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2014年7月に作成された記事

2014/07/28

番外:独断的歌舞伎感想文:七月大歌舞伎昼の部

日記:2014年7月13日
歌舞伎座で七月大歌舞伎を見る.Img_15562
「一、正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)」.出演:曽我五郎時致(市川右近),小林妹舞鶴(笑三郎).「二、通し狂言 夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」,お鯛茶屋,住吉鳥居前,三婦内,長町裏,団七内,同屋根上.出演:団七九郎兵衛(海老蔵),三河屋義平次(中車),一寸徳兵衛(猿弥),琴浦(尾上右近),お梶(吉弥),玉島磯之丞(門之助),おつぎ(右之助),堤藤内(家橘),釣舟三婦(左團次),お辰(玉三郎).
正札附根元草摺は右近・笑三郎の舞踊.曽我ものの一つで,曽我の五郎が父の仇工藤祐経に会いに行こうというところ,その持った鎧の草摺を力自慢の女性・小林妹舞鶴と引き合うという荒事の舞踊である.
両者の折り目正しい舞踊が印象的.
夏祭浪花鑑は,主家筋の放蕩者・玉島磯之丞のために,団七九郎兵衛・お梶と一寸徳兵衛・お辰の義兄弟夫婦が,義理と男伊達のために身を滅ぼすという悲劇.
この2組の夫婦も良かったが,釣舟三婦を演じる左團次と義平次を演じる中車がそれぞれの個性で出色の出来,猿弥の一寸徳兵衛もまた遜色なく,見応えある舞台となった.
義兄弟両者の因縁が描かれる「お鯛茶屋」を含めた通しの上演で,物語の筋立てが明快になった.見て損は無し.

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独断的映画感想文:ある愛へと続く旅

日記:2014年7月某日
映画「ある愛へと続く旅」を見る.1
2012年.監督:セルジオ・カステリット.
出演:ペネロペ・クルス(ジェンマ),エミール・ハーシュ(ディエゴ),アドナン・ハスコヴィッチ(ゴイコ),サーデット・アクソイ(アスカ),ピエトロ・カステリット(ピエトロ),ジェーン・バーキン(精神分析医).
ローマで暮らすジェンマは,昔の友人ゴイコの誘いで16才の息子ピエトロと共にサラエボを訪れる.4
ここでゴイコと再会したジェンマ,かって学生時代に論文の資料集めでこの地を訪れたジェンマは,通訳・案内人としてゴイコを雇った.そしてゴイコの紹介で出会ったカメラマン・ディエゴと熱烈な恋に落ち,やがてイタリアに戻ったジェンマは,紆余曲折ののちディエゴと結婚したのだった.
しかしジェンマは子供に恵まれず,折りしも取材でサラエボを訪問することになったディエゴと共にジェンマも同行,サラエボで代理母アスカとの契約が成立するが….3
1990年代のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を背景とした,ジェンマとディエゴの愛憎の物語.ベストセラー小説の映画化らしいが,原作の整理がまずく話がトッ散らかった感じが否めない.
ジェンマの最初の結婚と離婚など,エピソードとして意味があるとは思えない.
全体の構成も現代と過去を行き来するのがせわしなく,成功したとは言い難い.
それでも軸となるジェンマを演じるペネロペ・クルスの熱演と,内戦を生き抜くアスカを演じるサーデット・アクソイの魅力で,映画の最後まで惹きつけられる.アドリア海(?)の美しい島を舞台に明かされる謎解きのシーンも印象的だ.2
重いテーマを内在しながらも,魅力ある映画.
★★★☆(★5個が満点)
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2014/07/07

