« 2015年4月 | トップページ | 2015年6月 »

2015年5月に作成された記事

2015/05/23

独断的映画感想文:無言歌

日記:2015年5月22日
映画「無言歌」を見る.1
2010年.監督:ワン・ビン.
出演:ルウ・イエ(リー・ミンハン),ヤン・ハオユー(ドン・シェンイー),シュー・ツェンツー(グー).
1960年代の中国,中国共産党は百家争鳴を唱え自由な政治論争を奨励した直後,反右派闘争を開始し,共産党の方針に批判的な発言のあった人士を逮捕,労働改造に送った.
この映画はゴビ砂漠の収容所に送られ,農地開墾に従事する政治犯等の苦境を描く.
収容者が住むのは高台の地面を掘り下げただけの壕舎,外気とはカーテン1枚のその壕舎に布団一枚で寝る.
折からの飢饉で食料にも事欠き,飢えと病気で次々に死んでいく収容者.毎朝,前夜息を引き取った者達が布団にくるまれ,手押し車に乗せられて運ばれていく.4
彼等は周辺の土まんじゅうに埋葬されるのだ.
上海出身の董が病死し,その1週間後に妻が訪ねてくる.妻は収容所長の拒絶にも拘わらず,同室の収容者の協力を得てついに夫の死骸を掘り出し,荼毘に付してその骨を上海に持ち帰る.
妻に協力した同室者はその後,絶望的な逃避行に敢えて挑んで姿を消した….
物語は悲惨で舞台は砂漠の壕舎,登場人物はボロボロの衣服をまとった死に瀕した者ばかりで,映像的にはきつい場面ばかりある.5
それにも拘わらずこの映画は美しく(妻が夫の墓を探しに壕舎から砂漠に出て行くときのカメラワークの素晴らしさはどうだろう),人間の尊厳への視点には共感できる.
この映画は香港・フランス・ベルギーの合作映画で,ロケ地はゴビ砂漠だが当局には別の脚本での映画と説明された.できた作品は無論中国国内では上映が許されていない.
映画の力を再確認する作品,見て損はなし.2
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

番外:独断的歌舞伎感想文 明治座5月花形歌舞伎夜の部

日記:2015年5月某日
明治座で5月花形歌舞伎夜の部を鑑賞.Meijiza_201505ff
「一、あんまと泥棒(あんまとどろぼう)」.出演:泥棒権太郎(市川猿之助),あんま秀の市(市川中車).「二、湧昇水鯉滝(わきのぼるみずにこいたき) 通し狂言 鯉つかみ(こいつかみ) 片岡愛之助六役早替り宙乗りならびに本水にて立廻り相勤め申し候」.出演:俵藤太秀郷・鯉王皇子金鯉・滝窓志賀之助・滝窓志賀之助実は鯉の精・奴瀬田平・関白中納言橘広継(片岡愛之助),鯉王(市川中車),篠村女房呉竹(市川門之助),家老篠村次郎公光(中村亀鶴),釣家息女小桜姫(中村壱太郎),信田清晴(市川弘太郎),三上山の大百足実は平将門の霊(市川猿弥),堅田刑部(市川男女蔵),鮒五郎(市川右近),瀬織津媛(片岡秀太郎).
「あんまと泥棒」は口達者なあんまに丸めこまれ,金を奪うどころか二朱の金を与えて去って行く純情な泥棒と,まんまと大金を守りきった阿漕なあんまの物語り.
配役がそれぞれにんに合っているので,短編ながら面白く見た.
「鯉つかみ」はムカデ退治で有名な藤原秀郷の子孫・釣家の姫君と,釣家にたたった琵琶湖の鯉の霊を退治する釣家の若君の物語り.
愛之助独壇場の芝居だが,愛之助大活躍はむろんのこと,信田清晴役の市川弘太郎,冒頭の生け贄・小百合役の片岡りき彌,家老篠村役の中村亀鶴,呉竹役の市川門之助等の活躍が目立った.
宙乗り,本水と魅力満載の活劇で,お客の受けは上々.楽しめる舞台だった.
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

