独断的映画感想文:さよならアドルフ
日記:2015年7月某日
映画「さよならアドルフ」を見る.
2012年.監督:ケイト・ショートランド.
出演:ザスキア・ローゼンダール(ローレ),カイ・マリーナ(トーマス),ネーレ・トゥレプス(リーゼル),ウルシーナ・ラルディ(ローレの母),ハンス=ヨヘン・ヴァークナー(ローレの父).
戦争末期,ナチス高官の父母と共にそれまで住んでいた豪邸を出て,田舎の百姓家の離れに移ったロ-レ達.
しかしヒトラーの死が伝えられると父は姿を消し,母は連合軍に出頭すべく子供達を置いて立ち去る.14才のロ-レは,妹リーゼルと双子の弟ユルゲン・ギュンター,乳飲み子のペーターと共に,遙か900キロ離れたハンブルグに住む祖母の家を目指して出発する.
町や村は破壊され,至る所に死体が転がる.避難民への救護施設で食料を得る他は,宝飾品を売りしのぐ日々.
やがてトーマスという青年が彼等の道連れになり,身分証明書を持たない彼等に裏道を教え,手助けをしてくれるようになる.
トーマスはローレに好意を持っているようだが,ロ-レはユダヤ人だという彼を忌み嫌い,油断しない….
主人公ローレの揺れ動く感情と心情に惹きつけられる.
この14才の少女は強い意志を持って妹弟を祖母の元まで連れて行こうと決意し,その為には自分の身体を与えることさえ厭おうとしない.
一方でトーマスに対する気持ちは,ユダヤ人である彼への嫌悪,思春期の少女としての興味,たびたび救われたことへの親愛の情が混沌として,自分でも持て余す葛藤の中にある.
逃避行の途中で目にする敗戦ドイツの混乱も印象的だ.
壁に張り出されたホロコーストの写真に写る,ナチス将校の姿に動揺するロ-レ.泊めて貰った農家で弟たちにナチスの軍歌を歌わせ懐かしむ老婦人への反感.ようやく辿り着いたハンブルグで,子供達に規律とマナーを厳しく求める祖母への激しい反発.
ローレも大きく変わったのだ.
この後彼女はどう生きていくのだろうか.
ロ-レ達の葛藤の一方で,敗戦を受け入れられない老人達の頑なな姿勢も心に残った.
ところで邦題はちょっとセンスが悪い.原題はただ「ロ-レ」である.
★★★★(★5個が満点)
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