独断的映画感想文:ペコロスの母に会いに行く

日記:2014年7月某日
映画「ペコロスの母に会いに行く」を見る.1_2
2013年.監督:森崎東.
出演:岩松了(岡野ゆういち),赤木春恵(岡野みつえ),原田貴和子(若き日のみつえ),加瀬亮(岡野さとる),竹中直人(本田),大和田健介(岡野まさき),松本若菜,原田知世,宇崎竜童,温水洋一,穂積隆信,渋谷天外,春風ひとみ,根岸季衣,長澤奈央,大門正明,佐々木すみ江,正司照枝,島かおり,今井ゆうぞう,長内美那子,志茂田景樹.2_2
ペコロスは小さなタマネギのこと,ペコロスの様にはげたゆういちは,母みつえと息子と長崎で三人暮らし,その母が最近認知症が進んできた.
介護士の勧めもあって遂に母をグループホームに託すが,母の症状は進んでいく様である.そういう現在と,母の一生を想起する過去の映像とを交互に織り交ぜながら進む物語.3_2
ゆういちは,営業のサラリーマンだがそっちはさっぱりうだつが上がらず,仕事をさぼっては漫画を書き弾き語りのライブに熱中する,いい歳のおっさん.息子は飲食店の従業員.という訳で物語の全体は緩いテンポでのんびり進行する.
赤木春恵と渋谷天外の(この二人は兄嫁と義理の弟という関係)ボケ合戦などは抱腹絶倒である.4_2
一方併行して語られるみつえの子供時代から長崎に嫁いできての物語は,原田貴和子の好演もあって印象深い.みつえが少年時代のゆういちを伴って海を見つめるシーンから幼馴染み(原田知世)の手紙を頼りに色街を訪れるシーンにかけては,涙を禁じ得ない.
みつえとゆういちの人生が,思いがけずランタン祭の夜に交錯するシーンは,夢の様に美しい.老いて惚けるのも,悪くはないなと僕などは思ったのだが,皆さんはどう思われますか?5
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:四十九日のレシピ

日記:2014年6月某日
映画「四十九日のレシピ」を見る.1
2013年.監督:タナダユキ.
出演:永作博美(高岩百合子),石橋蓮司(熱田良平),岡田将生(ハル),二階堂ふみ(イモ),原田泰造(高岩浩之),淡路恵子(珠子).
映画の冒頭,電話に出ている百合子.夫の愛人という女からの離婚を求める電話である.子供もできたと言う.電話の向こうにうろたえた夫の声がする.堪りかねて電話を切る百合子,彼女は不妊に悩んでいた.2
片や一軒家で一人暮らす百合子の父・良平,妻・乙美の突然の死後無気力になり,今も空腹のまま怠惰に寝ている.そこに訪れた自称イモこと井本は乙美がボランティアをしていた更正施設の出身,亡くなった妻に自分の死後四十九日までのあいだ夫を世話する様頼まれ,やってきたと言う.
一方,悄然と帰ってきた百合子はイモに背中を流して貰っている良平に驚く.
イモが見つけた乙美のノートには細々とした家事の秘訣が書いてある一方,自分の四十九日には大宴会を開くようにと指示があった.良平と百合子は,やはり手伝いに来てくれた乙美の元同僚ハルと共に,大宴会の準備を始める….3乙美は百合子の母の死後嫁いできた後妻で,自分の子供はいなかった.良平と百合子は四十九日の準備をする一方,それぞれに乙美の人生を辿り始める.
妻の死,夫との離婚に直面しながら,自らの再生に取り組む親子を描く物語.
この映画は演じる俳優が宜しい.
石橋蓮司が相変わらず元気に良平役を好演.永作博美も好感が持てる.イモを演じたのは誰か予備知識がなかったが,二階堂ふみと知って納得,愛すべきコスプレ少女イモを過不足無く演じてうまい.淡路景子はこの人らしいあけすけで憎たらしい役柄.4
妻であり母であった乙美の現在の姿が殆ど描かれないのは若干物足りないが,父と子の各々が再びしっかりと歩き始めるラストは印象に残る.
★★★☆(★5個が満点)
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2014/07/06

番外:独断的歌舞伎感想文 平成26年度公文協主催中央コース 猿之助・中車襲名披露 松竹大歌舞伎

日記:2014年6月某日
「市川亀治郎改め 四代目市川猿之助襲名披露,九代目市川中車襲名披露 松竹大歌舞伎」を見る.20140621namikiri_okabuki01
「一、三代猿之助四十八撰の内 太閤三番叟(たいこうさんばそう)」.出演:太閤秀吉(市川笑三郎),淀の方(市川笑野),北政所(市川笑也).
「二、四代目市川猿之助,九代目市川中車 襲名披露 口上(こうじょう)」出演:亀治郎改め市川猿之助,市川中車,片岡 秀太郎,幹部俳優出演.
「三、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)」出演:お蔦(亀治郎改め市川猿之助),駒形茂兵衛(市川中車),波一里儀十(市川猿弥),堀下根吉(段治郎改め市川月乃助),若船頭(市川弘太郎),船戸の弥八(市川猿四郎),清大工(市川寿猿),老船頭(坂東竹三郎),船印彫師辰三郎(市川門之助).
長い襲名披露巡業公演の今日がその千秋楽らしい.猿之助人気は素晴らしく,この大きな劇場が週日の昼間から一杯である.
2年ぶりに見る,猿之助・中車襲名記念の福山雅治の幔幕が懐かしい.
一本刀土俵入りは猿之助のお蔦・中車の茂平である.劇場が大きいせいかお蔦の台詞が聴き取り難く,折角の場面が印象薄かったのは残念.一方中車の声は良く通り,空きっ腹の茂平,満腹の茂平,無宿渡世となった茂平がうまく演じ分けられ,見応えがあった.
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独断的映画感想文:フィルス

