独断的映画感想文:さようなら
日記:2015年11月某日
映画「さようなら」を見る.
2015年.監督:深田晃司.出演:ブライアリー・ロング(ターニャ),新井浩文(聡史),ジェミノイドF(レオナ),村田牧子.平田オリザの舞台を映画化.原子力発電所の大規模破壊で汚染された近未来の日本.政府は棄国を宣言,計画に従い人々は難民として出国してゆく.ターニャは南アからの難民として日本に居るが,元来病弱でアンドロイド・レオナと共に独り暮らす.ときおり数少ない友人や恋人の聡史が訪ねてくるが,彼等もやがて去って行った.
出国順位の低いターニャは死を覚悟し,レオナに詩を読んで貰いながら日々を過ごしていく….ターニャが住む丘の上の家,周囲は草原に覆われ彼方に山なみが見える.風の音,鳥の鳴く声の他は寡黙な映画だ.レオナはターニャが子供の頃から居るアンドロイド,足が故障して今は車椅子で移動している.そのレオナがターニャに読んで聞かせる詩が耳に残る.特に谷川俊太郎の「さようなら」という詩が印象的だ.
やがてターニャは死を迎える.横たわるターニャを見守るレオナ,暗転していく画面に聞こえていたターニャの穏やかな寝息が,何時か聞こえなくなる長いシーン.静謐な映画だが小野川浩幸の音楽も素晴らしい.終始滅びるものの緊張感に満ちた,ネビル・シュートの「渚にて」を想起させる美しい映画だった.
★★★★(★5個が満点)
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