番外:独断的歌舞伎感想文 秀山祭九月大歌舞伎 昼の部
日記:2015年9月某日
歌舞伎座で「秀山祭九月大歌舞伎 昼の部」を見る.
「一、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき) 新清水浮無瀬の場」.
出演:南与兵衛(梅玉),藤屋吾妻(芝雀),平岡郷左衛門(松江),太鼓持佐渡七(宗之助),堤藤内(隼人),手代権九郎(松之助),三原有右衛門(錦吾),山崎屋与五郎(錦之助),藤屋都(魁春).
いつも見る相撲場から始まる物語のこれが前段.与五郎が身請け寸前の吾妻に比べ,落ちぶれた与兵衛が間夫の都の方が不幸に見えるが,引き窓では都は既に与兵衛に身請けされ,両名名前を変えて濡れ髪長五郎を迎えることになる(吾妻と与五郎は相変わらず).魁春・錦之助の吾妻・与五郎が良かった.
「二、新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり)」.
出演:更科姫実は戸隠山の鬼女(染五郎),局田毎(高麗蔵),侍女野菊(米吉),山神(金太郎),従者左源太(廣太郎),従者右源太(亀寿),平維茂(松緑).
次女は米吉の他久しぶりの柴のぶが美しい.10才の金太郎が溌剌と踊る山神が素敵だったが,後はやや退屈.
「三、競伊勢物語(だてくらべいせものがたり) 序幕 奈良街道茶店の場,同 玉水渕の場,大詰 春日野小由住居の場,同 奥座敷の場」.
出演:紀有常(吉右衛門),絹売豆四郎/在原業平(染五郎),娘信夫/井筒姫(菊之助),絹売お崎(米吉),同 お谷(児太郎),旅人倅春太郎(初お目見得井上公春(桂三長男)),およね(歌女之丞),川島典膳(橘三郎),茶亭五作(桂三),銅羅の鐃八(又五郎),母小由(東蔵).
無茶苦茶な悲劇である.何と言っても昔馴染みの老婆のもとに入り込み,20年前預けた実の娘とその夫を,主筋の身代わりにする為,その場で斬って首を挙げるという,非道の物語.観客に納得させるのも難しいだろう.2時間という枠はこれでも足りなかったのではないかと感じさせる.
東蔵と吉右衛門がその物語の主筋を担って奮闘名演.又,菊之助の信夫が悲劇のヒロインにふさわしい演技で胸を打たれた.吉右衛門が演ずる紀有常は常人とは思えない役柄であるが,それでも最後に慟哭する場面では涙を誘われる.この狂言の難しさを感じざるを得ない.
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