独断的映画感想文:サン・ジャックへの道
日記:2017年9月某日
映画「サン・ジャックへの道」を見る.
2005年.監督:コリーヌ・セロー.
出演:マニュエル・ロビン(クララ),アルチュス・ド・パンゲルン(ピェール),ジャン=ピエール・ダルッサン(クロード),パスカル・レジティミス(ギイ),マリー・ブネル(マチルド),マリー・クレメール(カミーユ),フロール・ヴァニエ=モロー(エルザ),ニコラ・カザレ(サイード),エメン・サイディ(ラムジ).
ピエール,クララ,クロードの3兄弟は仲が悪い.ところが母親が死去,その少なからぬ遺産を相続するためには,3人はサンジャックまでの巡礼をしなければならない.
3人は仕方なく,フランスのル・ピュイ・アン・ヴレのノートル・ダム大聖堂からスペインにあるキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの,徒歩3ヶ月に亘る巡礼の旅に参加することになる.
ピエールは仕事人間で携帯を手離せないが,アル中の妻が心配.クララは高校教員で,多勢の子供を失業中の夫に任せて出てきた.
クララとピエールは攻撃的で互いに罵り合い,つかみ合いまでする.クロードはアル中の女たらしで今まで働いたことはなく,人にたかって生きてきた.
この3人の他,ツアーには卒業旅行のカミーユとエルザの女子学生コンビ,カミーユに片思いして参加したサイードと,サイードにメッカ巡礼だと騙されて母親から2人分の旅費を貰って参加した従兄弟ラムジ,ガン闘病中のマチルドと,ガイドのギイがいる.波乱含みの9名の旅はこうしてスタートしたのだが….
長い旅で兄弟の仲は再建され,恋人たちは愛し合い,新たなカップルが出来という予測通りの大団円となるが,その巡礼の旅はなかなか厳しいもの.
長い旅の風景描写はこの映画の素晴らしい特徴である.
まさに寝食を共にする生活の中で,巡礼者同士の理解も深まる.
当初はアラブ人であるギイ,サイード,ラムジを露骨に差別していたピエールが,スペインでアラブ人のみ牧師館への宿泊を拒否した牧師に向かい,「旅の同行者は兄弟だ!兄弟が別れ別れになることは出来ない!!」と叫ぶシーンは感銘的.
皮肉屋のクララが,失読症のラムジに本気で字を教える様になる経過も素敵だ.いざという時に決定的に駄目人間だが,憎めないキャラのクロードも印象的.
人生の哀歓がユーモアに包まれて料理される.合間に挿入される幻想シーンも含め,如何にも映画らしい映画.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント