独断的映画感想文:苦役列車
日記:2014年4月某日
映画「苦役列車」を見る.
2012年.監督:山下敦弘.
出演:森山未來(北町貫多),高良健吾(日下部正二),前田敦子(桜井康子),マキタスポーツ(高橋岩男),田口トモロヲ(古本屋の店長).
自他共に認める私小説家・西村賢太の自伝的作品を映画化.
北町貫多は日雇い人足として働き,稼ぎは酒と風俗に消える19歳.父が犯した性犯罪のため一家は離散,貫多は中卒以来こういう生活を続けている.
同じ現場に入ってきた専門学生日下部正二とは年が同じということで友人となる.正二のお陰で片思いだった古本屋の店員康子と友達になることに成功,ぎごちないつき合いが始まるが….
激しい劣等感と高い矜持,酒と風俗に流れながら一方で本を読むことに強い執着を持つ,原作者の放蕩無頼の青年期を描く.
森山未來の好演が際立つ作品.
突っかかる物言い,ぎごちない体の動き,上目遣いの三白眼が,孤立し寄る辺ない貫多の胸中を伺わせ,印象的である.
同じ現場で事故で負傷した高橋と飲んでいるときに,遂に口にした「本を読んでいるんです」「いつかは何かを書きたい」という言葉が胸にしみる.
原作にない康子の参加は,映画に受け入れ易さを加えた一方,普通の青春映画に近づけ過ぎた趣もあって功罪半ばというところ.
映画のラスト,相変わらずの放蕩無頼の列車が,目的駅を見つけて走り始めたことを観客は感じ取るだろう.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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