独断的映画感想文:アバウト・ア・ボーイ

日記:2015年5月10日
映画「アバウト・ア・ボーイ」を見る.About_a_boy00
2002年.監督:ポール・ウェイツ,クリス・ワイツ.
出演:ヒュー・グラント(Will),トニ・コレット(Fiona),ニコラス・ホルト(Marcus),ヴィクトリア・スマーフィット(Suzie),レイチェル・ワイズ(Rachel),ナタリア・ガスティアン・テナ(Ellie).
Willは父の遺産で食べていける遊び人,まとまった仕事はせず女をナンパして暮らしている.
Marcusは菜食主義者でリベラリストの母Fionaに厳しく育てられ,その為学校では孤立している大人しい少年.Fionaの鬱病が悪化して自殺を図る事態となり,Marcusは偶然知り合ったWillを母親のパートナーにして母を落ち着かせようと知恵の限りを尽くすが….About_a_boy2
ラブコメというにはちょっとだけシリアスで切ない物語.
映画ではWillのいい加減な生き方がプラスに働いてMarcusが成長していくという展開が面白い.
レイチェル・ワイズの活躍が,その美貌にも拘わらずいまいちなのが残念だが,トニー・コレットの独特の魅力が良く生かされている.About_a_boy3
ヒュー・グラントはその風貌がこの役に見事にはまった好演で,見応えあり.後味良い佳作.
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (1) | トラックバック (0)

2015/05/18

独断的映画感想文:るろうに剣心 京都大火編

日記:2015年4月某日
映画「るろうに剣心 京都大火編」を見る.1_3
2014年.監督:大友啓史,アクション監督:谷垣健治.
出演:佐藤健(緋村剣心),武井咲(神谷薫),伊勢谷友介(四乃森蒼紫),青木崇高(相楽左之助),蒼井優(高荷恵),神木隆之介(瀬田宗次郎),江口洋介(斎藤一),藤原竜也(志々雄真実),宮沢和史(大久保利通),土屋太鳳(巻町操).
るろうに剣心は1994年から少年ジャンプに掲載されたコミック,既に20年以上前となる.原作をちゃんと読んだことはさすがになかったが,ここに来てこの映画のアクションシーンの評判はなかなかのものと聞き,鑑賞した次明治の世になり,かって人斬りと怖れられた緋村剣心は,人を切れない逆刃刀を身につけ仲間と共に穏やかに暮らす.2_3
ところが,剣心の後を継いで人斬り役を勤め,鳥羽伏見の戦いで口封じのため官軍に虐殺されたはずの志々雄真実が,生き延びて反政府活動を拡大していると判明.志々雄を封じようとした大久保利通は,先手を打った志々雄に暗殺される.
かくて剣心は志々雄と対決するため,京都に赴くが….3_2
物語はコミックらしい荒削りの御都合主義で,人物造形もあまりにも単純.
この映画はむしろ,いかにもはまり役の俳優達とその殺陣を楽しむ映画である.殺陣はワイヤーアクションを交え,なかなか斬新なもので見応えあり.若い俳優達とベテランの田中泯もそれぞれに魅力的である(さすがに江口洋介は一人浮きまくっていたが).4_2
140分近い作品だが最後まで退屈せず一気に見た.僕のような単純な男向きの映画ということか.
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

独断的映画感想文:るろうに剣心 伝説の最期編

日記:2015年5月某日
映画「るろうに剣心 伝説の最期編」を見る.1_2
2014年.監督:大友啓史.
出演:佐藤健(緋村剣心),武井咲(神谷薫),伊勢谷友介(四乃森青紫),青木崇高(相楽左之助),蒼井優(高荷恵),神木隆之介(瀬田宗次郎),土屋太鳳(巻町操),田中泯(翁/柏崎念至),宮沢和史(大久保利通),小澤征悦(伊藤博文),江口洋介(斉藤一),藤原竜也(志々雄真実),福山雅治(比古清十郎).
コミックを原作としたこのシリーズの完結編2部作の後編である.2
前回で拉致された薫を追って,単身宿敵の志々雄真実の装甲艦に乗り込んだ剣心は,志々雄等の配下を打ち破れぬまま,海に突き落とされた薫を追って海中に身を投じた.
打ち上げられた剣心は剣の師・比古清十郎に救われ,改めて志々雄打倒のため秘剣の奥義を得るための修行に挑む.3
薫も漁船に救われ無事だったが,志々雄の装甲艦は東京に現れ,明治政府に剣心の捕縛等の要求を突きつける.奥義を得た剣心,薫の一行,お庭番・操達も東京に向かったが….
相変わらずテンポ良い展開と壮烈な殺陣,個々の俳優のがんばりによる映像の魅力で,最後まで一気に見た.
しかし原作の破天荒な世界をそのまま2時間強の尺の実写に落とし込んだ結果,物語の構成としてはバランスが悪くなった.4
登場人物は志々雄の配下達の方が遙かに魅力的である.コミックでは彼等の物語を詳細に描き込んでいたのであろうが,映画版では単なるその他大勢になっている.その結果,最後の決戦での両者の主張・正当性があいまいになってしまい,従ってエピローグの叙情もさっぱりという結果になったのが残念.
★★★(★5個が満点)5
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

