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2015年10月に作成された記事

2015/10/29

阿佐谷ジャズストリート2015観戦記

10月23日(金)・24日(土)は,第21回の阿佐谷ジャズ・ストリート.その観戦記を以下記したのでご検分願いたい.Yosukeyamashita_andny
23日はまず,新東京会館の「昼下がりのジャズ」を聞きに行く.
ここは小田陽子のバンドのドラムスとベースに上保一恵(p)高見沢宏昌(ts)が加わったバンド.ボーカルのKAYO,マリア・エヴァが加わりまずまず楽しいセッション.
次いでU.S.AirforceのバンドAsia Pacific Show Caseを産業商工会館で聞く.いかにも若手のアメリカらしいフュージョン系.この人達はプロのミュージシャンだというが,空軍関係の仕事はしないのだろうか?ベースのエミリが作ったPromiseというバラードが美しかった.
次は中杉通りを北へ歩いて歩いてルーテルむさしの教会へ.野口迪生カルテットを聴く.ベテランの穏やかなカルテットの古いジャズ.受付に赤ちゃんがいたが,野口迪生の生まれたばかりの孫だという.
また中杉通りを歩いて歩いて山下洋輔ライブ会場神明宮へ.
山下洋輔はニューヨークトリオの演奏.セシル・マクビー(b),フローン・アクラフ(ds).
曲目は「七つの尾の猫」「Gentle conversation」「新世界より」「ニューオーリンズ」「クルディッシュ・ダンス」.
山下洋輔としてはあまり格闘技系に走らない穏やかなセッションだったが,とにかく一流のプレイヤーの必要にして充分なツボにはまった名演が,何とも心地よい.特に2曲目のバラードが美しく素晴らしかった.クルディッシュ・ダンスも音楽性が高く聴き応えあり.大満足して終了.
阿佐谷教会に行ってスパニッシュ・デュオunoを聞く.大平重成(g),大平里見(p),会田桃子(vln),海沼正利(per),安カ川大樹(b).冒頭の「アルハンブラ宮殿の思い出」は,ピックのみでマンドリン奏法でのギター演奏.ピアノ伴奏で実に見事.後半は殆どオリジナルで,とにかく叙情的なメロディと高い演奏技術が素晴らしい.
翌24日は,まずは杉並区立杉並第一小学校体育館へ.
杉一ジュニアバンドが東日本ブロックの吹奏楽優勝を遂げ(10月12日)凱旋公演としてのAJS参加である.
優勝曲の白鳥の湖終章は素晴らしかった.前に出てソロを取る児童が,しゃれた帽子とベストの衣装着ているのに足下が普通の上履きなのも,いかにも小学生.
次いで産業商工会館へ.
峰厚介フォーエヴァーカルテットは,峰厚介(ts),清水絵理子(p),須川崇志(b),本田珠也(ds).
メインストリーム・ジャズと銘打っているがまさにその通り,しかも過激である.
毎年思うのだが,このとぼけた温厚そうな峰厚介のどこに,こういう格闘技系ジャズを追求する情熱が潜んでいるのだろう?
ピアノとドラムスは2012年のカルテットと同じ,ベースは昨年日野皓正のバックにいた人.全編聴き応えのある素晴らしい本格ジャズであった.
その後久遠キリスト教会のRe-Trickを聞く.
ここは火の出る様なセッション.アグレッシブ・ジャズと銘打っているが,素晴らしいテクニックに裏打ちされた3人組,菅原敏(p),渡辺雅之(ds),井上亮(b).
ソロを交代で取るという形は全く取らず,最初から最後まで3人共に全力で走るという,カーレースの様なジャズだ.ベースは比較的コード進行に徹する様だが,このチームの牽引者はベースらしい.
とにかく凄い疾走感ははまったら病みつきになりそう.僕としてはアンコールでやったチック・コリアの「スペイン」が,オリジナルのMichel Camilo & Tomatitoのものより遙かにスピード感に溢れ感動した.
そして最後はジャズバー・クラヴィーアへ.スイングジャズを聴く.
白石幸司(cl),佐久間和(g),小林真人(b).
腕の良い3人組のリラックスできるスイングジャズ.スタンダードナンバー中心で,こういうジャズの良さを提供するのがいかにもクラヴィーアらしい.長い一日の最後に聴くジャズとしては最高.アンコールではヴォーカルの舞ちゃんも加わってAll Of Meを聞く.大満足して興奮のうちに帰宅は11時半頃.
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2015/10/27

