独断的映画感想文:恋人たち
日記:2016年2月某日
映画「恋人たち」を見る.
2015年.監督・脚本・原作:橋口亮輔.
出演:篠原篤(篠塚アツシ),成嶋瞳子(高橋瞳子),池田良(四ノ宮),安藤玉恵(吉田晴美),黒田大輔(黒田大輔),山中崇(保健課職員・溝口),内田慈(女子アナ),山中聡(四ノ宮の友人・聡),リリー・フランキー(アツシの先輩),木野花(瞳子の姑・敬子),光石研(藤田弘).
愛する妻を通り魔殺人によって失ったアツシ.コンクリートの橋梁土台をハンマーで叩き,聴覚で健全性を診断する特殊能力を持つが,体調も崩し貧困の底にあえぐ.
夫と姑に仕えくるくると働きながらも,人として相手にもされていない生活を送る瞳子.たまたま出会ったヒロシに体を許し,彼の養鶏場を買い取りたいという夢につき合おうかと考える.
アツシの損賠訴訟を扱う傲慢な弁護士四ノ宮は,実はゲイ.学生時代から憧れ,親友としてつき合ってきた聡との関係に暗雲が漂う.
一部重なり合う恋人たち3組の人生を辿る群像劇.
主演の3名はいずれも無名の俳優,しかしその演技は印象的だ.特にアツシ役の篠原篤が,重なる絶望と辱めに耐えられず手首を切ろうとしてなお切ることができない,それに続き妻の位牌の前でその胸の苦しさを訥々と訴えるシーンには胸を打たれる.
また,脇を固めるベテラン俳優も素晴らしく,光石研の狂気をはらむ演技には息を呑む.
3組の「恋人たち」はいずれもその恋を失うが,失って直面した絶望から何かを掴み取って顔を上げたところが,この映画なりのハッピーエンドかも知れない.
映画らしい映画,見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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