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2015年7月に作成された記事

2015/07/30

番外:独断的歌舞伎感想文 阿弖流為(アテルイ)

日記:2015年7月某日
新橋演舞場で歌舞伎「阿弖流為」を見る.Ateruifl_201507_f
出演:阿弖流為(市川染五郎),坂上田村麻呂利仁(中村勘九郎),立烏帽子/鈴鹿(中村七之助),阿毛斗(坂東新悟),飛連通(大谷廣太郎),翔連通(中村鶴松),佐渡馬黒縄(市村橘太郎), 無碍随鏡(澤村宗之助),蛮甲(片岡亀蔵),御霊御前(市村萬次郎),藤原稀継(坂東彌十郎).
後に蝦夷の長となる阿弖流為と恋人の鈴鹿は,荒覇吐の神の怒りに触れ故郷を離れ都にいる.
偽の蝦夷の盗賊団を共に捕らえた縁で,意気投合した坂上田村麻呂と阿弖流為,しかし彼等はやがて蝦夷の地で敵・味方に分かれて戦う運命にあった….
現代的な衣装とメイク,スピーディーな殺陣と群像シーン等には最初違和感を持ったが,物語の展開に引き込まれすっかり夢中になった.
染五郎・勘九郎・七之助の3人が,出ずっぱりでもあり舞台狭しと切り結ぶ殺陣の連続もあり,魅力満点である.染五郎はこういう現代的メイクでは幸四郎によく似ている.
脇を固める役者も濃いキャラクターの俳優ばかりで,素晴らしい.
彌十郎・亀蔵は良い役をたっぷりに演じてそれぞれに見応えあり.萬次郎の怪しい美貌は,その素晴らしい口跡と併せ印象に残った.橘太郎も良い役で(ほぼ3等身の扮装が素敵)その実力を遺憾なく発揮,新悟は口跡素晴らしく,アクション女優ぶりが際立った.
渾身の舞台を堪能して,見終わった後は爽快な気分.楽しかった.
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2015/07/29

独断的映画感想文:GODZILLA ゴジラ

日記:2015年7月某日
映画「GODZILLA ゴジラ」を見る.Godzilla1
2014年.監督:ギャレス・エドワーズ.
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン(フォード・ブロディ),渡辺謙(芹沢猪四郎博士),エリザベス・オルセン(エル・ブロディ),ジュリエット・ビノシュ(サンドラ・ブロディ),サリー・ホーキンス(ヴィヴィアン・グレアム),CJ・アダムズ(フォード(少年時代)),カーソン・ボルデ(サム・ブロディ),デヴィッド・ストラザーン(ウィリアム・ステンツ司令長官),ブライアン・クランストン(ジョー・ブロディ).
1999年フィリピン,石炭鉱山の陥没現場から謎の古代生物の化石が見つかる.Godzilla3
調査に赴いた芹沢博士は,放射能をエネルギー源とする古代生物の一種と判断,化石と同時に見つかった卵の周辺からは,孵化した生物が海に向かった痕跡があった.
一方,富士山麓の雀路羅市の原発基地では,謎の震動と電磁パルスが炉を襲い,ついに原子炉の一基はメルトダウンする.周囲は立入禁止となったが,妻をメルトダウンで失ったジョー・ブロディは謎の振動の調査を続けていた.Godzilla2
15年後,成人したジョーの息子フォードは,父逮捕の知らせを受け日本に急行する.釈放されたジョーに懇願されフォードは共に立入禁止エリアに入るが,そこには汚染はなく,巨大な監視施設が建設されていた.
その中心にあった繭からついに古生物が誕生し,施設を崩壊させて飛び去っていった.太平洋を東に向かう古生物,それをゴジラとして知られる巨大怪獣が出現し追って行く.フォード,芹沢博士等は米空母に乗り込んでその後を追った….Godzilla4
先に生まれた古代生物ムートーは,サンフランシスコに上陸,雌のムートーと合流する.
ムートーは電子パルスを発射し,3キロ以内では停電が起きあらゆる電子兵器は使えない.アナログ兵器で立ち向かう人類はムートーに全く歯が立たない.
絶望的な闘いをなお続ける人類はどうなるのか.ムートーの繁殖を許せば,人類は間違いなく滅亡する….
物語の展開の面白さ,映像と音響の圧倒的な迫力,そのたたみかけがこの映画の比類のない魅力である.
ムートー攻撃に飛び立った空爆隊が,電磁パルスでコントロールを失い,なす術も無く墜落して高層ビルに激突する.それを呆然と仰ぎ見る市民達.Godzilla5
一方,山が動くようなゴジラの登場,荒ぶる神としか言いようのないゴジラの活動はどういう結果をもたらすのか.人類の無力さと圧倒的なゴジラの力の対比が,映画のクライマックスを劇的に盛り上げる.
映画らしい映画,見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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2015/07/20

