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2014年5月に作成された記事

2014/05/24

独断的映画感想文:モンスターズ/地球外生命体

日記:2014年5月某日
映画「モンスターズ/地球外生命体」を見る.1
2010年.監督:ギャレス・エドワーズ.
出演:スクート・マクネイリー(アンドリュー・コールダー),ホイットニー・エイブル(サマンサ・ワインデン).
2009年,NASAの探査機が地球外生命体を積んだままメキシコ上空で墜落.メキシコ・アメリカの国境は,地球外生命体の住む危険地帯として隔離される事態となる.
6年後,地球外生命体が巨大モンスターとして住民を襲い,アメリカは国境に巨大隔壁を建設,メキシコの北半分は危険地帯として隔離される.3
映画の冒頭,市民を救援した陸軍部隊がモンスターに襲われ応戦する夜戦のシーン.
場面は切り替わって,南部メキシコの危険地帯隣接ゾーン,カメラマン・コールダーは本社からの指令で,社長令嬢サマンサをアメリカに連れ戻すことになる.
最後のフェリーに自分のミスで乗り遅れたコールダーは,2人で危険な陸路を辿ってアメリカに帰還する道を選ぶが….
100分足らずの掌編だが,物語と迫力に富んだSFの銘品.
モンスターの具体的姿はまあタコかイカの様なもので,知的優位は認められないが,とにかくでかくて強い.ミサイル攻撃もなかなか効を奏しないという有様.
コールダー等はボートで川を遡るが(このシーンは「地獄の黙示録」の様な美しさ),川は危険だと言われ陸路を辿る.その密林の木々にはモンスターの種子が鈴なりに植え付けられている.人類は滅びるしかないという暗澹たる想いが伝えられる一瞬だ.2
それを意識した文明批判的会話が,違和感なく語られる.
映画の最終場面で思いがけないモンスター達の生態が描かれ,映画はある意味でのハッピーエンドに終わるかと思われるのだが,この映画は真の意味でのSF映画である.映画が終わった後でのどんでん返しに観客は打ちのめされるだろう(変な言い方だけど,ネタバレを避けるためにはこう言うしかありません).4
終末的近未来,サイエンスフィクション,地球外生命体,というキーワードを堪能できる傑作.一見の価値あり.★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:42 ~世界を変えた男~

日記:2014年5月某日
映画「42 ~世界を変えた男~」を見る.421
2013年.監督:ブライアン・ヘルゲランド.
出演:チャドウィック・ボーズマン(ジャッキー・ロビンソン),ハリソン・フォード(ブランチ・リッキー),ニコール・ベハーリー(レイチェル・ロビンソン),クリストファー・メローニ(レオ・ドローチャー),アンドレ・ホランド(ウェンデル・スミス),ルーカス・ブラック(ピーウィー・リース),ハミッシュ・リンクレイター(ラルフ・ブランカ),ライアン・メリマン(ディクシー・ウォーカー),ブラッド・バイアー(カービー・ヒグビー),ジェシー・ルケン(エディ・スタンキー),アラン・テュディック(ベン・チャップマン).
米大リーグ初めての黒人選手,ジャッキー・ロビンソンの伝記映画.422
1945年,大戦の終了と共に,復員した選手を迎えアメリカは空前の野球ブームとなる.そのなかで,ブルックリン・ドジャーズのGMブランチ・リッキーは黒人選手との契約を決意,この年3Aに入団させたジャッキーは,その実力で1947年,初の黒人メジャーリーガーとなった.
しかし彼を襲う差別の嵐はチームをも巻き込み,ジャッキーは苦闘を強いられる….
1940年代のアメリカの差別の状況は,目の当たりにするのが苦しいほどだ.黒人を差別しないことは白人の沽券に係わるという風潮が,未だ支配的だった時代である.
ただ,差別が深刻ならその差別と戦う側の立ち位置も深刻で,3A時代の南部ではジャッキーは夜中に友人宅から逃げ出さなければ命が危なかったし,メジャーになってからもドジャーズ全員がアウエイの宿泊先に泊めてもらえなかったことがある.423
ブランチ・リッキーが体を張って差別者を糾弾していく姿が勇ましい.
この映画はまさに黒人メジャーリーガーを生み出すための,アメリカ自身の苦しみを描いているとも言える.
この努力が現在まで続いていることは,先のNBAオーナーの事件を見ても明らかだ.差別も深いが反差別も筋金入りなのだ.この映画はそういうアメリカを描いて感動的.
またこの映画はスポーツ映画としても,この年のドジャーズの優勝を巡るはらはらどきどきを描いて秀逸である.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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2014/05/20

独断的映画感想文:REDリターンズ

日記:2014年5月某日
映画「REDリターンズ」を見る.2_2
2013年.監督:ディーン・パリソット.
出演:ブルース・ウィリス(フランク・モーゼス),ジョン・マルコヴィッチ(マーヴィン・ボックス),メアリー=ルイーズ・パーカー(サラ・ロス),イ・ビョンホン(ハン・チョバイ),アンソニー・ホプキンス(エドワード・ベイリー),ヘレン・ミレン(ヴィクトリア),キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(カーチャ・ペトロビッチ),ブライアン・コックス(イヴァン・シモノフ),ニール・マクドノー(ジャック・ゴードン),デヴィッド・シューリス(カエル),スティーヴン・バーコフ(コッブ),ティム・ピゴット=スミス(フィリップス長官),ギャリック・ヘイゴン(デイヴィス).3_2
往年の(アクション)スターが一堂に会して暴れまくるシリーズの第2作.今回はアンソニー・ホプキンスまで登場して物語に花を添える.
といってこの映画では物語は二の次で,各俳優の見せ場とアクションシーンを繋ぐのりしろに過ぎない感じ.実際どういう話しだったか良く覚えていない.4
それより面白いのは,殺人と陰謀を糧に生きてきた彼等の半生がちらりと覗くシーンだったり,今の利害対立がかっての友情でころりと和解したり,その逆に今の共闘関係がかっての確執で決裂したりという展開である.
またアクションシーンでの各俳優の「決め」も良く計算されていて,こうなると歌舞伎の荒事と同じですな.1_2
俳優ではメアリー=ルイーズ・パーカーが垂れ目の愛嬌あるキャラクターを演じ魅力的.なかなか楽しいコメディ映画である.
★★★★(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文:團菊祭五月大歌舞伎 昼の部 毛抜・勧進帳・魚屋宗五郎

日記:2014年5月某日
歌舞伎「團菊祭五月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_201405f3
「一、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)」.出演:粂寺弾正(左團次),小原万兵衛(権十郎),小野春風(松江),腰元巻絹(梅枝),秦秀太郎(巳之助),腰元若菜(廣松),錦の前(男寅),秦民部(秀調),八剣玄蕃(團蔵),小野春道(友右衛門).
「二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)」.出演:武蔵坊弁慶(海老蔵),富樫左衛門(菊之助),亀井六郎(亀三郎),片岡八郎(亀寿),駿河次郎(萬太郎),常陸坊海尊(市蔵),源義経(芝雀).
「三、新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)」.出演:魚屋宗五郎(菊五郎),女房おはま(時蔵),磯部主計之助(錦之助),召使おなぎ(梅枝),茶屋娘おしげ(尾上右近),小奴三吉(橘太郎),菊茶屋女房おみつ(萬次郎),父太兵衛(團蔵),浦戸十左衛門(左團次).
「毛抜き」は荒事らしい痛快脳天気な芝居.左團次の弾正は落ち着きがあってやや淡泊,若衆やお女中への迫り方も上品で,もっと弾けても良かった.
勧進帳は海老蔵・菊之助の決意が伝わってくる熱演.但し弁慶がお酒を飲む場面は,亡き團十郎の愛嬌の方が好ましい.
魚屋宗五郎は,昼の部の白眉,菊五郎の宗五郎が何といっても素晴らしい.
妹を手打ちにされた悔しさに,禁酒の誓いを破って呑み始め酒乱となる.その合間にふと我に返ったときの悲哀感には泣かされる.
時蔵のおかみさんも素晴らしい.磯部庭先で,時蔵の膝枕で菊五郎が寝ている姿は,まことに気持ちよさそうで何とも言えない.錦之助の殿様にも好感を持った.
板東橘太郎が市村橘太郎と名を代えての初舞台だが,この人は昔から大好き.今回も口跡良くフットワーク良く,見ていて気持ちがいい.終了3:36.
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独断的映画感想文:プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命

