独断的映画感想文:ブリッジ・オブ・スパイ
日記:2016年11月某日
映画「ブリッジ・オブ・スパイ」を見る.
2015年.監督:スティーヴン・スピルバーグ.
出演:トム・ハンクス(James Donovan),ピーター・マクロビー(Allen Dulles),アラン・アルダ(Thomas Watters),イヴ・ヒューソン(Jan Donovan),エイミー・ライアン(Mary Donovan),オースティン・ストウェル(Francis Gary Powers),マーク・ライランス(Rudolf Abel),ゼバスチャン・コッホ(Wolfgang Vogel),スコット・シェパード(Hoffman),ウィル・ロジャース(Frederic Pryor).
逮捕されたソ連のスパイ:アベルを弁護する為,かってニュルンベルグ裁判の検事補を勤めたドノヴァンが指名される.
不本意ながら弁護人となったドノヴァンだが,誠実な人柄からアベルの捜査過程の不備を批判,反共・反ソの嵐の中にあった米国世論の非難を一身に浴びることになる.
陪審の有罪は動かせなかったが,判事はドノヴァンの勧めを入れ,将来のスパイ交換に供え死刑判決を避けた.
一方CIAはU-2機によるスパイ撮影をソ連領内で行うが,同期は撃墜され操縦士パワーズは捕虜となる.更にベルリンの壁が構築され,東側に取り残された米国学生プライヤーズが逮捕される.
CIAはドノヴァンに,パワーズとアベルの交換交渉を依頼する….
1960年代前後の冷戦時のスパイ合戦における実話に基づく映画.
ドノヴァンのタフな交渉力と原則的な考え方,そして相手の出方を読み切って勝負を賭ける決断力が印象的.
この人は後のキューバとの交渉でも功績を挙げたというから,交渉者としての能力は傑出していたのだろう.東ベルリンの路上で不良に取り囲まれ,ドイツ語が分からないのにコートを取られただけで道案内して貰って何とか脱出したシーンも,その片鱗というべきか.
ソ連とその衛星国東ドイツの政治体制の理解もさることながら,実際の交渉に出てくる人物とその周辺にいるスタッフの内面を読みとり利用する力も,交渉力の内だということが良く判った.
ソ連スパイ・アベルを演じたマーク・ライランスの存在感も素晴らしい.
いざ交換という時,アベルはドノヴァンに感謝の言葉を述べる.ドノヴァンがアベルに,ソ連に帰った後どのように処遇されると思うか聞くと,アベルは淡々と「抱擁で迎えるか只車に乗せるかで,処遇は判る」と答える.国境を越えたアベルの様子をじっと見送るドノヴァンの表情が,印象的だ.
★★★★☆(★5個が満点)
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