« 2018年1月 | トップページ | 2018年4月 »

2018年3月に作成された記事

2018/03/26

番外:独断的歌舞伎感想文 二月大歌舞伎 夜の部:熊谷陣屋/壽三代歌舞伎賑/祇園一力茶屋

日記:2018年2月某日
歌舞伎座で「二月大歌舞伎 夜の部」を見る.Kabukiza_201802f3_25d7d9db66a21dd9f
「一、一谷嫩軍記 熊谷陣屋(くまがいじんや)」.出演:熊谷次郎直実(染五郎改め幸四郎),熊谷妻相模(魁春),藤の方(雀右衛門),梶原平次景高(芝翫),亀井六郎(歌昇),片岡八郎(萬太郎),伊勢三郎(巳之助),駿河次郎(隼人),堤軍次(鴈治郎),白毫弥陀六(左團次),源義経(菊五郎).「二、壽三代歌舞伎賑(ことほぐさんだいかぶきのにぎわい) 木挽町芝居前 二代目松本白鸚 十代目松本幸四郎 八代目市川染五郎」.幸四郎改め白鸚,染五郎改め幸四郎,金太郎改め染五郎.出演:菊五郎,仁左衛門,玉三郎,左團次,又五郎,鴈治郎,錦之助,松緑,海老蔵,彌十郎,芝翫,歌六,魁春,時蔵,雀右衛門,孝太郎,梅枝,高麗蔵,友右衛門,東蔵,秀太郎,廣太郎,錦吾,猿之助,楽善,我當,梅玉,吉右衛門,藤十郎.「三、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 祇園一力茶屋の場」.出演:大星由良之助(幸四郎改め白鸚),大星力弥(金太郎改め染五郎),赤垣源蔵(友右衛門),富森助右衛門(彌十郎),矢間重太郎(松江),斧九太夫(錦吾),遊女お軽(玉三郎),寺岡平右衛門(仁左衛門).
熊谷陣屋は幸四郎で2度見ていずれもいまいちだった.今回の新幸四郎は何を言っているかは明瞭で親父よりは見易いし,型がきっちり出来ているのは立派.
しかし吉右衛門の直実がビデオのワンシーンだけで落涙させる力があるのには比べようもない.これから伝統を作る若さに期待したい.左團次の弥陀六が元気で好感.
木挽町芝居前は寸劇仕立ての襲名口上,きら星の様な出演者の中で腰掛けたままながら元気そうな我當と台詞もないがにこやかに一座していた猿之助が印象的.
一力茶屋は何と言っても玉三郎・仁左衛門のお軽・平右衛門の場面に圧倒的な感銘を受ける.
お軽の由良之助を相手にする時の如何にも遊女といった風情から,兄・平右衛門に勘平の消息を聞く時の少女めいた明るさ,父も勘平も死んだと知った時の悲哀,覚悟を決めて兄の手にかかろうという時の決意,これを演じる玉三郎の美しさはどうだろう.
仁左衛門の平右衛門もぴったり息があって且つ若々しく,まことに年齢を感じさせない名演である.これほど見応えのある歌舞伎も久しぶり.楽しかった.
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

2018/03/25

独断的映画感想文:皇帝のいない八月

日記:2018年2月某日
映画「皇帝のいない八月」を見る.1_4
1978年.監督:山本薩夫.
出演:渡瀬恒彦(藤崎顕正),山本圭(石森宏明),吉永小百合(藤崎杏子),滝沢修(佐林首相),佐分利信(大畑剛造),小沢栄太郎(小山内建設大臣),永井智雄(山村防衛大臣),渥美國泰(黒須官房長官),高橋悦史(利倉保人),三國連太郎(江見為一郎),丹波哲郎(三神陸将),鈴木瑞穂(真野陸将),岡田英次(徳永陸将補),山崎努(東上正),永島敏行(矢島一曹),橋本功(島三曹),神山繁(正垣慎吾),森田健作(有賀弘一),岡田嘉子(金田),渥美清(久保),香野百合子(石森千秋),大滝秀治(野口),中島ゆたか(紀子),デニス・ファーレル(トーマス准将),太地喜和子(中上彩子).2_4
東北地方で怪しいトラックを追尾したパトカーは機銃掃射を浴び大破する.使われた銃弾から自衛隊の動きを予感した内閣調査室の利倉は,自衛隊の江見と連絡を取る.
江見は娘婿で退役自衛官の藤崎の所在を確かめるため,博多の藤崎宅を訪ねる.一方,九州に出張した業界紙記者・石森はかっての婚約者・藤崎杏子に遭遇,同じ特急桜に乗車するが,車内には自衛官が藤崎に率いられて乗車していた….3_4
国規模の自衛隊のクーデターの物語だが,各地の叛乱軍は事前に補足され,結局特急ジャックを行った藤崎隊のみが東京に向かうことになる.
出演俳優は錚々たるメンバーだが,銃撃シーン・爆破シーンや軍事車輌・ヘリコプター等の映像はちゃちなもので,リアルさが全く感じられない.4_4
藤崎の主張も三島由紀夫の亡霊の様なもので,政府要人の描き方も類型的.これでは真のエンタテインメントとは言えない.時間潰しならどうぞというレベル.残念です.
★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

