独断的映画感想文:鉄くず拾いの物語
日記:2014年12月某日
映画「鉄くず拾いの物語」を見る.
2013年.監督:ダニス・タノビッチ.
出演:セナダ・アリマノヴィッチ(Senada),ナジフ・ムジチ(Nazif),セムサ・ムジチ,サンドラ・ムジチ.
貧しい村に住むナジフの一家,可愛い2人の娘がいて,妻セナダは3人目の子を身ごもっている.ナジフは兄弟と助け合いながら鉄くず拾いをして生計を立てている.
貧しいながら穏やかで幸せな日々.ところがある日セナダの腹痛を訴える.車で街の病院に行くと,お腹の子は流産していて,手術しないと母胎も危ないと言われる.
しかし保険証のないナジフには980マルク(500ユーロ)の医療費は払えない.分割払いを懇願したが病院は認めず,セナダはむなしく帰宅する.ナジフは必死に鉄くずを拾うが….
予備知識なく見始め,途中までこの人々がロマだということに気付かなかった(欧米人が見れば一目で分かることだろうが).
中盤でナジフがロマの協会の職員に語るシーンがあるが,4年間兵役を務めたが年金も何ももらえず,村に帰っても仕事がなく鉄くず拾いをしてしのいでいるという.
セナダのために雪の中,谷あいのゴミ捨て場から一人で鉄くずを拾い担ぎ上げるナジフの姿には,そんなことで医療費が払えるのかという疑問が湧きつつも,胸打たれるものがある.
この映画は実際に起こった事件を描いたものであり,登場人物はその事件を体験した当の本人達だ.
この映画はベルリン国際映画祭の銀熊賞と主演男優賞を獲得,ナジフは定職と保険証を得て,3人目の子供にも恵まれたとのことだ.
決して怒ることなく,嘆きながらも諦めず人生を歩み続けるナジフ達一家に,おめでとうとありがとうを伝えたい.
★★★★(★5個が満点)
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