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2018年6月に作成された記事

2018/06/19

番外:独断的歌舞伎感想文 六月大歌舞伎夜の部 夏祭浪花鑑/巷談宵宮雨

日記:2018年6月某日
六月大歌舞伎夜の部を見る.Kabukiza_201806_ffl_4607bdc5b23519f
「一、夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」.鳥居前 三婦内 長町裏.出演:団七九郎兵衛(吉右衛門),お辰(雀右衛門),一寸徳兵衛(錦之助),お梶(菊之助),下剃三吉(松江),玉島磯之丞(種之助),傾城琴浦(米吉),団七伜市松(寺嶋和史),大鳥佐賀右衛門(吉之丞),三河屋義平次(橘三郎),堤藤内(桂三),釣船三婦(歌六),おつぎ(東蔵).宇野信夫:作,大場正昭:演出 「二、巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)」.深川黒江町寺門前虎鰒の太十宅の場より,深川丸太橋の場まで.出演:龍達(芝翫),虎鰒の太十(松緑),おとら(児太郎),おとま(梅花),薬売勝蔵(橘太郎),徳兵衛(松江),おいち(雀右衛門).
夏祭浪花鑑は吉右衛門自在の境地による団七九郎兵衛が,圧倒的魅力.歌六の釣船三婦,錦之助の一寸徳兵衛が印象的だった.
お梶の出番ってこれだけだったろうか,菊之助と和史君はちょっとだけの出演.松江という人は今まであまり意識しなかったが,ここに来て存在感が増してきた.
巷談宵宮雨は実は怪談もの,しかし怖いというよりはおかしみと哀れを誘うストーリー.
主演級の芝翫,松緑,雀右衛門が,それぞれいつもと異なる役柄で良かったが,薬売勝蔵を演じた橘太郎が,この人らしい演技でほろりとさせ印象に残った.
雀右衛門のおいちは世話物のおかみさんで白塗りではないが,こういう扮装でもやはり美人.
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独断的映画感想文:罪の手ざわり

日記:2018年6月某日
映画「罪の手ざわり」を見る.1
2013年.監督:ジャ・ジャンクー.
出演:チャオ・タオ(シャオユー(小玉)),チアン・ウー(ダーハイ(大海)),ワン・バオチャン(チョウ(周)),ルオ・ランシャン(シャオホイ(小輝)),チャン・ジャーイー(ヨウリャン(佑良)),リー・モン(リェンロン(蓮蓉)).
映画の冒頭,山道をバイクで走行中3人組の追いはぎに襲われたチョウ,懐から銃を取り出し,あっという間に全員を射殺する.平然と山道を進むチョウ,ダーハイとすれ違う.4
ダーハイが働いてきた山西省の村の炭鉱はいつの間にか同級生の金持ちの所有となり,利益は村長一派と資本家のもの.抗議したダーハイは金持ちの側近に袋だたきにされる.ダーハイは猟銃を持ち出す….
チョウは正月に重慶の自宅に帰るが,銃を使った強盗で稼ぎ送金していたことは妻に判ってしまう.地元に留まるよう懇願する妻を置いて,チョウは白昼の強盗を犯し,長距離バスで逃亡する.6
そのバスに同乗していたヨウリャンは着いた湖北省の町で愛人シャオユーと会う.報われない愛人生活を続けてきたシャオユーは風俗サウナの受付.サウナに来た客から金づくで性サービスを強要されるが….
ヨウリャンの経営する広東省のクリーニング工場で働いていたシャオホイはナイトクラブに商売替え.そこの「ダンサー」リェンロンに心惹かれるが恋に破れ,更に稼いだ金は残らず母親に引き出され絶望する….3
現代中国の拝金主義とその犠牲となる庶民の絶望を描く,4つのエピソードによるオムニバス映画.
淡々とした描写ながら緊張感高く,各エピソードを演じる俳優も素晴らしい.最初のダーハイの物語に登場する京劇と,エピローグに登場する京劇がそれぞれ暗示的な台詞を繰り返すシーン,各エピソードの登場人物が重なっていくこと等,如何にも映画的な演出も面白い.5
★★★☆(★5個が満点)
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2018/06/12

