« 2017年1月 | トップページ | 2017年4月 »

2017年3月に作成された記事

2017/03/30

独断的映画感想文:明治侠客伝 三代目襲名

日記:2017年3月某日
映画「明治侠客伝 三代目襲名」を見る.1
1965年.監督:加藤泰.
出演:鶴田浩二(菊池浅次郎),藤純子(初栄),大木実(星野軍次郎),津川雅彦(江本春夫),安部徹(唐沢竜造),山城新伍(立石三郎),曽根晴美(矢島保),汐路章(中井徳松),品川隆二(小栗清),嵐寛寿郎(江本福一),藤山寛美(石井仙吉),丹波哲郎(野村勇太郎).4
冒頭,御神酒を注ぐ杯の上からのショット,カメラが曳くと祭の御輿の上である.御輿が動き出し群衆が取り囲む中,祭に見入る嵐寛寿郎とその連れ毛利菊江,群衆をかき分け忍び寄る汐路章.
このシーンで一気に映画に引き込まれた.
祭を見物中の木屋辰一家二代目江本福一は,流れ者中井徳松に刺された.浄水場工事で野村組に資材を納める木屋辰への,星野建材社長星野軍次郎による配下唐沢組を使った襲撃である.3
江本の息子春夫を押さえ,子分の菊池浅次郎は組をとりまとめるが,星野の妨害は続く….
本作は鶴田浩二も良い(特に声が良い)が,周りを固める(?)悪役達,丹波哲郎,藤山寛美,藤純子が良い.
藤純子は未だ20才前,娼婦役だが浅次郎を愛しつつ唐沢に落籍される役どころ,その葛藤も見せ場の一つ.
藤山寛美はお節介だが人の良い,しかも男気のある無宿人を心地よく演じる.2
丹波哲郎は,生真面目な任侠道の人が建設会社の社長であるという,余り例のない役どころをうまく演じる.
出演者いずれも濃い面々で,駆け出しの山城新伍など全く目立たないほどである.明治のやくざ世界を舞台に,時代劇の様に描かれる情緒に満ちた映画,一見の価値あり.
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ


| コメント (0) | トラックバック (0)

番外:独断的歌舞伎感想文 猿若祭2月大歌舞伎 昼の部

日記:2017年2月某日
歌舞伎座で「猿若祭2月大歌舞伎」を見る.Kabukiza_201702ffl_8f8f895dd59e2463
「一、猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)」。出演:猿若(勘九郎),出雲の阿国(七之助),奉行板倉勝重(彌十郎),福富屋万兵衛(鴈治郎).
「初代桜田治助 作 戸部銀作 補綴 二、大商蛭子島(おおあきないひるがこじま) 「黒髪」長唄囃子連中」.出演:正木幸左衛門実は源頼朝(松緑),地獄谷の清左衛門実は文覚上人(勘九郎),おます実は政子の前(七之助),女房おふじ実は辰姫(時蔵).
「河竹黙阿弥 作 三、四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは) 四谷見附より牢内言渡しまで」.出演:野州無宿富蔵(菊五郎),女房おさよ(時蔵),伊丹屋徳太郎(錦之助),浅草無宿才次郎(松緑),寺島無宿長太郎(菊之助),隅の隠居(歌六),うどん屋六兵衛(東蔵),浜田左内(彦三郎),牢名主松島奥五郎(左團次),藤岡藤十郎(梅玉).
「四、扇獅子(おうぎじし)」.出演:鳶頭(梅玉),芸者(雀右衛門).
踊り「猿若江戸の初櫓」が勘九郎・七之助中心の溌剌とした踊りで気持ちが良い.特に勘九郎のひょうけた動きは印象的だった.
「大商蛭子島」は松緑の主役ながら,主人公が共感しがたい人物だったからか,今ひとつ面白くない.途中寝てしまったのでますます筋が判らず終い.
菊五郎の「四千両」は,無宿人が江戸城のご金蔵を破って四千両を奪った話で,唐丸籠での雪中別れの場や牢内の場など,白浪実録ものといった芝居で,面白かった.なかなか豪華な顔ぶれだが,菊五郎が流石の貫禄で堂々の主役.
「扇獅子」は,久しぶりの雀右衛門が美しかった.
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/03/27

