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2015年6月に作成された記事

2015/06/29

独断的映画感想文:ウィズネイルと僕

日記:2015年6月某日
映画「ウィズネイルと僕」を見る.1
1987年.監督:ブルース・ロビンソン.
出演:リチャード・E・グラント(Withnail),ポール・マッギャン(I/Marwood),リチャード・グリフィス(Monty),ラルフ・ブラウン(Danny),マイケル・エルフィック(Jake).
ウィズネイルと僕は売れない貧乏役者.ゴミためのようなアパートで共同生活しているが,仕事は滅多になく朝から酒を飲みタバコを吹かす毎日.
食い詰めた彼等はウィズネルの伯父モンティの別荘を借りることに成功し,おんぼろジャガーで乗り込むが,別荘には薪もなく食料もない.
冷たい雨の中出かけた僕は,近くの農民から薪を調達し鶏を購入.しかし村のパブでは地元の人にゲイと罵られる.2
伯父モンティが突然終末に訪ねてきて,皆彼が持参したワインを堪能するが,その夜僕は人生最大の危機に直面する….
60年代末のイギリスを舞台に描かれる若者像.
性と文化の革命期60年代も煮詰まったこの頃,ある者はそこから離陸を果たしある者はそのゴミための中に埋もれていく.
若者二人の荒れた生活や,村の人たちへの虚言,居丈高で嘲弄的なもの言いなど,見ていて相当に痛い映画だが,日本でも団塊の世代の若者達を始め僕自身も含め,同様な青春が繰り返されたのがこの時代である.それを率直に描いた映画として,痛いながらも魅力がある.3
リチャード・E・グラント,リチャード・グリフィスが,付き合うのはまっぴらだが悪人とまでは言えない個性的な面々を熱演.
最後のシーン,動物園の檻を相手に雨中シェークスピアを演じるウィズネイルが,印象的だ.
★★★☆(★5個が満点)
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2015/06/24

番外:独断的歌舞伎感想文 六月大歌舞伎 昼の部 天保遊俠録/新薄雪物語

日記:2015年6月某日
歌舞伎座で「六月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_201506f
「一、天保遊俠録(てんぽうゆうきょうろく)」.出演:小吉(橋之助),芸者八重次(芝雀),芸者茶良吉(児太郎),松坂庄之助(国生),唐津藤兵衛(松之助),井上角兵衛(團蔵),大久保上野介(友右衛門),阿茶の局(魁春).「二、新薄雪物語(しんうすゆきものがたり) 花見 詮議」.出演: 〈花見〉 奴妻平(菊五郎),秋月大膳(仁左衛門),園部左衛門(錦之助),薄雪姫(梅枝),花山艶之丞(由次郎),渋川藤馬(松之助),清水寺住職(錦吾),来国行(家橘),来国俊(橋之助),腰元籬(時蔵),団九郎(吉右衛門). 〈詮議〉 幸崎伊賀守(幸四郎),園部兵衛(仁左衛門),松ヶ枝(芝雀),園部左衛門(錦之助),薄雪姫(児太郎),茶道珍才(隼人),役僧雲念(桂三),秋月大学(彦三郎),葛城民部(菊五郎).
天保遊俠録は小吉を橋之助が演じる.橋之助はやはりこういう役に向いているのは間違いないが,今回はべらんめえが過ぎて,何を言っているのか聞き取れない場面が多かった.
国生の庄之助も口跡が今ひとつ.魁春が流石の貫禄で芝居を締めていた他,児太郎の芸者茶良吉がすっきりした立ち姿で美しかった.
新薄雪物語は菊五郎,仁左衛門,吉右衛門,幸四郎の競演でさすがに素晴らしい充実の舞台.
昼の部はそのなかでも菊五郎が,「花見」終わりの立ち回り,「詮議」民部の裁きと,良いところをさらっていった.
仁左衛門は悪と善との二役で見応えあり.他に梅枝,錦之助,魁春がすてきだった.
夜の部と併せ,これが歌舞伎だと納得させる新薄雪物語だった.記憶に残る舞台である.
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独断的映画感想文:her/世界でひとつの彼女