日記:2014年5月某日
映画プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」を見る.1
2012年.監督:デレク・シアンフランス.
出演:ライアン・ゴズリング(ルーク),ブラッドリー・クーパー(エイヴリー),エヴァ・メンデス(ロミーナ),レイ・リオッタ(デルカ),ベン・メンデルソーン(ロビン),マハーシャラ・アリ(コフィ),デイン・デハーン(ジェイソン),エモリー・コーエン(AJ).
サーカスでオートバイの曲乗りをするルークは,とある巡業先で昔馴染みのロミーナと出会い一夜を共にする.1年後,同じ巡業先を訪れたルークは,ロミーナが彼の子を産んでいたことを知る.
ロミーナは別の男と結婚し息子ジェイソンと共に安定した暮らしをしていたが,ルークは構わずその街に落ち着き,ジェイソン,ロミーナとたびたび会う.2
ルークは雇われた自動車修理屋のロビンに誘われ,コンビで銀行強盗をすることになるが,これがうまく当たりルークはまとまった金を手にする.
ルークはロミーナの家に乗り込み,身勝手な振る舞いをした挙げ句ロミーナの夫を傷つけ逮捕される.保釈されたもののロミーナの信頼を失ったルークは無謀な単独強盗を行って追い詰められ,新米警官エイブリーと対決することになる….
15年間にわたるルークとエイブリーの,それぞれの父子の物語.
不思議な映画である.子供の世代に引き継がれた確執は何も解決せず映画は終わるが,ラストシーンで,父の影を追う様にバイクにまたがり去って行くジェイソンの清々しい姿はどうだろう.
どうしようもない悪党だが父性愛に富んだルークと,正義感と野心に満ちた警官のエイブリー,それぞれの子供がたどる道の思いがけない交錯は見応えのある物語となった.3
俳優ではライアン・ゴズリングとブラッドリー・クーパーが熱演.レイ・リオッタは期待を裏切らない悪徳警官ぶり.登場人物のキャラクターがしっかりしていると,物語はこれほど面白くなるものか.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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2014/05/11

独断的映画感想文:サイド・エフェクト

日記:2014年5月2日(金)
映画「サイド・エフェクト」を見る.0
2013年.監督:スティーヴン・ソダーバーグ.
出演:ジュード・ロウ(ジョナサン・バンクス博士),ルーニー・マーラ(エミリー・テイラー),キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(ヴィクトリア・シーバート博士),チャニング・テイタム(マーティン・テイラー).
映画の冒頭,血にまみれた床,船の模型が飾られている部屋の様子が一瞬描かれる.1_2
その3ヶ月前,インサイド取引で収監されていた夫が釈放された翌日,鬱病で治療中の妻エミリーは自殺を図る.
彼女を担当することになったバンクスは,彼女の前の主治医シーバーと博士と連絡を取り治療方針を探るが,エミリーは服用中の薬の副作用を訴え,新薬の処方を希望する.3_2
ところがバンクスが処方した新薬の副作用で夢遊病を発症したエミリーは夫を刺殺,バンクスは思いがけない窮地に立たされる….
やや短めの作品だがその中にかなり複雑な利害関係や人間関係が描かれて,理解が追いつかない.
結局バンクスはある種の罠にはまったらしいが,その原因である利害関係が良く理解できない.バンクスを陥れることで誰がどういう仕掛けで利益を得るのか??4_2
役者はジュード・ロウが好感の持てる演技だったが他は印象に残らず.ジュード・ロウって顔も雰囲気も渡辺謙に似ていると,改めて思うが,如何でしょうか?.
★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:そして父になる