独断的映画感想文:スリー・ビルボード

日記:2018年2月某日
映画「スリー・ビルボード」を見る.1_3
2017年.監督:マーティン・マクドナー.
出演:フランシス・マクドーマンド(ミルドレッド・ヘイズ),ウディ・ハレルソン(ウィロビー),サム・ロックウェル(ディクソン),アビー・コーニッシュ(アン),ジョン・ホークス(チャーリー),ピーター・ディンクレイジ(ジェームズ),ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(レッド),ルーカス・ヘッジズ(ロビー・ヘイズ),ケリー・コンドン(パメラ),サンディ・マーティン(ディクソンの母).2_3
ミズーリ州の田舎町エビングの郊外の道路脇に,或る日3枚の意見広告が掲出される.
娘をレイプされ殺されたミルドレッドが進展しない捜査に業を煮やし,警察を批判し署長:ウィロビーを名指して責任を問うたものだった.
ウィロビーは温厚公正な人物である上,膵臓ガンで余命は数ヶ月であることを知る町民は,ミルドレッドを非難するが,彼女は一歩も引かない.部下のディクソン巡査は暴力的人種差別者で,ミルドレッドへの怒りを露わにする.3_3
その中でウィロビーの病状は悪化,ウィロビーはある決断をして妻,ミルドレッド,ディクソン等に手紙を書くが….
ミルドレッドも含めて,暴力に訴えることをためらわない人々の確執がどう展開するか,全く先を読めない物語だ.
映画を通して警察の捜査が進展することもなく,レイプ犯が明らかになる訳でもない.一方その中でも微かなユーモアが示されたり,激しく反発する者同士がある部分で哀しみを共有できる瞬間があったりして,映画の基調は決して暗鬱ではない.4_3
ラストシーンは,この憤激の袋小路から抜け出る可能性を暗示している様にも見える.
フランシス・マクドーマンド,ウディ・ハレルソン,サム・ロックウェルがいずれも良い味で見応えあり.「マンチェスター・バイ・ザ・シー」で好演したルーカス・ヘッジズが今回も好感の持てる演技.
バックに織り込まれている楽曲も素敵だ.
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

独断的映画感想文:ゴースト・イン・ザ・シェル

日記:2018年2月某日
映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」を見る.1_2
2017年.監督:ルパート・サンダーズ.
出演:スカーレット・ヨハンソン(少佐),ビートたけし(荒巻大輔),マイケル・カルメン・ピット(クゼ),ピルー・アスベック(バトー),チン・ハン(トグサ),ジュリエット・ビノシュ(オウレイ博士).2_2
人間の体の一部を機械に入れ替える(義体化と言う)技術が実用化した世界,そのテクノロジーを推し進めるハンカ社が誕生させた,脳以外の全てが義体である「少佐」は公安9課の優秀なエージェントである.
9課は,ハンカ社のサイバーテクノロジーへのハッキングを狙う,クゼと名乗るハッカーを追及していた.少佐は自身の過去について断片的な記憶しか持たないが,クゼの情報が自身の失われた記憶と何らかの繋がりを持つのではないかと疑う.3_2
一方ハンカ社は,少佐の生みの親・オウレイ博士に少佐の記憶を消去する様命じる….
それなりのキャストを配して作成された実写版攻殻機動隊だが,2つの点に問題あり.
1つは過去のSF作品と同工異曲の(しかもオリジナルの映像よりださい)映像世界である.ここには新しい感覚を触発する何もない.デフォルトスタンダードに則ったのだと言われればそれまでだが,「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」(アニメ版)をパクった「マトリックス」をパクリ返し,「ブレードランナー」で包装した様な映像世界は,受け容れ難い.4_2
2つは少佐のキャスティングである.30代半ばのアメリカ人であるスカーレット・ヨハンソンが着ぐるみを着た「少佐」像は,違和感がありすぎる.5
9課全体もあまり詳しく描写されておらず各課員のキャラクターは不鮮明だが,SWATかNavy SEALsの様に描かれており,サイバーテロ対応より武力による突撃が本来業務の様でこれも受け容れ難い.
上記を別にしても,B級映画感が強く,感銘を受けなかったのは残念.
★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

独断的映画感想文:手紙は憶えている

日記:2018年1月某日
映画「手紙は憶えている」を見る.1
2015年.監督:アトム・エゴヤン.
出演:クリストファー・プラマー(ゼヴ・グットマン),ブルーノ・ガンツ(ルディ・コランダー),ユルゲン・プロフノウ(ルディ・コランダー),ハインツ・リーフェン(ルディ・コランダー),ヘンリー・ツェーニー(チャールズ・グットマン),ディーン・ノリス(ジョン・コランダー),マーティン・ランドー(マックス・ザッカー).2
90歳で養老院に暮らすゼヴは目覚めるたびに記憶を失ってしまい,妻ルースの死さえ憶えられない.
同じ養老院の親友マックスは彼に手紙を託し,生前のルースと共に約束した行為を実行する様促す.
その手紙には,かってアウシュビッツで彼とマックスの家族を殺したナチのブロック責任者:オットーが現在ルディ・コランダーと名乗っており,4名の同姓同名の容疑者の中からオットーを見つけて射殺するための,詳細な手順が明記してあった.3
ゼヴは指示に従って養老院を抜け出し,4人のルディを訪ねていくが,最初のルディは北アフリカ戦線に従事した兵士,2番目のルディはドイツ人だが同性愛者で同じ囚人の立場だった….
認知症のゼヴが如何にオットーのもとにたどり着けるかというサスペンスであると同時に,誰がオットーなのかというミステリでもある映画.4
1929年生まれのクリストファー・プラマーが好演,特に見事にピアノを弾くシーンは,少年時代ピアニスト志望だっただけのことはある.
この映画のラスト5分間のどんでん返しは殆どSF的と言っても良いくらいで吃驚した.よくよく考えるとちょっとあり得ない設定ではあるが,まあ映画ですからこういうこともありですね.
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ


| コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年1月 | トップページ | 2018年4月 »