独断的映画感想文:マルクス・エンゲルス
日記:2018年5月某日
映画「マルクス・エンゲルス」を見る.
2017年.監督:ラウル・ペック.
出演:アウグスト・ディール(カール・マルクス),シュテファン・コナルスケ(フリードリヒ・エンゲルス),ヴィッキー・クリープス(イェニー),オリヴィエ・グルメ(ジョセフ・プルードン).
カール・マルクスは「ライン新聞」に寄稿する若き思想家,プロシア官憲によりライン新聞編集部が検挙された時に捕まるが,マルクスはむしろライン新聞の手ぬるい表現に辟易としていた.パリに拠点を移したマルクスは,妻イェニーと娘ジェニーとの生活を守りつつ,新聞に寄稿し論文を執筆する.
一方,イギリスの紡績会社社長の息子:フリードリッヒ・エンゲルスはブルジョワジーの搾取に批判的で,父の従業員だった恋人メアリー・バーンズの協力で,英国労働者階級の実態を論文化し発表する.
二人はパリの編集者ルーゲの書斎で出会い,意気投合する.やがて二人は英国で組織された「正義者同盟」に介入しそのメンバーとなるべく活動を進める….
19世紀半ば産業革命の進むヨーロッパ,未だ20代の若きマルクスとエンゲルスの活動を,1848年の「共産党宣言」の発表まで描く.映画は若い彼等の生活や恋愛を交えて描き,エンタテインメントとして十分に魅力的.
物語のクライマックスは,マルクスとエンゲルスが正義者同盟の主流派となって「共産主義者同盟」と名称を変更していく1847年の大会のシーンだが,容赦ない批判の応酬・より過激な主張の勝利という過程には共感できず,苦いものを感じざるを得なかった.共産主義運動が内包したこの様な分派闘争の作風が,次の世紀=「戦争と革命」の世紀に如何に大きな影響を与えたか,と考えるためだ.
偶然だが,鑑賞した岩波ホールでは「ゲッベルスと私」の予告編を上映した.そこに登場したナチスのゲッベルスのアジテーションは,この映画で正義者同盟からマルクスに除名されたヴァイトリングが行ったアジテーションとうりふたつだった.このことも映画の感想にほろ苦いものをつけ加えている.
こんな感想は,自身が青年の時代であれば持たなかったに違いない.
エンドテーマは唐突にボブ・ディランのライク・ア・ローリング・ストーン,でも何となく合っている感じ.複雑な感情で映画館を後にした,いろいろと考えさせる映画.
★★★☆(★5個が満点)
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