日記:2015年6月某日
映画「her/世界でひとつの彼女」を見る.Her0
2013年.監督:スパイク・ジョーンズ.
出演:ホアキン・フェニックス(セオドア・トゥオンブリー),エイミー・アダムス(エイミー),ルーニー・マーラ(キャサリン),オリヴィア・ワイルド(デートの相手),クリス・プラット(ポール),マット・レッシャー(チャールズ),ポーシャ・ダブルデイ(イザベラ),声の出演:スカーレット・ヨハンソン(サマンサ).
ネタバレあります.
セオドアは手紙の代筆を業とする.妻とは離婚調停中だが,彼には未練がある.ネット上で拾った相手とテレフォンセックスをする味気ない日々.Her1
或る日人工知能による新しいOSの広告を見た彼は,早速ダウンロードする.OSはサマンサと名乗り,彼の日常生活を支え,話し相手になる.
サマンサに勇気づけられ,彼は新しい相手とのデートに臨むが,それは失敗.サマンサに慰められセオドアは,彼女と声によるセックスを経験する….
近未来SFとしては平凡な筋書きだ.
サマンサはこの後,新しい段階に進化して(らしい)彼を捨てる.セオドアは,同じようにOSに捨てられた昔馴染みのエイミーと再出発する状況となって映画は終わる.Her2
しかし,鉄腕アトムをロボットとしてイメージする僕らにとって,この映画はかなり違和感のあるものとなった.
OSサマンサが,当然の様にカスタマーであるセオドアとセックスをしようとするのが,まず受け入れられない.OSとそういう関係になって,喧嘩したり仲良くなったりということがありうるだろうか?
また終盤に,サマンサが実はネット上の存在であることが明かされるのもおかしい.
OSとしてセオドアの殆ど全ての個人情報を得る立場にあるサマンサが,実は彼のPCに所属するのではない,というのはルール違反ではないか.Her3
サマンサは実は800人以上のカスタマの共有物であった.そうするとこれはSFというよりは寓話だと受け止めざるを得ない.それにしては平凡な筋書きだというのが,この映画の感想である.
ホアキン・フェニックスやエイミー・アダムスは好演.
★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 六月大歌舞伎 夜の部 新薄雪物語/夕顔棚

日記:2015年6月某日
歌舞伎座で「六月大歌舞伎 夜の部」を見る.Img_18622
「一、新薄雪物語(しんうすゆきものがたり) 広間 合腹 正宗内」.〈広間・合腹〉.出演:園部兵衛(仁左衛門),梅の方(魁春),刎川兵蔵(又五郎),奴袖平(権十郎),腰元呉羽(高麗蔵),薄雪姫(米吉),園部左衛門(錦之助),松ヶ枝(芝雀),幸崎伊賀守(幸四郎).〈正宗内〉.出演:団九郎(吉右衛門),おれん(芝雀),腰元呉羽(高麗蔵),五人組伊太郎(歌昇),同 仁助(種之助),同 与吉(隼人),薄雪姫(米吉),渋川藤馬(桂三),下男吉介実は来国俊(橋之助),五郎兵衛正宗(歌六).「二、夕顔棚(ゆうがおだな)」.出演:婆(菊五郎),里の女(梅枝),里の男(巳之助),爺(左團次).
新薄雪物語は,幸四郎,吉右衛門,仁左衛門の豪華競演が流石に見応えあり.特に仁左衛門の兵衛の薄雪に対する情愛,伊賀守の真意を見抜く芝居に共感できる.
それぞれに素晴らしい役者達の中で,梅の方の魁春,正宗の歌六がこの人ならではの芝居で素晴らしかった.又五郎の兵蔵はうつむき加減の沈痛な面持ちながら,その所作が折り目正しい武士のたたずまいを存分に示し,胸を打たれる.Img_18662
米吉の薄雪姫も素敵.
新薄雪物語という間口の広い骨太な物語を,充分に堪能できた.歌舞伎界にとっても大きな収穫なのだろう.
夕顔棚では菊五郎の婆さんと左團次の爺さんが楽しく踊って和やかな雰囲気.村の男女の巳之助・梅枝も丁寧な良い踊りだった.
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2015/06/14

独断的映画感想文:日記:ブランカニエベス

日記:2015年6月某日
映画「ブランカニエベス」を見る.0
2012年.監督:パブロ・ベルヘル.
出演:マリベル・ベルドゥ(エンカルナ),ダニエル・ヒメネス・カチョ(アントニオ・ビヤルタ),アンヘラ・モリーナ(ドン・コンチャ),マカレナ・ガルシア(カルメン),ソフィア・オリア(カルメン少女時代).
ブランカニエベスは白雪姫のこと.
名闘牛士にして大富豪のアントニオは,思わぬアクシデントから闘牛で瀕死の重傷を負う.観戦中の身重の妻カルメンは産気づき,女児を産み落とすがそのまま息絶える.3
四肢マヒとなったアントニオは看病に尽くした看護師エンカルナと結婚,女児は母の名を取ってカルメンと名付けられ,母同様フラメンコの名手である祖母に育てられる.
祖母の死と共にエンカルナに引き取られたカルメン,しかし既にアントニオを虐待していたエンカルナは,彼女を下女としてこき使った.
或る日父と巡り会ったカルメンは,エンカルナの留守中に父に闘牛の手ほどきを受け幸せな時を過ごす.しかしそれもエンカルナに発覚し,カルメンは罰として唯一の親友・雄鶏のぺぺの肉を夕食に食べさせられる.4
やがて父が亡くなり(エンカルナの謀殺),カルメンも森でエンカルナの情人に襲われる.瀕死のところを彼女はこびとの闘牛士一座に救われ,記憶を失ったまま「白雪姫」と名付けられ共に巡業の旅に出る.
やがて闘牛士としてデビューした彼女はたちまち人気者となり,興行師と契約して父と同じセビリヤの闘牛場に出ることになるが….2
モノクロ・サイレントで描かれるダークファンタジーの名にふさわしい物語.
最小限に表示される台詞にはその分想像力をかき立てられ,白黒の光と影を描く映像は物語りに素晴らしい彩りを与える.映画らしい見応えに富む作品.
更に大人の童話らしい,残酷なドラマの展開と悲劇的終末も心に残る.1
ラストシーンは様々な受け取り方があるだろうが,メジャー闘牛士としてのデビューという輝かしい栄光の後に,この様な悲哀が待っていようとは.本当の魔法使いはこの人だったのか,と思い至った次第である.
一見の価値ある映画.
★★★★(★5個が満点)
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2015/06/11