独断的映画感想文:沈黙 サイレンス

日記:2017年2月某日
映画「沈黙 サイレンス」を見る.1_2
2016年.監督:マーティン・スコセッシ.
配役:アンドリュー・ガーフィールド(セバスチャン・ロドリゴ),アダム・ドライバー(フランシス・ガルペ),浅野忠信(通辞),キアラン・ハインズ(ヴァリニャーノ),リーアム・ニーソン(クリストバン・フェレイラ),窪塚洋介(キチジロー),イッセー尾形(井上筑後守),塚本晋也(モキチ),小松菜奈(モニカ),加瀬亮(ジュアン),笈田ヨシ(イチゾウ).4
17世紀,日本でのキリシタン弾圧は激しさを増し,在日の有力な司祭フェレーラは棄教,日本に帰化した.
その弟子であるロドリゴとガルペは日本に派遣されることを切望し,マカオから日本人漂流民キチジローの案内で,長崎付近の隠れキリシタンの村に到着する.
歓喜する村人に洗礼を施し,告解を聞き,ミサを執り行う生活が始まる.更にロドリゴは五島にも出向いて布教を行うが,やがて長崎奉行の弾圧はその地にも及び,村人と共に遂にロドリゴ達も捕らえられる.2_3
長崎奉行はロドリゴに対し,彼が棄教しない限り村人が犠牲になることを説き,棄教を迫るのだが….
遠藤周作の原作を忠実に映画化した作品.人間の弱さと信仰について,キリシタン弾圧を題材に描く.
信仰は,神の問題ではなく人間の問題である.そのことは,特に登場人物キチジローを通じて明らかにされる.
キチジローは漂流民としてマカオにいたが,それ以前にキリシタンとして拘束され,家族全員が棄教せず殺されたのに対し,一人踏み絵を踏んで命が助かった.5_2
その後もロドリゴに仕える一方で,彼を裏切り奉行に通報した.彼は逮捕される度に踏み絵を踏んで釈放されるが,しかし執拗にロドリゴの周辺を離れない.結局彼はロドリゴに終生仕えた日本人であった.
ロドリゴが神の沈黙に苦悩しているのと同様に,キチジローもキチジローの苦悩を生きているのだ.3_2
映画は緊張感高くこの重厚なテーマを一歩一歩追究してゆく.窪塚洋介,浅野忠信,イッセー尾形,塚本晋也等の熱演が素晴らしい.
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ


| コメント (0) | トラックバック (3)

独断的映画感想文:沓掛時次郎 遊侠一匹

日記:2017年2月某日
映画「沓掛時次郎 遊侠一匹(1966)」を見る.1
1966年.監督:加藤泰.
出演:中村錦之助(沓掛時次郎),池内淳子(おきぬ),中村信二郎(太郎吉),弓恵子(お葉),高松錦之助(佐原の勘蔵),清川虹子(おろく),明石潮(八丁徳),渥美清(身延の朝吉),東千代之介(六ッ田の三蔵).
腕はめっぽう立つ無宿渡世人の沓掛時次郎は,彼を兄貴と慕う身延の朝吉との二人旅.3
ある宿場で賭場で大勝ちした時次郎を見込んだ,ところの親分の一人娘お葉に,女郎屋を巡る喧嘩の助っ人を頼まれる.時次郎はあっさり辞退するが,朝吉は筋を通そうと,お葉に言われるまま単身相手方に殴り込みをかけ,なぶり殺しにされてしまう.
朝吉の仇と相手の一家を打ち破った時次郎,再び旅に出て鴻巣一家にわらじを脱ぐ.ここの親分に頼まれたのは,敵対する一家の代貸・六ッ田の三蔵殺しだが,三蔵は旅の途中世話になった母子おきぬ・太郎吉の主人だった….
前半は渥美清,後半は池内淳子とのコンビで綴る,無宿人の人生を描く好編.
おきぬの息子・太郎吉を演じた中村信二郎は,錦之助の甥で歌舞伎俳優の当代・中村錦之助である.2
初代錦之助は,この監督の極端な表情のアップが,まことに良く映える俳優であった.映画の印象はこの俳優の様々な表情のアップにおおかた支配されたのではあるまいか.
腕が立つだけに助っ人として空しい殺人に巻き込まれる時次郎と,夫を殺した無宿人への思いに苦しむおきぬの物語が哀切である.おきぬへの思いを酒場の女将に物語る寒夜の時次郎のシーンが印象に残る.
一見の価値あり.★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ


| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/03/15

独断的映画感想文:ブロークンシティ

日記:2017年1月某日
映画「ブロークンシティ」を見る.1
2012年.監督:アレン・ヒューズ.
出演:マーク・ウォルバーグ(Billy Taggart),ラッセル・クロウ(Mayor Hostetler),キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(Cathleen Hostetler),ジェフリー・ライト(Carl Fairbanks),バリー・ペッパー(Jack Valliant),アローナ・タル(Katy Bradshaw),ナタリー・マルティネス(Natalie Barrow),グリフィン・ダン(Sam Lancaster).2
ビリーはN.Y.警察の警官,七年前捜査中の容疑者を射殺した疑いで告発されたが,判決は無罪だった.
しかし以来ビリーは警察を辞め,私立探偵として活動する.ビリーの恋人・ナタリーは,妹のレイプ殺人事件後,ビリーとつき合う様になったが,今は映画女優として売り出している.3
ビリーの辞職に関与したN.Y.市長ホステラーは,市長選挙1週間前にビリーを呼び出し,妻・キャスリーンの浮気相手を探る様に命じる.調査の結果,相手は市長選の対立候補・ヴァリアントの選挙責任者,アンドリューと判明するが….
市長選を巡る政治的陰謀の渦巻く中,巻き込まれたビリーがそのもつれを自分の人生をかけて解きほぐすサスペンス.4
俳優陣が豪華な割には,サスペンスに意外性が乏しく,またプロットの吟味が不充分で,エピソードが伏線にならず終わる等の欠陥あり.やや印象が散漫になる結果となった.
残念でした.
★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (4)

2017/03/13

独断的映画感想文:SPY スパイ

日記:2017年1月某日
映画「SPY スパイ」を見る.
2015年.監督:ポール・フェイグ.
出演:ジェイソン・ステイサム(Rick Ford),ジュード・ロウ(Bradley Fine),メリッサ・マッカーシー(Susan Cooper),ローズ・バーン(Rayna Boyanov),ミランダ・ハート(Nancy B. Artingstall),ボビー・カナヴェイル(Sergio De Luca),アリソン・ジャネイ(Elaine Crocker),ジェシカ・チャフィン(Sharon).1_2
本格的スパイ映画のスタイルを取った本格的コメディ映画.
CIAの敏腕スパイ・ブラッドレイは,優秀なサポート要員・スーザンのおかげで大活躍,しかし移動型核爆弾を持つレイナに近づいたブラッドレイはレイナに倒されてしまう.2_2
他のエージェントの身元も敵にばれているらしく(二重スパイがいるらしい),太っちょで中年女性のスーザンは,自ら敵地に乗り込みレイナ等と対決する決意をする.
やむなくスーザンをパリに送り込むCIA,しかし意外にもスーザンは外国語ぺらぺら,格闘技や銃器の扱いもうまく,何と見込まれてレイナが自身のボディガードに採用するが….3_2
そこそこ良くできた映画で,スーザンのスーパーエージェントぶりと,頭脳が筋肉としか思えないリック等の対比がおかしい.
特にスーザンが敵の女性エージェントと,ホテルの厨房でフライパン対肉切り包丁で渡り合う格闘シーンは見応え有り.4_2
この監督は現場で思いつきの台詞を俳優に言わせる癖があるらしく,その為メイキングやNG集の内容はめちゃくちゃ面白いが,本編の方は逆に意味不明の台詞が続出.
そういう意味でちゃらんぽらんさの感じられる映画である.
★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (1)

