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2017年10月に作成された記事

2017/10/27

独断的映画感想文:神のゆらぎ

日記:2017年10月某日
映画「神のゆらぎ」を見る.1_2
2014年.監督:ポズ.
出演:グザヴィエ・ドラン(エティエンヌ),マリリン・キャストンゲ(ジュリー),ガブリエル・サブーラン(シモン),ジャン=ニコラ・ヴェロー(マキシム),アンヌ・ドルヴァル(エヴァリン),ロバン・オベール(マーティン).2_3
フランス語を話すカナダのとある街.
エティエンヌはエホバの証人の信者で白血病を病む身,婚約者の看護師ジュリーも同じく信者で,両名は信仰に基づき輸血による治療を拒否している.ある夜飛行機事故が起こり,病院に担ぎ込まれた唯一の生存者をジュリーは必死に看護する.
カジノでギャンブルにはまっているマーティンは,カジノのバーでバーテンのレイモンドにキューバのバカンスの楽しさを話す.マーティンはこの晩のうちに再度妻とキューバに出立する予定だが,アル中の妻エヴァリンは荷物を作りながら酒を飲み始める.4_2
レイモンドは地下駐車場で不倫相手のクローク係ルイーズと密会,キューバへの旅行を持ちかける.
ベネズェラから3年ぶりに帰国したシモンは,麻薬の運び屋で得た金を姪のカリーヌに渡そうと空港の乗客係である兄マキシムの家を訪れる….
群像劇であるが,群像を構成するそれぞれの人物がどの一点で交錯するのかは中盤まで判らない.
中心はエホバの証人の信者であるエティエンヌとジュリーのカップル.信仰を最後まで貫くのか,信仰を捨てて治療するのかが,神の存在をかけて鋭く問われる.5_2
布教のためルイーズの夫のもとを訪れたジュリーが,「神が全能であれば飛行機は落ちない」と言われ涙ぐむシーンが印象的.
緊張感高く映像も好ましいが,人間の思いがけぬ行動が他者の運命を変えていく過程を,神との関係で描いていく内容は,日本人としては共感しにくい.6
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:消えた声が、その名を呼ぶ

日記:2017年10月某日
映画「消えた声が、その名を呼ぶ」を見る.1
2014年.監督:ファティ・アキン.
出演:タハール・ラヒム(ナザレット・マヌギアン),シモン・アブカリアン(クリコル),マクラム・J・フーリ(オマル・ナスレディン),モーリッツ・ブライブトロイ(ピーター・エデルマン),トリーヌ・ディルホム(孤児院院長),アルシネ・カンジアン(ナカシアン夫人).2
1915年,第1次大戦中のオスマントルコ領マンデル.
アルメニア人の鍛冶職人ナザレットは,妻と双子の娘と共に貧しいながら幸せな暮らしを営んでいた.ところがある夜,突然憲兵隊に連行されたナザレットは,灼熱の砂漠での強制労働に処せられた.
翌年,従事していたアルメニア人全員が岩山に連行され,首を切られて処刑される.ナザレットを処刑した男アフメッドがためらったため,ナザレットは奇跡的に命を取り止めるが,声を失った.4
夜になって救いに来たアフメッドと共に逃避行を続けるナザレット,二人は脱走兵の一群に救われ,ナザレットは家族が送られたというラス・アルアインのキャンプに向かう.地獄の様なキャンプで出会った義姉は,家族は全て殺されたといって息絶える.3
ナザレットは石けん製造業者に拾われ,そこで働くうちに大戦の終結を迎える.或る日,チャプリンの映画会で出会った故郷の男は,彼に娘達の生存を伝えた….
トルコの過去の恥部を描いた作品だが,トルコを非難する映画ではない.監督の視線はこの虐殺事件を題材にしつつ,ナザレットの運命,彼と神の関係,娘とのドラマに注がれている.
アルメニア人はキリスト教徒だが,ナザレットは自身の過酷な運命に耐えかねて神を捨てる.ラス・アルアインのキャンプで瀕死の義姉は彼に自分を殺してくれと頼み,彼はそれを実行したのだが,この時点で彼は神を捨てたと考えられる.5
その後娘が生存していると判明しても,彼は神を許さない.娘に会うためには,如何なる悪事もためらわないナザレットを,観客は見るであろう.
ラストシーンで何も表明することなく去って行くナザレットは,逆にこの物語の結論を観客に求めているかの様だ.
人間の繰り返す,救いようのない悲惨を描くある種の寓話と言える映画.低く響き続ける音楽が印象的.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:裸足の1500マイル