番外:独断的歌舞伎感想文 平成中村座 妹背山婦女庭訓/高坏/極付 幡随長兵衛

日記:2015年5月某日
歌舞伎「平成中村座 陽春大歌舞伎 夜の部」を幕の内側「桜席」で見る.Nakamuraza_201504ff2
「一、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)三笠山御殿」.出演:杉酒屋娘お三輪(中村七之助),漁師鱶七実は金輪五郎今国(中村獅童),橘姫(中村児太郎),豆腐買娘お柳(波野七緒八),豆腐買おむら(中村勘九郎),烏帽子折求女実は藤原淡海(中村橋之助).「二、高坏(たかつき)」.出演:次郎冠者(中村勘九郎),高足売(中村国生),太郎冠者(中村鶴松),大名某(片岡亀蔵).「三、極付 幡随長兵衛(ばんずいちょうべえ)「公平法問諍」」.出演.幡随院長兵衛(中村橋之助),女房お時(中村七之助),出尻清兵衛(中村勘九郎),伊予守源頼義(坂東新悟),御台柏の前(中村児太郎),子分極楽十三(中村国生),同 雷重五郎(中村宗生),同 閻魔大助(中村宜生),同 笠森団六(中村鶴松),近藤登之助(片岡亀蔵),唐犬権兵衛(中村獅童),水野十郎左衛門(坂東彌十郎).
「三笠山御殿」は短縮版ながら,お三輪と鱶七の芝居が良くて面白かった.反面,橘姫と求女の芝居は端折りすぎのせいか話が良く分からず消化不良.
これでは求女は只の不実な遊び人という感じになってしまう.
「高坏」は踊りが面白く楽しく見た.後半のタップダンスになると客席から手拍子が入って賑やか.幕が閉まった後,まだ踊りながら勘九郎が桜席に向かって指を1本上げあと一回とサインし,もう1クール踊って終了したサービスが嬉しかった.
「幡随長兵衛」は,まず今回名代昇進の中村いてうが劇中劇の公平を演じたのが出来が良く,更に劇中劇中口上で挨拶したのが客席から拍手で迎えられて良い雰囲気.
橋之助の長兵衛ははまり役で,台詞の乗りも良く,絶好調であった.
国生はどうも目つきが悪すぎる.宗生・宜生の台詞は,未だ歌舞伎以前の段階.鶴松に比べるのはちょっと気の毒か.
亀蔵,獅童,彌十郎,柴のぶが手なれた演技で脇を固める.最後の湯殿の場面は凄惨な迫力に思わず身を乗り出した.
やはり中村座の雰囲気は捨てがたい.この芝居小屋が今後とも続きます様に.
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

独断的映画感想文:浮雲

日記:2015年4月某日
映画「浮雲」を見る.1
1955年.監督:成瀬巳喜男.
出演:高峰秀子(幸田ゆき子),森雅之(富岡),中北千枝子(妻・邦子),岡田茉莉子(おせい),山形勲(伊庭杉夫),加東大介(向井清吉),木匠マユリ(飲み屋の娘),千石規子(屋久島の小母さん).
ネタバレあります.
太平洋戦争中,南方駐屯地で愛人関係にあったゆき子と富岡.終戦後引き上げてきたゆき子は富岡を訪ねるが,富岡は妻と別れるという約束を違え,役所も辞めて材木で一山当てると言う.
捨てられた由紀子は米兵のオンリーとなりバラックに住む.やがて富岡とよりを戻し二人で伊香保へ旅行するが….
既に評価の定まった名作.
隙の無い映像,男女の運命の変転,それぞれ役にはまった俳優達の好演が魅力的.特に森雅之のどうしようもない富岡像は秀逸.投げやりで無責任,それなのに女に対しては上から目線の台詞の積み重ねは,この人ならではという感じがする.
結局富岡を巡る女性は全て無念の死を遂げる訳だが,それにも拘わらず,ラストシーンの富岡の涙には共感するところがある.
音楽も悪くない.この時代のいかにも日本映画らしい映画.
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年4月 | トップページ | 2015年6月 »