日記:2014年4月某日
映画「そして父になる」を見る.1
2013年.監督:是枝裕和.
出演:福山雅治(野々宮良多),尾野真千子(野々宮みどり),真木よう子(斎木ゆかり),リリー・フランキー(斎木雄大),二宮慶多(野々宮慶多),黄升げん(斎木琉晴),中村ゆり,高橋和也,田中哲司,井浦新,風吹ジュン(野々宮のぶ子),國村隼(上山一至),樹木希林(石関里子),夏八木勲(野々宮良輔).2
父と子の物語.まことに題名通りの映画である.
小学校に上がる前,お受験をする野々宮慶多はピアノも習っている.父親良多は多忙なサラリーマン,優しいが息子を厳格に育てようとしている.
ある日慶多の生まれた病院から連絡があり,慶多は斎木琉晴と出生時取り違えられたことが判る.斎木家との交流が始まるが,斎木家は電気屋を営む親子5人家族,長男・琉晴は自由奔放に育てられていた….3
映画は野々宮良多を中心に進行するが,観客から見れば社会的に成功し財力も人脈もある良多が,父親としては極めて未完成な人間であることは明かである.その原因が,同じく厳格であったが良多等が小さいうちに離婚し,若い女性と再婚した父親との関係にあるらしいことも示唆される.5
この物語はそういう良多が,失敗と苦しみの果てに慶多と琉晴双方の父親として自分を再構築していく物語なのだ.子供達のいたいけなさと良多の葛藤には,涙を禁じ得ない.
周りを固める尾野真千子,真木よう子,リリー・フランキー,風吹ジュン,國村隼,樹木希林,夏八木勲らは適役で好演,安心して見ていられる.一見の価値あり.4
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2014/05/09

独断的映画感想文:危険なプロット

日記:2014年4月某日
映画「危険なプロット」を見る.1
2012年.監督:フランソワ・オゾン.出演:ファブリス・ルキーニ(ジェルマン),クリスティン・スコット・トーマス(ジャンヌ),エマニュエル・セニエ(エステル),エルンスト・ウンハウアー(クロード).
ネタバレあります!!
反体制的な姿勢を隠さない高校教師ジェルマンは,かって作家を志して本を出したが挫折した経験を持つ.2
生徒のクロードが宿題に出してきた作文は,ある家庭に入り込みたいために同級生ラファルと作為的な友情を作り上げるという,刺激的なものだった.ジェルマンは作文を指導するという名目でクロードに続編を要求する.
クロードはその家庭に数学の家庭教師として入り込み,ラファルや父親の心を捉えながら,次第に母エステルに接近していく,と書き綴る.果たしてクロードの「作文」は創作か事実か?クロードの作文に引き込まれ,ジェルマンの現実生活は激しく揺さぶられる….3
この手のフランス映画は好みではない.好みではないが,この映画はなかなか面白かった.俳優がそれぞれ魅力的である.
特にクリスティン・スコット・トーマスとエルンスト・ウンハウアーの美しさはそれだけで見応えあり.
物語は虚構と現実が混乱していく映像に引き回されよく分からないまま終わってしまうが,この一連の騒動でジェルマンが職も妻も全てを失ったのは事実らしい.ジャンヌが突然荷物をまとめて出て行ったのにはいささか唐突感があったが,クロードの「作文」とジェルマンの「指導」が,結局思いも寄らぬ結果に結びつくという軸は明快な映画.4
見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文:鳳凰祭四月大歌舞伎昼の部

日記:2014年4月某日Img_13721jpg
鳳凰祭四月大歌舞伎昼の部を幕見で見る.見たのは歌舞伎座新開場一周年記念と銘打った「一、壽春鳳凰祭(いわうはるこびきのにぎわい)」.出演:女御(時蔵),女御(扇雀),大臣(橋之助),大臣(錦之助),女御(梅枝),同 (新悟),大臣(萬太郎),同 (隼人),従者(進之介),帝 (我當).
「二、鎌倉三代記(かまくらさんだいき) 絹川村閑居の場」.出演:佐々木高綱(幸四郎),時姫(魁春),母長門(歌江),おくる(歌女之丞),富田六郎(桂三),三浦之助義村(梅玉).
「三、壽靱猿(ことぶきうつぼざる)」.鳴滝八幡宮の場.出演:猿曳寿太夫(三津五郎),奴橘平(巳之助),女大名三芳野(又五郎).
壽春鳳凰祭は華やかにして荘重な格調高い踊りで,それぞれの出演者が個性を生かし踊る.音楽も素敵.
鎌倉三代記は一幕一場の芝居だが,それにしては長すぎる.しかも途中は殆どが時姫と三浦之助の,出口の見えない嘆きの台詞の交換で,いささか退屈した.この一幕の後,時姫に全てを託して登場人物はことごとく死んでしまうらしい.どうも救いのない芝居である.
さて本命の靫猿.大名の代参で八幡宮にやってきた女大名と奴,無事参拝を終え帰ろうというところに迷い込んできた小猿.大名から靫に使う猿の毛皮を捜してこいと依頼されていた女大名は,しめたと小猿を取り押さえるが,猿曳きに断らなければならない.そこに追いついてきた猿曳き,女大名の命令に仰天しますが,止むなく小猿を打ち殺そうとする.小猿は主人の剣幕に謝って見せたり芸を見せたり一生懸命,その姿に女大名も遂に小猿を諦める,というご存知の物語.それを踊る三津五郎の体の動きの自在なこと.芯はぶれずに滑る様に跳ぶ様に踊る姿は,誠に舞うとはこういうことを云うのかと感服した次第である.見ているだけで心が和む,こんな気分になるのは三津五郎ならではのこと.是非今後も元気で踊りを見せて欲しいものだ.
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2014/05/04