独断的映画感想文:フルートベール駅で

日記:2015年7月某日
映画「フルートベール駅で」を見る.1
2013年.監督・脚本:ライアン・クーグラー.
出演:マイケル・B・ジョーダン(Oscar Grant),メロニー・ディアス(Sophina),オクタヴィア・スペンサー(Wanda),ケビン・デュランド(Officer Caruso),チャド・マイケル・マーレイ(Officer Ingram),アーナ・オライリー(Katie).
実話に基づく物語り.
2009年の1月1日未明.22才の黒人青年オスカー・グラントはカリフォルニア州オークランドのフルートベール駅で,警官に射殺された.2
映画の冒頭,実際に目撃者が撮影した動画が流される.警官に一方的に押さえつけられた黒人青年の一団,銃声と共に画面は暗転する.
この前日,何時ものように娘を保育園に送ったオスカーは,母親の誕生日のお祝いを買い揃えるため,元勤め先の店に寄るが,そこで白人女性ケイティーの買い物を手伝う.
店のオーナーに復職を頼み込むが,それは不首尾に終わった.彼は時間にルーズな癖があり,2度の遅刻を理由にクビを宣告されたのだ.3
オスカーは薬の売人として数回の服役歴があったが,娘も大きくなり,新しい年を前に,薬の売人は辞めようと決意していた.復職の目処は立たなかったが,売人を辞める彼の決意を妻ソフィーナは歓迎する.
母親・ワンダの誕生日を祝った後,サンフランシスコの花火を見に出かけようというオスカー等を,母・ワンダは事故を心配して電車で出かけるよう諭す.ところがその電車内でケイティーと出会ったオスカーは,白人グループとの喧嘩に巻き込まれた….
服役歴はあっても,母思いで娘を愛するごく普通の青年・オスカーの死の前の24時間を描いた映画.欠点はありながらも素直で優しく,友人家族に恵まれた22才の青年の最後の一日が,心に刻み込まれる.
オスカー,ソフィーナ,ワンダを演じた俳優がそれぞれ素晴らしく,特にワンダ役のオクタヴィア・スペンサーが印象的だ.4
事件は,既に制圧した容疑のない黒人青年を,衆人環視のもと背後から射殺するという警官による殺害事件だが,映画はそのことを声高に非難している訳ではない.映画は一連の事実そのものと,この青年がどんな人だったか,家族をいかに愛し,家族にいかに愛されていたかを描くことで,レイシズムを根底から批判する視点を示している.それが見終わった後心に残る.
★★★★(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 7月大歌舞伎昼の部 南総里見八犬伝/与話情浮名横櫛/蜘蛛絲梓弦

日記:2015年7月某日
7月大歌舞伎昼の部を見る.Kabukiza_201507fff
「一、南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん) 芳流閣屋上の場 円塚山の場」.出演:犬山道節(梅玉),犬飼現八(市川右近),犬川荘助(歌昇),犬江親兵衛(巳之助),犬村角太郎(種之助),浜路(笑三郎),犬田小文吾(猿弥),犬坂毛野(笑也),網干左母二郎(松江),犬塚信乃(獅童).「二、与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし) 見染め 源氏店」.出演:与三郎(海老蔵),蝙蝠安(獅童),番頭藤八(猿弥),お岸(歌女之丞),鳶頭金五郎(九團次),和泉屋多左衛門(中車),お富(玉三郎).「三、蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」.出演:市川猿之助六変化相勤め申し候 童熨斗丸・薬売り彦作・番頭新造八重里・座頭亀市・傾城薄雲実は女郎蜘蛛の精(猿之助),源頼光(門之助),坂田金時(市川右近),渡辺綱(巳之助),碓井貞光(獅童),平井保昌(海老蔵).
八犬伝はとんでもないダイジェスト版,話の筋は置いておいて,役者の顔を揃えましたというだけで見るべきものなし.
獅童が主役張っているのは嬉しいが,これではあまり喜べない.
次の斬られ与三郎も同じ.与三郎がお富を見初めたと思ったら,もう斬られて出てくる.その間の説明もなければ何年後だという断りもなし.
まあ歌舞伎ファンは知ってて当然でしょうということであろう.肝心のお富と与三郎の台詞のやり取りも,両者の台詞のリズムが合わず,寝てしまいました.まだまだ修行が足りません.
こういう歌舞伎ファンにとっては,やはり猿之助の芝居は心楽しく夢中になれる.
変化のスピード感も良し,傾城薄雲実は女郎蜘蛛の精の時の激しい所作は,歌舞伎界随一のアクション女優と思えた亀治郎時代を彷彿とさせる素晴らしさ.海老蔵の押し戻しもこういう舞台に良く合って印象的であった.
終わりよければ全て良しで大満足.
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2015/07/16