番外:独断的歌舞伎感想文 阿古屋/髪結新三

日記:2015年10月某日
歌舞伎座へ.「十月大歌舞伎 夜の部」を見る.Kabukiza_201510ffl1
「一、壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき) 阿古屋」.出演:遊君阿古屋(玉三郎),岩永左衛門(亀三郎),榛沢六郎(功一),秩父庄司重忠(菊之助).
「二、 二世尾上松緑二十七回忌追善狂言 梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう) 髪結新三 序 幕 白子屋見世先の場,永代橋川端の場.二幕目 富吉町新三内の場,家主長兵衛内の場,元の新三内の場,大 詰 深川閻魔堂橋の場」.出演:髪結新三(松緑),白子屋手代忠七(時蔵),下剃勝奴(亀寿),お熊(梅枝),丁稚長松(左近),家主女房おかく(右之助),車力善八(秀調),弥太五郎源七(團蔵),後家お常(秀太郎),家主長兵衛(左團次),加賀屋藤兵衛(仁左衛門),肴売新吉(菊五郎).
阿古屋はとにかく玉三郎が素晴らしい.特に琴は絶品,竹本の太棹との絡みがいちばん美しかったのも琴であろう.
胡弓の響きも捨て難い.三味線は玉三郎の三味線と伴奏とのからみがちょっと判りにくかった.
この演奏をじっと受けている菊之助がまた綺麗.口跡も力強く,最後の見得は一幅の絵のようであった.
松緑の髪結い新三はまさに待ちかねた配役.2年前には三津五郎の新三で下剃勝奴を勤めていたのが思い出される.
今回は気っぷ良くおかしみもある新三をたっぷり楽しめた.付き合ってくれた左團次も力が抜けて素晴らしい.魚屋で出てきた菊五郎の呼び声がひっくり返っているのも愛嬌である.
もともと好きな髪結い新三,松緑がもっと磨き上げて当代の当たり役にして欲しいところである.

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2015/10/22

独断的映画感想文:キャプテン・フィリップス

日記:2015年10月某日
映画「キャプテン・フィリップス」を見る.1
2013年.監督:ポール・グリーングラス.
出演:トム・ハンクス(リチャード・フィリップス),バーカッド・アブディ(ムセ),バーカッド・アブディラーマン(ビラル),ファイサル・アメッド(ナジェ),マハト・M・アリ(エルミ).
2009年に起きた,ソマリア沖の海賊襲撃事件の記録に基づく映画.
米国バーモントの自宅から妻に送られて出発した船長フィリップス,オマーンに着いた彼は貨物船マークス・アラバマ号に乗り込み,サラーサ港からケニアのモンパサを目指す.
4月6日,船は2隻の海賊船に襲われるが,アラバマ号の巧みな操舵術と,偽通信で「空軍出動」を演じたことが奏効し,海賊船は引き返した.2
しかし翌日再度襲ってきたムセ率いる4人のグループは,アラバマ号の防御をかいくぐり遂に舷側にかけた梯子から船内に乗り込む.フィリップス等幹部は船橋に残り乗組員を機関室に退避させ,海賊達との交渉が始まる….
この後舞台は,アラバマ号の救難ボートでフィリップスを人質に逃亡する海賊達と,出動したアメリカ海軍との息詰まる駆け引きに移る.
映画はソマリア海賊,アメリカ海軍の双方を良く描き緊張感は高い.3
ソマリア海賊にあっては,ムセの卓越した判断力と指導力が魅力的だ.一方,フリップスの優れたリーダーシップ,沈着冷静な指揮指導も印象的だ.トム・ハンクスの熱演はこの映画の成功の主要因であろう.
しかし僕はこの映画が好きにはなれない.
フィリップスは良く訓練された,この海域を航行する船の船長だ.海賊に襲われた後何がどのように展開するか,正確に知っていた(教えられていた)に違いない.
自分が人質になったとき,彼は既に米海軍が出動すること,最終的には狙撃部隊が海賊全員を射殺することまで判っていた筈だ.余裕があったときには,フリップスは年少のビラルの怪我を手当てしてやりながら,このままでは死んでしまうと警告もしている.
米海軍を目の当たりにしたときフィリップスが叫んだのは,救命艇で自分が座っている座席の番号だった.狙撃に巻き込まれることを少しでも避けようと考えたからだ.
それでも,米軍が人質に金を払うより敵の制圧を優先することを知っている彼は,時間の経過と共に次第に恐慌に陥っていったのではないだろうか.4
ソマリアでは海賊に何年も捕らえられていた人質の話も聞くことがある.軍が出動して洋上で奪還されたフィリップスの様な例は,稀少なケースなのであろう.
軍が出動するに値する人とは,どういう人なのだろうか?私やあなたはそういう人の中に入っているだろうか?それとも無視される側なのだろうか?
湯川遥奈さんと後藤健二さんは,我が政府の判断では無視される方に入っていたようだ.
★★★(★5個が満点)
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2015/10/19

