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2017/08/23

独断的映画感想文:サウルの息子

日記:2017年8月某日
映画「サウルの息子」を見る.1
2015年.ハンガリー映画.監督:ネメシュ・ラースロー.
出演:ルーリグ・ゲーザ(サウル),モルナール・レヴェンテ(アブラハム),ユルス・レチン(ビーダーマン),トッド・シャルモン(顎髭の男),ジョーテール・シャーンドル(医者).
1944年10月,アウシュビッツ収容所.
映画が始まると極端にアップされた男の上半身,その背後はアウト・フォーカスで良く判らないが,大勢の男女が誘導され,「シャワー後にスープを与える」等の声を聞きながら,裸になってドアの中に導かれているらしい.
男は人々が入り終わりドアが閉じると,皆が脱いだ服を脇目も振らずに回収し始める.背後でドアを叩く音,叫び声.
サウルはハンガリー系ユダヤ人.強制収容所で同胞をガス室に送り込み,死体の処理等を行う,ゾンダーコマンドとして働く.ゾンダーコマンド自身も4ヶ月たてばガス室に送られると言われていた.
この日の処理時に解剖に回されることになった少年の死体を,志願して運ぶサウル.解剖室で医師に少年が自分の息子だと訴える.ラビに死の祈りを祈祷して貰い,埋葬したいと.医師は夜5分間だけ別れを告げる時間を与えると言い,彼を帰す.2
その日必死で収容者の中にラビを探すサウル,一方ゾンダーコマンドの中では,決死の武装蜂起を行う準備が進んでいた….
恐ろしい映画である.しかし冒頭のガス室での,サウルの顔のみがアップされ,その背後で人々が殺されていくシーン,極端な緊張感と速いテンポで進行していく画面に,心が捉えられ以後映画から目を離すことが出来ない.サウルの目線から,サウルの知る情報のみによって,映画は進行する.
この後,次々にユダヤ人市民が到着し,処理が間に合わない収容所は次第に狂乱的様相を呈していく.一方で進む蜂起の準備,しかしサウルは一人ラビを探し,少年の死体を盗み出し,絶望的な状況にもかかわらず埋葬の為に奔走する.3
死の祈りと埋葬への固執は,サウルの少年の再生への望みを象徴するものと考えられる.サウルにとっては蜂起より,息子の再生に望みをつなぐことが重要だったのだろう.
サウルのアップの多用が極めて印象的.しかし映画として隙は無く,完成度は高い.
★★★★(★5個が満点)
P.S.ヒトラーが独裁政権を樹立した1933年から準備されたユダヤ人絶滅計画は,ドイツの敗色既に濃くなった1943頃に至ってフル回転を始め,この映画の舞台となった1944年10月には凄まじい数の犠牲者がガス室に連日送り込まれていた.ゾンダーコマンドの蜂起は収容所の末期に起こった事件で,これ以降ナチスによる収容所の撤収作業が進む.ソ連軍はこの時,収容所からわずか60kmのクラクフまで進出していた.
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