲いかかってメリットがまんまと逃亡するあたりは,笑ってしまう.3_2
個性豊かな「フォー・ホースメン」だが,彼等の内面は殆ど語られない.1年間の準備期間に何があってこんな命がけの犯罪に取り組めるのか,それは謎のままである.この辺りがちょっと物足りないところ.
しかし見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ハード・ラッシュ

日記:2014年3月某日
映画「ハード・ラッシュ」を見る.1
2012年.監督:バルタザール・コルマウクル.
出演:マーク・ウォールバーグ(クリス),ケイト・ベッキンセイル(ケイト),ジョヴァンニ・リビシ(ブリッグス),ベン・フォスター(セバスチャン),ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(アンディ).
父の代からの裏稼業で運び屋の名声をほしいままにしたクリスは,今は足を洗い妻子と共に平和に暮らしている.2ところが義弟のアンディが麻薬の運びを請け負った上,手入れにあってブツを海に捨ててしまった.組織から命を狙われる羽目になったアンディを守るため,クリスは偽札密輸計画を立て,仲間と共にパナマ行きの貨物船に潜り込むが….
新作が次々と公開され乗りに乗っているマーク・ウォールバーグの主演作.
偽札密輸で大金を稼ぎアンディの命を救おうとするクリス,一方組織側はクリスの活動を知り,彼に何とかヤクを密輸させようと介入する.
絶体絶命のピンチに陥るクリスは相棒にも裏切られ,最愛の妻の命が危機に瀕する.クリスの挽回の手立てはあるのか?!という映画.3アクションに次ぐアクション,クリスの技と頭脳の冴えが痛快である.マーク・ウォールバーグの活躍には胸がすっとする.
但し,妻との関係も結局アクションとサスペンスという軸で描かれ,ケイト・ベッキンセールの存在感はあまりなかった.アクション過剰でドラマは希薄という感じである.
見終わった後何も残らないと言ったら言い過ぎか.4
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