独断的映画感想文:万引き家族

日記:2018年6月某日
映画「万引き家族」を見る.1
2018年.監督:是枝裕和.音楽:細野晴臣.
出演:リリー・フランキー(柴田治),安藤サクラ(柴田信代),松岡茉優(柴田亜紀),池松壮亮(4番さん),城桧吏(柴田祥太),佐々木みゆ(ゆり),緒形直人(柴田譲),森口瑤子(柴田葉子),山田裕貴(北条保),片山萌美(北条希),柄本明(川戸頼次),高良健吾(前園巧),池脇千鶴(宮部希衣),樹木希林(柴田初枝).2
映画の冒頭,柴田治と祥太がスーパーマーケット内を歩きながら万引きをする.目的の品をゲットし,地元の商店街に戻ってコロッケを購入する2人.
ところがその帰り道,虐待されマンションのベランダに放置されたゆりを見つけ,連れ帰ることにする.家に帰ると「家族」は夕飯の最中だ.3
初枝の家に住む信代・治の夫婦,孫の亜紀・祥太はいずれも血のつながりのない他人同士.生活は初枝の僅かな年金と信代・治のパートの給料,後は万引きでまかなっている.そこにゆりも加え,6人となる「家族」の物語.
信代はクリーニング工場のバイト,治は建築現場の補助作業員で働き,亜紀はファッションヘルスでバイトをしている.祥太(10歳前後?)は学校に通わず自宅で自学自習し,出かけては万引きをする.ゆり(5歳前後?)は祥太について万引きを習得しつつ,次第に「家族」に心を開いていく….
映画はこの「家族」の日常を淡々と描写しつつ,如何にこの「家族」が形成されていったかを次第に明らかにしていく.成員のそれぞれは深い傷を抱え,この「家族」に転がり込んできた.その結果形成された「家族」は,強い絆を持つに至る.その絆が表現される海水浴のシーンは,その前段のゆりの水着の万引きシーンと併せ,何と明るく楽しいことだろう.4
しかしこの後,家族の絆は破綻していくことになる.エピローグでの治と祥太の別離のシーンには,涙を禁じ得ない.万引きという手段で支えられた「家族」は,祥太の成長と正義感の目覚めと共に,瓦解せざるを得なかったのか.
自分が印象的だったのは,幾つかの「涙」の場面.
信代とゆりが初めて一緒に入浴し,信代の腕の傷跡をゆりがさわる.アイロンで火傷したのだと信代が言い,ゆりは自分もそうだと腕の火傷跡を示す.その後縁側でゆりを抱いて花火を見上げる信代,ゆりが信代の頬をさする.信代が涙を流しているのだ.
あるいは亜紀が自分の顧客「4番さん」とトークプレイをするシーン.取り止めもない話を一方的に亜紀がするが,「4番さん」は無言のまま.プレイ時間が終了して亜紀の膝枕から起き上がる「4番さん」,亜紀の膝に涙が残る.5
そして信代が刑事の取り調べを受けるシーン.子供達は信代を母と呼んでいたのかと問われ,信代ははぐらかす様に手で顔をこすり続ける.しかしやがて,隠しようもなく滂沱と流れる涙.
それぞれ「家族」・「絆」という命題に対する,監督のメッセージが示されているようだ.
映画は緊張感高くしかし楽しく進行する.俳優の活躍は(子役含めて)期待通り.リリー・フランキーは明るく気弱な小悪党を,安藤サクラは現代の日本の母性を体現したような演技.
樹木希林の演技は,社会に対してはしたたかに生きつつ「家族」に対しては何処までも優しい,昭和的な母性を見る様だ.6_2
細野晴臣の音楽も印象的.
パルムドールに相応しい,見応えのある映画.監督・キャスト・スタッフの出会いと,この映画に結実した力量が素晴らしい.
★★★★☆(★5個が満点)
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2018/06/09