番外:独断的歌舞伎感想文:團菊祭五月大歌舞伎 丸橋忠弥/蛇柳/め組の喧嘩

日記:2015年5月某日
「團菊祭五月大歌舞伎」を見る.Kabukiza_201505fff
「一、慶安太平記(けいあんたいへいき) 丸橋忠弥」.出演:丸橋忠弥(松緑),女房おせつ(梅枝),駒飼五郎平(亀寿),勝田弥三郎(歌昇),母おさが(右之助),弓師藤四郎(團蔵),松平伊豆守(菊之助).「二、歌舞伎十八番の内 蛇柳(じゃやなぎ)」.出演:丹波の助太郎実は蛇柳の精魂/金剛丸(海老蔵),阿仏坊(亀三郎),覚圓(亀寿),普門坊(巳之助),誓願坊(尾上右近),徳善坊(種之助),随喜坊(鷹之資),住僧定賢(松緑).「三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ) め組の喧嘩 品川島崎楼より神明末社裏まで」.出演:め組辰五郎(菊五郎),女房お仲(時蔵),九竜山浪右衛門(又五郎),柴井町藤松(菊之助),背高の竹(亀三郎),三ツ星半次(亀寿),芝浦の銀蔵(歌昇),伊皿子の安三(萬太郎),おもちゃの文次(巳之助),御成門の鶴吉(竹松),新銭座の吉蔵(尾上右近),二本榎の若太郎(廣太郎),亀の子三太(種之助),狸穴の重吉(廣松),烏森の竹次(隼人),花籠の清三(男寅),山門の仙太(鷹之資),左利の芳松(橘太郎),三池八右衛門(松之助),葉山九郎次(橘三郎),神路山花五郎(由次郎),宇田川町長次郎(権十郎),尾花屋女房おくら(萬次郎),露月町亀右衛門(團蔵),江戸座喜太郎(彦三郎),四ツ車大八(左團次),炊出し喜三郎(梅玉).
「丸橋忠弥」は劇の構成としてはいささか中途半端で,松平伊豆の守との邂逅がどうなるかも判らぬまま,忠弥が舅に訴え出られての捕り物になる次第は,ちょっと判りにくい.
但し,大詰めの延々と続く大立ち回りでの松緑は大奮闘.これだけで充分な見せ場である.
海老蔵の「蛇柳」は踊り音楽共に見応え,聞き応えあり.
「め組の喧嘩」は理屈抜きの大乱闘劇.肩のこらない楽しい舞台であった.
若手では右近の立ち役が若々しく美しい.蛇柳・め組の喧嘩共に颯爽として格好良かった.
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独断的映画感想文:ベスト・フレンズ・ウェディング

日記:2015年5月某日
映画「ベスト・フレンズ・ウェディング」をみる.4
1997年.監督:P・J・ホーガン.
出演:ジュリア・ロバーツ(ジュリアン),ダーモット・マローニー(マイケル),キャメロン・ディアス(キミー),ルパート・エヴェレット(ジョージ),フィリップ・ボスコ(ウォルター),スーザン・サリヴァン(イザベル),キャリー・プレストン(アマンダ),レイチェル・グリフィス(サマンサ),M・エメット・ウォルシュ(ジョー),クリス・マスターソン(スコッティ),ポール・ジアマッティ(リチャード).1
料理評論家のジュリアンは,年来の親友でスポーツ記事を書いているマイケルと,28歳まで互いに独身だったら結婚しようと約束した仲.28歳間近のある夜,マイケルからの電話は,ところが彼が5日後に結婚するという衝撃の電話だった.
お相手はジョージの雇用主である資産家の娘で20歳のキミー,キミーはジュリアンに花嫁側の介添えになって欲しいと依頼する.
ここに至ってマイケルへの愛に目覚めたジュリアンは,キミーとの仲を何とかぶち壊そうとマイケルの元に駆けつけるのだが….2
ラブコメだが,28歳のジュリアンの活動は,いささかしゃれにならないあざとさを感じさせ,一方20歳のキミーの純情一途なマイケルへの愛はなかなか素敵.観客としてはどちらに感情移入して良いかまごつくという,ちょっとすっきりしない物語である.
ジュリア・ロバーツの演技はそれなりに見応えがあるが,個人的には彼女の編集者でゲイのジョージに好感を持った.
彼こそ彼女の真のベスト・フレンドだったのね,ということが判明するくだりは,なかなか良いシーンである.3
また中盤の,会食者全員が「I Say A Little Prayer」を歌い出す有名なシーンや,観光ボートでジュリアンとマイケルがダンスを始めるシーンも,いかにもアメリカ映画らしくて楽しい.
肩のこらない好編.★★★☆(★5個が満点)
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