独断的映画感想文:ラッキー
日記:2018年4月某日
映画「ラッキー」を見る.
2017年.監督:ジョン・キャロル・リンチ.
出演:ハリー・ディーン・スタントン(ラッキー),デヴィッド・リンチ(ハワード),ロン・リヴィングストン(弁護士ボビー・ローレンス),エド・ベグリー・Jr(Dr.クリスチャン),トム・スケリット(フレッド)),ジェームズ・ダーレン(ポーリー),バリー・シャバカ・ヘンリー(ジョー).
サボテンだらけの田舎町に住むラッキーは90歳の一人暮らし,毎朝起きてヨガをした後ジョーの店に行き,珈琲を飲みながらクロスワードを解く.
裏通りのとある一角で「クソ女め」と呟いて(これがどういう意味かは映画の終わりに解明される),夜は行きつけのバーでブラッディーマリアを飲む.煙草を吸うが体に悪いところは何処もない.
ところが或る日突然倒れたラッキー,近づく死への意識と怖れを感じずにはいられない.ラッキーは不機嫌になり攻撃的になる.しかし友人達との絆で,ある境地に近づいていく….
昨年他界した名優:ハリー・ディーン・スタントンの最後の主演作である.
飄々と生きるラッキーの日々を描く穏やかな映画,しかし登場人物達の会話は暗示的で時に哲学的.人生をここまで乗り切ってきた者達の畏敬すべき考えに感銘を受けないではいられない.
特に,行方不明になったペットの高齢の亀に財産を残そうとする親友ハワードの話,同年配の海兵隊員(ラッキーも海軍で日本軍と戦ったのだ)の,タラワで出会った日本人少女の物語等のエピソードは,印象的だ.
ここには我々がニュースで見るアメリカとは異なった,人を越えるものへ畏れを抱き,ある悟りに向かう真摯で優しいアメリカ人達がいる.
ハリー・ディーン・スタントンの個人技を見るのも楽しい.
食料品店のヒスパニック系主人が息子の誕生日に招いてくれた席で,ラッキーが披露するマリアッチの歌は,年齢とは思えない渋い声で魅惑的だ.また,全編に流れるハリー自身が吹くブルースハープの「レッド・リバー・バレー」も,素晴らしい.
最後のシーン,カメラ目線でにっこり笑った後,サボテンの道を去って行くラッキーの姿に涙を禁じ得ない.ユーモアとペーソスに満ちた映画らしい映画,お勧めです.
★★★★☆(★5個が満点)
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