番外:独断的歌舞伎感想文:鳳凰祭四月大歌舞伎夜の部

日記:2014年4月某日
歌舞伎座鳳凰祭四月大歌舞伎夜の部を見る.Kabukiza_201404f1
「一、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」檜垣/奥殿.出演:一條大蔵長成(吉右衛門),常盤御前(魁春),八剣勘解由(由次郎),鳴瀬(歌女之丞),お京(芝雀),吉岡鬼次郎(梅玉).「二、女伊達(おんなだて)」.出演:女伊達(時蔵),男伊達中之島鳴平(松江),同 淀川の千蔵(萬太郎).「三、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう) 髪結新三」.出演:髪結新三(幸四郎),弥太五郎源七(歌六),白子屋手代忠七(橋之助),下剃勝奴(錦之助),お熊(児太郎),丁稚長松(金太郎),車力善八(錦吾),家主女房おかく(萬次郎),家主長兵衛(彌十郎),加賀屋藤兵衛(友右衛門),後家お常(秀太郎).
夜の部は個人的には何と云っても吉右衛門の一條大蔵卿である.
作り阿呆の芝居であるが,本性を現したときの公家ながら凜としたたたずまいが素晴らしい.最後に源氏の秘剣・友斬り丸を鬼次郎に託し,もとの阿呆に戻る直前の悲哀に満ちた表情が印象的.
髪結い新三は幸四郎と彌十郎の掛け合いが見もの.錦之助の勝奴も見て気持ちが良い.鰹が食べたくなる芝居である.
「女伊達」はすっきりとした踊り,男伊達2名を従えた時蔵の女伊達が,引き抜きを含む達者な踊りを見せる.
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独断的映画感想文:昭和残侠伝 吼えろ唐獅子

日記:2014年4月某日
映画「昭和残侠伝 吼えろ唐獅子」を見る.Photo
1971年.監督:佐伯清.
出演:高倉健,池部良,鶴田浩二,松方弘樹,松原智恵子,小林稔侍,由利徹.
昭和初期.前橋の黒田組に客分として身を置いた花田秀治郎は,黒田組の若い者・風間文三と共に対立する川勝組を襲う.
文三はほとぼりを冷ますため金沢に行くが,黒田組組長の女おみのが文三の後を追う.おみのは文三と恋仲だったが無理矢理組長の女にされたのだった.
組長は文三とおみのを追って金沢へ,花田も組長の意を受けて,意に沿わぬ働きを強いられる….
昭和残侠伝シリーズの8作目,箸にも棒にもかからない駄作である.
やくざ映画絶頂期の1970年代を40年隔てると,評価はこの様に変わってしまうものか.
物語は,仁義の筋を愚直なまでに墨守する花田と彼に与する重吉,三州政治,これに対する黒田組組長等の闘争にある.
今この映画を見ると,花田は(如何に高倉健が演じているとは言え)ただの人斬りである.仁義に厚く人情を併せ持つのではあろうが,客分として転がり込んでその組の親分の指示通り殺しをし,既に殺した数は数知れない.最後には真情ある厚誼を交わした三州を命じられて襲い,ひるがえって義理ある筈の黒田組組長への殴り込みを敢行して組を壊滅させる.
一方その黒田組組長は,自分の女が愛人を追って出奔したのに対し,縄張りも稼業も放擲して一家を挙げて追跡し,果ては異国の地で一家壊滅の憂き目に遭うという愚か者である.
相対するそのどちらにも全く感情移入することは出来ない.こんな馬鹿な話があるか,というのが見た後の感想である.
それにもかかわらず,高倉健の魅力には抗し難い.このスターあればこそ,この様な駄作が映画として成り立っている.それ以外評価すべき点はない.
★☆(★5個が満点)
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