日記:2017年10月某日
映画「裸足の1500マイル」を見る.15001
2002年.監督:フィリップ・ノイス.
出演:エヴァーリン・サンピ(モリー),ローラ・モナガン(グレーシー),ティアナ・サンズベリー(デイジー),ケネス・ブラナー(ネビル),デヴィッド・ガルピリル(ムードゥ).
1931年,西オーストラリアのジガロング.15003
14歳のアボリジニの少女モリー,8歳になる妹のデイジー,従姉妹で10歳のグレーシーは,いずれも白人との混血だったため,アボリジニ保護局の指示で1500マイル離れたムーン・リバー収容所に強制的に隔離された.
子供達はここで,将来召使いや労働者になるための教育を受けるのだ.モリー達は母親に会いたい一心で嵐の迫る朝脱走し,アボリジニの追跡人ムードゥの追及をかわしながら,遙かな故郷目指して歩き続けた….
事実に基づく物語.
オーストラリアの過去の恥部を描いた作品だが,少女達の勇気ある逃走劇に感動するヒューマンドラマで,後味は良い.15002
とにかく,着の身着のままで逃げ出した少女達が,殆ど砂漠地帯が続く中の1500マイルを,9週間で歩き通した事実そのものが感動的だ.
ムードゥの追跡能力を知っているモリーが,ある朝嵐の接近を察知して,痕跡をくらまして逃走するチャンスと見極め直ちに脱走する決断力.足跡を残さぬ為に川を歩き,追跡の目を惑わすためポーチを川岸に残す才覚.砂漠で食料を見つけ生き延びる生命力.
幾たびも少女達を見失いまた追尾するムードゥだが,最終的に白人が追跡を断念した時顔に浮かんだ笑顔が,彼の本心を物語る.15004
エピローグによると,モリーは逃げ延び,砂漠でアボリジニの男性と結婚,その後娘と共に捕らえられムーン・リバーに戻されたが,再度親子で脱走し故郷に戻ったとのこと.
原作はこの時母と共に脱走した娘のドリーが後年書いたものだ.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2017/10/16

独断的映画感想文:裁かれるは善人のみ

日記:2017年10月某日
映画「裁かれるは善人のみ」を見る.1_2
2014年.監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ.
出演:アレクセイ・セレブリャコフ(コーリャ(ニコライ)・セルゲーエフ),エレナ・リャドワ(リリア),ヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ(ディーマ(ドミトリー)・セレズニョフ),ロマン・マディアノフ(ヴァディム市長),セルゲイ・ポホダーエフ(ロマ),アンナ・ウコロワ(アンジェラ),アレクセイ・ロズィン(パーシャ).2_2
バレンツ海に面するロシア北方の街.
港を見渡す橋のたもとに自動車修理工コーリャの家があり,若い後妻リリアと息子ロマが暮らしている.市長はこの場所の再開発のためコーリャの家を強制収容しようとしているが,コーリャはこれに対抗し,軍隊時代の仲間で弁護士のディーマに依頼して訴訟に訴えている.3_2
訴訟には敗北したものの,ディーマは市長の不正行為の証拠を入手して賠償額を大幅に引き上げさせる.市長はこれに対し大きな圧力をコーリャ達にかけ始める….
市長の権力の闇は深く,司法・警察もその思うままだ.教会も市長と固く結びついている.コーリャやその周りの人々は,ウォッカを浴びる程飲み人生の悲哀を嘆きながらも,身も心も押しつぶされていく他無い.4_2
北極圏に近い海辺の荒涼とした自然を背景に,映画はロシアにおける権力と庶民の関係を浮き彫りにする.
如何にもロシア映画らしい匂いがひりひりとする好編,見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:容疑者(1987)

日記:2017年9月某日
映画「容疑者」を見る.1
1987年.監督:ピーター・イエーツ.
出演シェール(キャスリーン・ライリー),デニス・クエイド(エディー・サンガー),リーアム・ニーソン(カール・ウェイン・アンダーソン),ジョン・マホーニー(ヘルムズ判事),フィリップ・ボスコ(ポール・グレイ).2
クリスマス直前のワシントン,司法局職員エリザベス・クィンの死体が湖畔で発見される.近傍に野宿していたホームレス:カールが容疑者として逮捕される.
官選弁護士とした担当となったキャスリーンは,カールがベトナム帰還兵で復員後聾唖者となったことを知り,筆談でカールの信頼を得る.
公判開始後も物証・証人が見つからず,状況証拠不利な中キャスリーンの苦戦が続くが,陪審員の一人・エディーが事件に興味を持ち,協力を申し出る.陪審員との接触が公になれば弁護士資格剥奪になりかねないキャスリーンは拒絶するが,エディが不審者の襲撃から彼女を守る事件が発生し,二人は協力することになる….3
オーソドックスな法廷ミステリ.陪審員の採否シーンから見せる映画はあまり無いのではないか.
最後の謎解きもまずまず.但し,エディーがなぜ執拗と思えるほどにキャスリーンにつきまとい協力を申し出たかの理由付けは,不充分.
結局はエディーの女性弁護士への下心以外は考えられない(自分からは肉食系に見えるエディーだが,アメリカ人ならそんなことは当たり前なのかも).その点でデニス・クエイドにはそれ程の魅力を感じなかった.4
キャスリーンを演じたシェールは,「ソニーとシェール」でデビューしたポップスシンガー,歌手としても女優としても息の長い人である.カール役のリーアム・ニーソンはこの時35歳.
余談だが,画面に映るこの年代の街にホンダの車が多いことに吃驚する.犯行現場もホンダシビックの車内.
★★★(★5個が満点)
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2017/10/01