日記:2014年6月某日
映画「フィルス」を見る.1
2013年.監督:ジョン・S・ベアード.
出演:ジェームズ・マカヴォイ(ブルース・ロバートソン),ジェイミー・ベル(レイ・レノックス),ジョアンヌ・フロガット(メアリー),イモージェン・プーツ(アマンダ・ドラモンド),エディ・マーサン(クリフォード・ブレイジー),ジム・ブロードベント(ドクター・ロッシ).
ブルースは悪徳刑事,今警部補への昇進を狙って,同僚刑事を陥れつつ特定の夫人への嫌がらせ電話という犯罪を自演している.
署としては日本人留学生の強盗殺人事件の解決を迫られ,ブルースに捜査指導を任せている.ブルース自身はヘビースモーカーの上アル中でコカインもやっているが,そのせいかどうか偉いエネルギーで捜査を展開,警部補昇進は目の前に見えたが….4
コメディというカテゴリーだったので見たが,ブラックコメディー,それもかなり痛い方のそれであった.
ブルースの悪徳ぶりは必要以上で,同僚の妻と通じたり唯一の友人クリフォードの人生をめちゃめちゃにしたり,その目的も定かではない悪行に邁進する.
うまくいくかと思われた捜査の方も途中から雲行きは怪しくなる.何故これほどまでに無理をして捜査を進めるかという理由は,妻子に逃げられ,その妻子を何とか取り戻したいというめちゃくちゃマジな理由で,妻子を慕って夜一人涙ぐむブルースは,哀れそのものである.
という観客にとっては「痛い」感覚を強いられる映画だが,この難しい役柄をジェームズ・マカヴォイが演じきっていることが本作の魅力であろう.2
ブルースが唯一行った善行(心臓麻痺を起こした男性に路上で心マッサージを施した)の結果がどういう報いになって現れるか,これもこの映画の焦点の一つ.まずはご覧あれ.
★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 松竹六月大歌舞伎 昼の部

日記:2014年6月某日
「松竹六月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza62014poster1
「一、お国山三 春霞歌舞伎草紙(はるがすみかぶきぞうし)」.出演:出雲阿国(時蔵),若衆(亀寿),若衆(歌昇),若衆(萬太郎),若衆(種之助),若衆(隼人),女歌舞伎(尾上右近),女歌舞伎(米吉),女歌舞伎(廣松),名古屋山三(菊之助).
「二、源平布引滝 実盛物語(さねもりものがたり)」.出演:斎藤実盛(菊五郎),小万(菊之助),葵御前(梅枝),矢走仁惣太(橘太郎),小よし(右之助),九郎助(家橘),瀬尾十郎(左團次).
「三、元禄忠臣蔵 大石最後の一日(おおいしさいごのいちにち)」.出演:大石内蔵助(幸四郎),磯貝十郎左衛門(錦之助),おみの(孝太郎),細川内記(隼人),赤埴源蔵(橘太郎),原田玄沢(松之助),吉田忠左衛門(錦吾),堀部弥兵衛(桂三), 早水藤左衛門(由次郎), 堀内伝右衛門(彌十郎),久永内記(友右衛門),荒木十左衛門(我當).
「四、お祭り(おまつり)」.出演:鳶頭松吉(仁左衛門),若い者(千之助).
お国山三 春霞歌舞伎草紙は歌舞伎に珍しい群舞である.若手の踊りが楽しいが,特に右近に眼が行ってしまう.
実盛物語は以前勘九郎で見たが,その時のはつらつ颯爽とした実盛に比べ,やはり一回り大きなスケールを感じさせる菊五郎の重厚な実盛である.瀬尾十郎の左團次も憎たらしさと哀れさが両立して素晴らしい.
大石最後の一日は理屈の芝居に感じられるが,その理屈を逆手にとって自分も父親も恋人をも成り立たせようとしたおみのが印象的,演ずる孝太郎も良い出来であった.
お祭りは仁左衛門復帰の舞台らしく,良く声がかかり仁左衛門も楽しそう.痩せて力強さは今一歩と見受けられたが,とにかく戻ってきたことがうれしい.充実の舞台であった.
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