独断的映画感想文:悪の法則

日記:2017年1月某日
映画「悪の法則」を見る.1
2013年.監督:リドリー・スコット.
出演:マイケル・ファスベンダー(Counselor),ペネロペ・クルス(Laura),キャメロン・ディアス(Malkina),ハビエル・バルデム(Reiner),ブラッド・ピット(Westray),ルーベン・ブラデス(Jefe).2
敏腕の弁護士Counselorは愛するLauraにかかる費用を工面する為,麻薬ビジネスに出資することにする.
共同出資するReiner,仲介するWestray等が組織の恐ろしさを説明するが,その危険を実感できないCounselor.しかし思わぬ事件が発生し,組織との間で重大なトラブルとなってしまった….
サスペンス仕立てのドラマだが,むしろセレブ生活をするCounselor等が直面する犯罪組織とのトラブルという,全く不条理な世界の現実を描写する映画と言える.3
映画の中盤でReinerやWestrayが組織の殺人方法を揶揄的に物語る場面があるが,終盤では登場人物の多くが実際にその凄惨な死に直面する.
癖のある俳優達を存分に使ったゴージャスな映画,だが監督も癖があって(本筋に必然的でない象徴的場面が多い)見終わってすっきりする映画ではない.4
Counselorが一縷の望みをかけて電話交渉する,組織の有力者Jefeとの長い会話が印象深い.
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (2)

番外:独断的歌舞伎感想文 壽 初春大歌舞伎 夜の部/松浦の太鼓

日記:2017年1月某日
歌舞伎座の「壽 初春大歌舞伎 夜の部」「三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)」を幕見で見る.Kabukiza_201701fff_fa61d689087e5559
出演:松浦鎮信(染五郎),大高源吾(愛之助),お縫(壱太郎),宝井其角(左團次).
忠臣蔵外伝の一つ,吉良家に隣接する松浦の殿様と大高源吾の交流の経緯を俳句の宗匠宝井其角を仲立ちに描く.
外伝ものは御浜御殿の様なのは大嫌いで,本作もその系列になりかねないのだが,松浦の殿様が無類の好人物の馬鹿殿だというところで芝居が面白い.
その馬鹿殿を染五郎が気持良く演じている.
壱太郎はずっと平伏した芝居のせいか,台詞が通らず何を言っているか判らない.浅草と掛け持ちで大変だろうが,頑張って欲しいところ.
左團次奮闘,愛之助かっこいい.
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

番外:独断的歌舞伎感想文 新春浅草歌舞伎 第2部 角力場/御存鈴ヶ森/棒しばり

日記:2017年1月某日
浅草公会堂で「新春浅草歌舞伎 第2部」を見る.2017
お年玉〈年始ご挨拶〉:隼人.「一、双蝶々曲輪日記 角力場(すもうば)」.出演:放駒長吉(尾上松也),山崎屋与五郎(中村隼人),藤屋吾妻(中村梅丸),濡髪長五郎(中村錦之助).「二、四世鶴屋南北作 御存 鈴ヶ森(ごぞんじすずがもり)」.出演:白井権八(中村隼人),幡随院長兵衛(中村錦之助).「三、岡村柿紅作 棒しばり(ぼうしばり)」.出演:次郎冠者(尾上松也),曽根松兵衛(中村隼人),太郎冠者(坂東巳之助).
角力場は梅丸の吾妻・隼人の与五郎は面白かったが,松也・錦之助の対決は一本調子でつまらない.爆睡してしまった.
鈴ヶ森は雲助達が見せ場を作って楽しく見た.隼人・錦之助もこちらは見応え有り.
棒しばりは,松也・巳之助の両名とも,達者だが若さ溢れる踊り.暴れ過ぎくらいだが,この若さならそれで丁度良い.
終盤では隼人にどうも本当に棒が当たってしまったらしく,思わぬ笑いも取っていた.楽しい踊りで幕となる.
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

« 2017年1月 | トップページ | 2017年4月 »