独断的映画感想文:四川のうた
日記:2018年8月某日
映画「四川のうた」を見る.
2008年.監督:ジャ・ジャンクー.
出演:ジョアン・チェン(シャオホァ),リュイ・リーピン(ダーリー),チャオ・タオ(スーナー),チェン・ジェンビン(ソン・ウェイドン).
2007年,四川省成都にある420工場は,50年にわたるその歴史を閉じようとしていた.工場の閉鎖式,施設設備の解体撤去,新しい高層マンション群の建設と進む状況を背景に,この工場で働いたり,この工場地区で学び育った人々のインタビューで綴るドキュメンタリー.
本作は420工場の労働者・子弟4人のインタビューと,4人の俳優がそれらの人々を演じて行うインタビューとで構成されている.
工場創業と文革前後を語る何錫崑,420工場設置の毛沢東の政策を語る関書記,90年代のリストラ状況を語る侯麗君,420工場で生まれ進学後TVキャスターになった趙剛は本人が出演.
一方,工場創設時の異動の旅で一人息子が行方不明になった大麗(ダーリー),80年代の不況下で別れる羽目になった医学生の彼女が,「赤い疑惑」の山口百恵と同じ髪型だったと語る栄衛東(ソン・ウェイドン),80年代に工場に勤め婚期を逃した小花(シャオホァ)こと顧敏華,1982年に工場で生まれ今は上海で高級品のバイヤーをしている蘇娜(スーナー)をそれぞれ俳優が演じてインタビューを行う.
それぞれのインタビューは印象的で,本人出演の如何にも風雪に耐えてきた労働者という顔貌と語り口も素晴らしい.
一方,リュイ・リーピン,チャオ・タオのインタビューはそれぞれ好演で感銘を受けた.特にジャ・ジャンクー監督の全映画に出演しているチャオ・タオが,廃校となった420工場の学校で父と母を語る映画のラストシーンは素晴らしい.
途中で流れる「ありがとう あなた」(赤い疑惑主題歌)を始め,挿入される中国歌謡や詩文も趣があり,映画に厚みを与えている.
見応えあり.★★★★(★5個が満点)
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