独断的映画感想文:ファントム・スレッド

日記:2018年6月某日
映画「ファントム・スレッド」を見る.1
2017年.監督:ポール・トーマス・アンダーソン.
出演:ダニエル・デイ=ルイス(レイノルズ・ウッドコック),レスリー・マンヴィル(シリル・ウッドコック),ヴィッキー・クリープス(アルマ・エルソン),カミーラ・ラザフォード(ジョアンナ),ジーナ・マッキー(ヘンリエッタ),ブライアン・グリーソン(ロバート・ハーディ),ハリエット・サンソム・ハリス(バーバラ).2
ウッドコックはロンドンの高級仕立て服ハウスのオーナー,姉シリルをマネージャー役として,完全主義の仕事が社交界からも高く評価されている.
仕事のストレスに疲れ一人車で別荘に向かったウッドコックは,途上のレストランで若く美しいウエイトレスのアルマと出会う.一目でアルマが気に入ったウッドコックは彼女を自邸に迎え入れ,その美貌とウッドコックの服飾モデルへの要求にぴったりの肢体は,ウッドコックの創作欲を刺激する.3
やがて二人は愛し合うと同時に,ウッドコックの服飾への思いも共有するようになるが,一方でウッドコックなりのやり方で運営されてきた暮らしは,アルマによってかき乱される.他方,シリルにより完璧に庇護されているウッドコックに対し,自身がウッドコックを庇護するべきだと考えたアルマは,ある日思い切った行動に出る….
1950年代ロンドンの服飾ハウスや,郊外の別荘を舞台に繰り広げられる映像美がまず魅力的.4
演じる主演3名の演技も誠に見応えあり.特に別荘の食堂で,アルマが倒錯的な愛のかたちを提示し,ウッドコックがそれを受け入れていく長いシーン,ヴィッキー・クリープスとダニエル・デイ=ルイスの緊張感に満ちた演技が素晴らしい.初々しいアルマが女の凄みを示していく過程もスリリングだ.
同じ監督・主演の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」でも担当した,ジョニー・グリーンウッドの音楽が,今回も印象的.映画的魅力に満ちた作品.
★★★★(★5個が満点)
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2018/06/01

独断的映画感想文:モリのいる場所

日記:2018年5月某日
映画「モリのいる場所」を見る.1
2017年.監督:沖田修一.
出演:山崎努(熊谷守一),樹木希林(熊谷秀子),加瀬亮(藤田武),吉村界人(鹿島公平),光石研(朝比奈),青木崇高(岩谷),吹越満(水島),池谷のぶえ(美恵ちゃん),きたろう(荒木),林与一(昭和天皇),三上博史(知らない男).
映画冒頭は,熊谷守一の作品を眺めている昭和天皇のアップ.「この絵は何歳の子供が書いたのか」とのご下問あり侍従が困惑している.2
映画は自宅の庭から外には一歩も出ずに30年間を暮らしているモリこと熊谷守一と,その妻秀子の飄々とした生活を描く.庭の草花,虫,蛙,トカゲ,自らが掘った池の魚たちを観察し共に生きそして共に昼寝するモリ.一方夜になると秀子に「学校の時間ですよ」とアトリエに追いやられ,創作に向き合う羽目になる.
モリの家には来客が多く,書の依頼者や写真家・藤田も出入りする.自宅の表札はモリが自作するためしょっちゅう盗まれる.世の中の時間とは無縁のモリの家のようだが,日照を大幅に遮るかたちで隣接地にマンションが建ちつつある….3
青春映画というカテゴリーがあるとすれば,この様な映画は白秋映画か玄冬映画と言うべきなのだろうか.
山崎努と樹木希林は文学座の先輩・後輩ではあるが,共演はこれが初めてだそうな.
この二人の息のあった演技がとにかく見もの.食事中やにわにモリがウィンナソーセージを食べる前にペンチで潰す,その瞬間布巾をさっと掲げて飛び散る油を防ぐ秀子.あるいは文化勲章内定を告げてきた電話に出た秀子が,来客が増えるのは嫌だというモリの対応に即座に「要らないと言ってます」と告げて切ってしまうシーン.両者の間がまさに絶妙である.5
共演も達者揃いで安心して映画を見ることが出来る.
こういう老境なら是非なって見たいと思わせる,ほんわか映画.終盤で,新設なった隣地のマンションの屋上に上がった藤田が俯瞰するモリの家と庭,以外と狭い庭(敷地は80坪程度らしい)の片隅に潜むモリを縁側から秀子が呼んでいる.何となく胸を突かれるラストシーン.4
★★★★(★5個が満点)
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