独断的映画感想文:0.5ミリ

日記:2015年10月某日
映画「0.5ミリ」を見る.051
2013年.監督・脚本・原作:安藤桃子.
出演:安藤サクラ(山岸サワ),織本順吉(平田昭三),木内みどり(平田雪子),土屋希望(平田マコト),井上竜夫(康夫),東出昌大(カラオケ店員),ベンガル(斉藤末男),角替和枝(浜田),浅田美代子(真壁久子),坂田利夫(茂),柄本明(佐々木健),草笛光子(真壁静江),津川雅彦(真壁義男).
サワは平田家に派遣されている腕の良い介護ヘルパー.053
お祖父ちゃんの今生の思い出に一晩添い寝してやって欲しいと娘の雪子に頼まれ昭三と同衾するが,奮い立った昭三はストーブを蹴飛ばし火事を起こし,階下に転げ降りると雪子は自死を遂げていた….
この事件で職を失い寮も追い出されたサワは,やむなく街で見つけたすねに傷持つ年寄りの自宅に上がり込み,押しかけヘルパーとして生きていく….
長尺のこの映画は(怒濤の196分と銘打っている),平田家の一件の後,カラオケ店で出会った康夫爺さんと一晩歌い,街で人の自転車をパンクさせていた茂爺さんの家に上がり込み,その後エロ本を万引きしていた真壁義男爺さんの家に上がり込み,最後に平田家の生き残りで失語症のマコトが暮らすその父の家に上がり込むサワの,一連の顛末を描いている.052
サワは申し分の無い介護ヘルパーぶりを発揮する一方で,歯に衣着せぬもの言いと断固たる行動で,これら老人との固い絆を築いていく.
このサワを演じる安藤サクラが素晴らしい.笑顔の魅力と凄む迫力を,これほど両立させたキャラクターは見たことが無い.
他の俳優達も好調で,特に津川雅彦が認知症の老人らしく同じ文言を繰り返しながら,戦争の悲惨を訴え続ける長回しのシーンは見事.054
題名の「0.5ミリ」は,この時真壁義男が言った「全世界の人が0.5ミリずつ互いの関係を近づければ革命が起きる」という趣旨の発言による.
また,マコトの父柄本明と安藤サクラの(実世界では義理の父娘関係にあります)腕力の限りを尽くす闘いも見応えあり.055
最後のシーンでマコトと二人新しい世界へ旅立って行くサワの表情が良かった.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2015/10/07

独断的映画感想文:ふしぎな岬の物語

日記:2015年10月某日
映画「ふしぎな岬の物語」を見る.1
2014年.監督:成島出.
出演:吉永小百合(柏木悦子),阿部寛(柏木浩司),竹内結子(竜崎みどり),笑福亭鶴瓶(タニさん),小池栄子(柴本恵理),春風亭昇太(柴本孝夫),井浦新(大沢克彦),吉幾三(行吉先生),片岡亀蔵 (ドロボー),中原丈雄(鳴海),石橋蓮司(雲海),米倉斉加年(富田),笹野高史(竜崎徳三郎).
画家の夫を若くして亡くした悦子は,以来ずっと岬のカフェで美味しい珈琲を入れ,カフェを一人で切り盛りして暮らしている.
悦ちゃんの保護者を自認する浩司は,カフェのすぐ裏にバラックを建て,便利屋をして暮らしている.乱暴者で切れやすい浩司は何かと悦子に迷惑をかけるが,常連の徳さん,タニさんは浩司の理解者でもあり,悦子を温かく見守る.3
しかし徳さんが病気で倒れ,タニさんは遠く大阪へ転勤することになった….
地元の人々に愛された悦ちゃんを巡る心温まる物語,という触れ込みだったのだが,物語の骨格やら人物像やらがいずれもぴしっとせず,見終わった後の感想がトッ散らかる映画である.
浩司はそもそもどういう人物か.
悦子との年齢差も定かでなく,中学の先生との会話で悦子が浩司の保護者だったことは判るが,依然関係は不明.映画の終盤までその関係は明かされない.2
タニさんに依れば浩司は大嘘つきということになるが,浩司は乱暴者だがどう見ても嘘つきとは見えない.
地元の人たちに愛されるという悦子のカフェだが,店に来た地元の人は映画を通じて,徳さん,タニさん,富田先生,行吉先生の4人きり.良くこれで店が潰れないと感心するくらいだ.
要するに岬カフェを巡る状況が制作者の頭の中にはできていても,映画には描かれていないとしか思えない.
阿部ちゃんのキャラは面白かったし,笹野高史と竹内結子の親子劇には泣かされたが,全体としては納得できず終いだった.春風亭昇太の嫁取り話の扱いも,あんまり昇太を馬鹿にすんじゃないよと感じる.4
せっかく岬のカフェという題材と良い役者を揃えながら,何やってるんだろう.
★☆(★5個が満点)
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