独断的映画感想文:凶悪
日記:2014年4月某日
映画「凶悪」を見る.
2013年.監督:白石和彌.
出演:山田孝之(藤井修一),ピエール瀧(須藤純次),リリー・フランキー(木村孝雄),池脇千鶴(藤井洋子),白川和子(牛場百合枝),吉村実子(藤井和子).
数々の殺人を犯して死刑判決を受け上告中の須藤が,新潮社の記者藤井に手紙を寄越す.自分は起訴された事件の他に3件の殺人を犯しているとの告白の手紙である.
面接に行った藤井に対し,須藤は「先生」と呼ばれる木村の存在を挙げ,木村が無事生き延びることは許せないと,事実の裏付けを依頼するのだった.藤井は,新潮社上司の売れないからとの制止を振り切り裏を取る作業に没頭,やがて恐るべき事件の様相が浮かび上がってきた….
事実に基づく映画である.
淡々と記述される須藤・木村の犯罪の実態には驚くしかない.木村の錬金術の犠牲者は,体を壊した老人や認知症の老人だ.彼等に保険をかけて殺し,或いは土地を奪って売り抜ける.
荒っぽい享楽的な人生もさることながら,人の命を屁とも思わない容赦ない殺しとその殺しを楽しむ姿勢にも嫌悪を感じる.
しかしそれ以上に印象的なのは,山田孝之演じる藤井の方だ.
彼等の事件に引き込まれた藤井は,仕事として我を忘れて取り組む一方,自宅に同居する認知症の母親の世話を一切妻に任せ,妻からの訴えに全く耳を貸そうともしない.事件の報道では上司に決断を迫りつつ,妻から母親のことで決断する様求められてもそれからは徹底的に逃亡する.
この藤井の狂気じみた行動にも同じ荒涼を感じずには居られない.藤井を含めた人間の凶悪さに,打ちのめされる映画である.
俳優では山田孝之,ピエール瀧,リリー・フランキーが秀逸.見応えあり.
★★★★(★5個が満点)
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