独断的映画感想文:日本のいちばん長い日
日記:2015年8月某日
映画「日本のいちばん長い日」を見る.
2015年.原作:半藤一利.監督・脚本:原田眞人.
出演:阿南惟幾(陸軍大臣)-役所広司,昭和天皇-本木雅弘,鈴木貫太郎(首相)-山崎努,迫水久常(内閣書記官長)-堤真一,畑中健二(陸軍少佐) - 松坂桃李,木戸幸一(内大臣)-矢島健一,平沼騏一郎(枢密院議長)-金内喜久夫,藤田尚徳(侍従長)-麿赤兒,保科武子(女官長)-宮本裕子,米内光政(海軍大臣)-中村育二,東郷茂徳(外務大臣)-近童弐吉,下村宏(情報局総裁)-久保酎吉,梅津美治郎(陸軍参謀総長)-井之上隆志,森赳(近衛師団長)-高橋耕次郎,東条英機(陸軍大将、元首相)-中嶋しゅう,杉山元(元帥、前陸軍大臣)-川中健次郎,吉積正雄(軍務局長)-桂憲一,荒尾興功(陸軍大佐)-田中美央,井田正孝(陸軍中佐)-大場泰正,竹下正彦(陸軍中佐、阿南陸軍大臣の義弟)-関口晴雄,豊田副武(海軍軍令部総長)-井上肇,大西瀧治郎(海軍軍令部次長)-嵐芳三郎,岡田啓介(海軍大将、元首相)-吉澤健,阿南綾子(阿南陸軍大臣の妻)-神野三鈴,阿南喜美子(阿南陸軍大臣の次女)-蓮佛美沙子,鈴木たか(鈴木首相夫人)-西山知佐,鈴木一(首相秘書官、鈴木首相の長男)-小松和重,保木令子(NHK放送局員)-戸田恵梨香(特別出演),絹子(陸軍大臣官邸の女中)-キムラ緑子.
48年ぶりにリメイクされた,太平洋戦争の終戦を巡る映画.終戦の年の4月,鈴木貫太郎内閣発足時から8月15日にいたる経緯を描く.
15年続いた戦争は既に常態化し,それを止めるためには,既に国土は廃墟と化し敗北は明白となってなお,ここに描かれる異常な努力が必要だった事を示す物語.
この映画の基本的観点は,第1に昭和20年4月,ドイツ降伏直前に組織された鈴木貫太郎内閣が,昭和天皇の意志としては終戦内閣であったということ,第2に鈴木貫太郎・阿南惟幾は前者が侍従長だったときに後者は侍従武官であり,天皇との3者の間に人間的信頼関係があったということ,第3に降伏という事態にこの国を持っていく過程で阿南が陸軍を統制するために果たした役割を評価するということとなろう.
映画は緊張感高く,テンポ良く,しかも歴史に対する重厚な立ち位置を維持した作品として,高く評価できる.
特に阿南については,陸軍を統括するものとして本土決戦論を主張しながら,天皇の聖断に際してはそれを全面的に受け入れ,終戦のための手配を行った上で自決している.この8月の混乱の中での阿南の行動を中心に,映画は戦争を止めるということのダイナミズムを,必要十分に描いているだろう.
俳優は多くのキャストを演劇界から登用しており,多数の登場人物が破綻無く演出されている.特に東条英機役の中嶋しゅうは,鬼気迫る演技で戦争を始めた首相の狂気を描き切った.
役所広司,山崎努,本木雅弘は文句なしの演技.あまりに多い登場人物に対し,人物紹介のテロップを付けてもらえたら良かったのだが.
戦争ということを記念する上で欠かせない作品.★★★★☆(★5個が満点)
P.S. 15年間続けた戦争は,既に国家の建前上も経済上も止められないものになっていた.では原発はどうか.半世紀に亘って原発の利権をむさぼって来た原子力ムラからは,一人といえども阿南が出てくることなど期待できないのか.
我こそはという者は名乗り出よ.
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