独断的映画感想文:藁の楯 わらのたて

日記:2017年9月某日
映画「藁の楯 わらのたて」を見る.1_2
2013年.監督:三池崇史.
出演:大沢たかお(銘苅一基),松嶋菜々子(白岩篤子),岸谷五朗(奥村武),伊武雅刀(関谷賢示),永山絢斗(神箸正貴),余貴美子(由里千賀子),藤原竜也(清丸国秀),山崎努(蜷川隆興).2_2
逃亡中の少女暴行殺人の犯人・清丸に対し,被害者の祖父で経済界の重鎮・蜷川は,清丸殺害に10億円の賞金をかけることを広告し,清丸サイトを設置する.匿われていた友人に殺されかけた清丸は福岡県警に出頭,警視庁は清丸の移送に刑事奥村・神箸とSP銘苅・白岩を派遣する.
福岡県警の関谷を含め5名の移送チームが編成されるがが,警官・機動隊員の襲撃,医療関係者による殺害未遂等の事態が続き,車列で出発したチームは極秘に新幹線での移動に切り替える.その情報も清丸サイトに直ちに掲載されたが….3_2
憎むべき犯人の命を守るため命をかけるという,警察官等の闘いを描く.原作小説は未読.
設定は抜群に面白い.その後は,何時誰が襲ってくるかというスリルと,誰が如何に内通しているかというミステリで物語は進展する.
特に良かったのは清丸役の藤原竜也で,誰もがこの犯人を殺したいと思わせる様な,非人間的な殺人愉快犯を見事に演じている.4_2
一方突っ込みどころはかなりあって,例えばSPの白岩は重大なミスや判断の誤りを連発,何故この様な凡庸な刑事が特派されたのか不可解.ラストシーンの無理矢理の設定も理解不能で,中盤までの絶体絶命の状況を如何に突破するのか,という問いへの答が見事にスルーされたのには呆然とする.裏で動いていた警察官僚自身が蜷川と通じていたらしい状況も,中途半端な説明で終わる.5_2
前半に比べ後半はやや持て余した.
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独断的映画感想文:マイ・ファニー・レディ

日記:2017年9月某日
映画「マイ・ファニー・レディ」を見る.1
2014年.監督:ピーター・ボグダノヴィッチ.
出演:オーウェン・ウィルソン(アーノルド・アルバートソン),イモージェン・プーツ(イザベラ・“イジー”・パターソン),キャスリン・ハーン(デルタ・シモンズ),ウィル・フォーテ(ジョシュア・フリート(ジョシュ)),リス・エヴァンス(セス・ギルバート),ジェニファー・アニストン(ジェーン・クレアモンド),オースティン・ペンドルトン(裁判官ペンダーガスト),シビル・シェパード(イジーの母親),リチャード・ルイス(イジーの父親),ジョージ・モーフォゲン(探偵),イリアナ・ダグラス(インタビュアー),クエンティン・タランティーノ.2
群像ドタバタコメディ.
演出家アーノルドは新作を演出するN.Y.で偽名でホテルに泊まり,早速コールガールを呼ぶ.やって来たグローと一晩楽しく過ごしたアーノルドは,コールガールを止めるなら3万ドルを提供すると言い,自分の夢を追うようにと勧める.3
女優志望だったグローは感激し,早速翌日本名のイザベラで新作のオーディションに参加,ところが審査員の一人はアーノルドだった….
ここからドラマは展開,同じく審査員の女優でアーノルドの妻デルタは共演者セスと共にイザベラを支持,脚本家ジョシュも賛成してイザベラは合格となる.
一方グローの客で判事のペンドルトンは彼女を追い回すため探偵を雇うが,探偵はジョシュの実父.ジョシュの恋人のセラピスト・ジェーンはイザベラとペンドルトンのカウンセラーでもあり,しかも患者の個人情報を洗いざらい喋る人物.この全員が同じレストランで鉢合わせになる….4
物語は人気女優イザベラが記者のインタビューに自分の過去をあけすけに語るという設定で進行するが,イザベラのキャラが誠にキュートであっけらかんとし魅力的だ.群像劇の割には話が判り易く,ドタバタコメディながら小ネタも良く効いていて楽しい.
5
一時はどうなることかという展開だが勿論映画はハッピーエンド,ラストシーンはイザベラが大物監督(本人出演)と手を組んで去って行く.俳優もそれぞれに魅力的でおすすめの映画.
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