番外:独断的歌舞伎感想文:義経千本桜 渡海屋の場・大物浦の場

日記:2015年7月某日
国立劇場「歌舞伎鑑賞教室」を見る.H277yoshitunesenbonzakuraomote3
解説:歌舞伎のみかた.中村萬太郎.「義経千本桜 (よしつねせんぼんざくら)一幕二場 渡海屋の場・大物浦の場」.竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作.中村吉右衛門=監修.国立劇場美術係=美術.出演:尾上菊之助,坂東亀三郎,中村萬太郎,尾上右近,中村梅枝.
岳父・中村吉右衛門の監修によるこの名作を,菊之助が気力充実,渾身の舞台で魅せた.
辺りをはらう渡海屋銀平の堂々たる主人ぶり,安徳帝に忠義を捧げる武者・知盛の悲壮な最期など,心にしみる演技である.
死を決意して以降の悲劇の盛り上がりも素晴らしい.
更に化粧に工夫があるのだろう,小顔が大きく見えるところ,終盤の知盛の眼の紅なども印象的だ.
梅枝も魅力的,安徳帝を抱きすっと立つ立ち姿が,気品があり美しい.
充実の舞台であった.

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独断的映画感想文:さよならアドルフ

日記:2015年7月某日
映画「さよならアドルフ」を見る.1
2012年.監督:ケイト・ショートランド.
出演:ザスキア・ローゼンダール(ローレ),カイ・マリーナ(トーマス),ネーレ・トゥレプス(リーゼル),ウルシーナ・ラルディ(ローレの母),ハンス=ヨヘン・ヴァークナー(ローレの父).
戦争末期,ナチス高官の父母と共にそれまで住んでいた豪邸を出て,田舎の百姓家の離れに移ったロ-レ達.
しかしヒトラーの死が伝えられると父は姿を消し,母は連合軍に出頭すべく子供達を置いて立ち去る.14才のロ-レは,妹リーゼルと双子の弟ユルゲン・ギュンター,乳飲み子のペーターと共に,遙か900キロ離れたハンブルグに住む祖母の家を目指して出発する.4
町や村は破壊され,至る所に死体が転がる.避難民への救護施設で食料を得る他は,宝飾品を売りしのぐ日々.
やがてトーマスという青年が彼等の道連れになり,身分証明書を持たない彼等に裏道を教え,手助けをしてくれるようになる.
トーマスはローレに好意を持っているようだが,ロ-レはユダヤ人だという彼を忌み嫌い,油断しない….
主人公ローレの揺れ動く感情と心情に惹きつけられる.
この14才の少女は強い意志を持って妹弟を祖母の元まで連れて行こうと決意し,その為には自分の身体を与えることさえ厭おうとしない.3
一方でトーマスに対する気持ちは,ユダヤ人である彼への嫌悪,思春期の少女としての興味,たびたび救われたことへの親愛の情が混沌として,自分でも持て余す葛藤の中にある.
逃避行の途中で目にする敗戦ドイツの混乱も印象的だ.
壁に張り出されたホロコーストの写真に写る,ナチス将校の姿に動揺するロ-レ.泊めて貰った農家で弟たちにナチスの軍歌を歌わせ懐かしむ老婦人への反感.ようやく辿り着いたハンブルグで,子供達に規律とマナーを厳しく求める祖母への激しい反発.
ローレも大きく変わったのだ.5
この後彼女はどう生きていくのだろうか.
ロ-レ達の葛藤の一方で,敗戦を受け入れられない老人達の頑なな姿勢も心に残った.
ところで邦題はちょっとセンスが悪い.原題はただ「ロ-レ」である.
★★★★(★5個が満点)
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