番外:独断的歌舞伎感想文 秀山祭9月大歌舞伎 妹背川婦女庭訓 吉野川
日記:2016年9月某日
歌舞伎「妹背川婦女庭訓 吉野川」を見る.
出演:大判事清澄(吉右衛門),久我之助(染五郎),腰元桔梗(梅枝),腰元小菊(萬太郎),雛鳥(菊之助),太宰後室定高(玉三郎).
上手・背山の大判事別邸と下手・妹山の定高の家が,交互に障子が開けられそこでのドラマを進めて行く.
また両花道を吉右衛門・玉三郎が進んできて客席越しに声を掛け合う.
こういう構成で舞台が進行するが,途中からは上手・下手はシンクロして共に進行するようになり,最後には声を掛け合い同時進行の舞台となって終了する.観客は吉野川の両岸を俯瞰する立場で舞台を眺めるという,独特な舞台構成が面白い.
大悲劇であり,愛し合う若い男女を,それぞれの父と母が片や切腹させ片や首を打つという,凄惨な結末に終わる物語だが,その悲哀の表現が素晴らしい.
台詞の途切れる場が多く無言の芝居が続くが,張り詰めた緊張感で隙を感じさせない.
最後の場面,今や息子・娘を(死後とは言え)結婚させた大判事と定高が,二人の首を手に見据えるのは,これから共に向かおうとする蘇我入鹿邸への道であろう.
吉右衛門・玉三郎の渾身の演技を満喫した.演ずるのは非常に難しいだろうと思うが,見て良かった.
腰元を演じた梅枝も素晴らしかった.体型から言って,玉三郎の定高には梅枝の雛鳥を当ててはどうだったのだろう.
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