番外:独断的歌舞伎感想文 11月 実盛物語/若き日の信長/御所五郎蔵
日記:2015年11月某日
歌舞伎「吉例顔見世大歌舞伎 十一世市川團十郎五十年祭」を見る.
「源平布引滝 一、実盛物語(さねもりものがたり)」.
出演:斎藤実盛(染五郎),瀬尾十郎(亀鶴),郎党(廣太郎),郎党(廣松),九郎助(松之助),葵御前(児太郎),小万(秀太郎).
染五郎の実盛に迫力は感じられず,退屈で何度も寝た.亀鶴の瀬尾十郎は口跡良く,太郎吉に討たれる場面は素晴らしかったが,実盛が退屈では芝居として楽しめない.
「二、若き日の信長(わかきひののぶなが)」.
出演:織田上総之介信長(海老蔵),弥生(孝太郎),五郎右衛門(亀寿),監物(九團次),甚左衛門(廣松),林美作守(市蔵),僧覚円(右之助),木下藤吉郎(松緑),平手中務政秀(左團次).
物語としてどうなっているんだろうというところが幾つかある.最初から敵と通じていることが判っている林美作守は結局どうなったのか.2幕目の幕切れもなんだか良く分からず,謀反人の娘弥生は処断されるのかされないのか,誠にあいまいなまま幕が下がってしまった.
この芝居の真骨頂は,厭戦派・籠城派の宿老達による小田原評定を尻目に,出陣を宣言した信長が舞う「敦盛」の舞の前に,続々と集結してくる若武者達の緊迫と高揚にある.
このシーンを最大限生かす為には,未だ工夫が必要な気がする.音響効果的には,弥生の打つ鼓はもう少し響いて欲しいところ.
「三、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ) 御所五郎蔵」.
出演:御所五郎蔵(菊五郎),星影土右衛門(左團次),傾城逢州(孝太郎),梶原平蔵(松江),新貝荒蔵(亀寿),秩父重介(廣太郎),二宮太郎次(宗之助),花形屋吾助(橘太郎),傾城皐月(魁春),甲屋与五郎(仁左衛門).
この芝居の難しいところは,主人公の御所五郎蔵が本来素寒貧のパッパラパーなので,それを演じる役者によって全く味が変わってしまうこと.菊五郎の御所五郎蔵は,さすがにこの役の悲劇性を見事に表現していた.孝太郎の傾城逢州も素晴らしい.
しかし1幕目の七五調の台詞の応酬は,単調で寝てしまった.仁左衛門が出て目が覚めた.
固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント