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2019年2月に作成された記事

2019/02/04

独断的映画感想文:セブン・シスターズ

日記:2019年2月某日
映画「セブン・シスターズ」を見る.1_4
2016年.監督:トミー・ウィルコラ.
出演:ノオミ・ラパス(セットマン家の7姉妹),マーワン・ケンザリ(エイドリアン・ノレス),ウィレム・デフォー(テレンス・セットマン),クリスティアン・ルーベク(ジョー),グレン・クローズ(ニコレット・ケイマン).2_4
2073年,地球は干ばつと資源の枯渇で危機的状況に.遺伝子組み換え作物の開発で食糧危機は脱したものの,その副作用で多胎が増加する.
欧州連邦は児童分配局を創設,強権的な一人っ子政策を実施する.2人目以降の児童は分配局に収容され,危機が去るまでの間冷凍保存されることになる.3_4
誕生時に両親を失ったセットマン家の7人姉妹は,祖父テレンスの意向で7人が日替わりで一人の人格カレンを演じることで成長する.各人が曜日の名前をつけられた7人姉妹は,性格も才能もそれぞれだったが,協力して30歳まで生き延びてきた.
しかし或る日「月曜日」が夜になっても帰らず,翌日不安の中出かけた「火曜日」は児童分配局長官ケイマンに逮捕される….5_4
この時点で芋づる式に7人全員が逮捕されておかしくないのだが,襲撃してきたエージェントを残された5人姉妹が犠牲を払いながら撃退,武闘派の「水曜日」がコンピュータの天才「金曜日」の指示のもと,「月曜日」行方不明の手掛かりを捜しに街頭に忍び出る….
4_4
7人が1人として30年暮らすという設定自体が無茶苦茶であり,戦闘が始まった後も,何故自宅に公権力が雪崩れ込んでこないのか不思議とか,観客にとってミステリが多い映画.しかし映画のテンポは良く,アクションの連続と入れ替わりに活躍する7人の組み合わせが魅力的で映画に引き込まれる.
上に述べたミステリも映画の進行の中で次第に謎が解けてきて(かなり無理はありますが),ややB級映画的だが最後まで面白く見た.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:斬、

2019年1月某日
渋谷ユーロスペースで映画「斬、」を見る.1_3
2018年.監督,脚本,製作,撮影:塚本晋也.
出演:池松壮亮(都筑杢之進),蒼井優(ゆう),中村達也(源田源左衛門),前田隆成(市助),塚本晋也(澤村次郎左衛門).
2_3
杢之進はいずれ江戸に出ようという剣客,今はこの村で農作業の手伝いをする居候である.農家の少年市助に剣術の稽古をつけている.
その姉ゆうは杢之進を好いているが杢之進は行動に出ることがない.
3_3
或る日村に現れた凄腕の浪人澤村,浪士隊を組織して公儀に奉公したいと言い,杢之進と市助を勧誘する.二人は澤村と共に出立することになるが,その朝杢之進は病に倒れる.
市助は出立できない鬱憤のまま村外れに逗留していた浪人達と衝突し,袋だたきにされる.澤村は手下となった市助への危害には報復しなければならないと言い,杢之進の止めるのに耳を貸さず浪人達を切ってしまう.しかし逃れた2名の浪人が仲間を連れゆうの家を襲撃した….
池松壮亮の殺陣の動きは素晴らしく,寡黙な演技も印象的.蒼井優も期待通りの好演だ.映画は緊張感高く,並々ならぬ力量を傾けて製作されたものであることは間違いない.4_3
しかし認めがたい点も多々ある.「野火」に続く塚本晋也監督の作品だが,本作には「野火」にあった戦争という大前提に匹敵するものが見出しがたい.キャッチコピーの「なぜ人は人を斬るのか」という言葉は,戦争に比べれば全然普遍的な命題ではない.
また,殺陣のシーンは映像が暗く手持ちカメラのぶれが激しく,何が起こっているのか判らない.誰が誰を斬ったのか,負傷の程度はどれほどか,ドラマの根幹に関わる点が判らぬまま映画が進行する.5_3
こういう点が消化不良なまま,映画は終わってしまった.圧倒されたが何か釈然としない映画.
★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ヴィクトリア女王 最期の秘密

日記:2019年1月某日
Bunkamuraル・シネマ1で映画「ヴィクトリア女王 最期の秘密」を見る.1_2
2017年.監督:スティーヴン・フリアーズ.
出演:ジュディ・デンチ(ヴィクトリア女王),アリ・ファザール(アブドゥル・カリム),エディ・イザード(バーティー),アディール・アクタル(モハメド),ティム・ピゴット=スミス(ヘンリー・ポンソンビー),マイケル・ガンボン(ソールズベリー).2_2
1887年,英領インドのアグラに住むアブドゥルは,献上品の絨毯の目利きを認められ,ヴィクトリア女王即位50周年記念式典で記念金貨“モハール”を献上する役目に抜擢される.
はるばるロンドンに派遣されたアブドゥルは式典で女王の目に止まり,式典期間の間女王の従僕に採用される.
3_2
臆することなく親しみを込めてインドの風物などを語りかけるアブドゥルに,女王も心を開き,親しい人達を失った後の苦しい心中を打ち明けるまでになる.一方,有色人種であるアブドゥルへの寵愛に対し,皇太子アルバート(バーティー)以下王室職員の多くは激しい敵意を抱くが….


4_2
大英帝国及びインドの絶対的君主である一方,一人の寂しい女性として希有な存在でもあるヴィクトリア女王を,ジュディ・ディンチが圧倒的な存在感で演じる.フィレンツェで,プッチーニの前でギルバートとサリバンの歌曲を歌ってみせる(伴奏は皇太子バーティー)シーンは圧巻.
映画の終盤,アブドゥルにナイトの称号を授けようとして周囲の猛反発を受けた時の,皇太子・首相に対し,また王室職員一同に対し,女王が示した君主としての威厳も印象的だ.
5_2
このアブドゥルとの交流が,女王の晩年にとってかけがえのないものだったことは想像に難くない.英国女王の意外な一面という以上に,インド青年との心を開いた交流が感銘的な映画.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:焼肉ドラゴン

日記:2019年1月某日
映画「焼肉ドラゴン」を見る.1
2018年.監督:鄭義信.
出演:真木よう子(長女・静花),井上真央(次女・梨花),大泉洋(哲男),桜庭ななみ(三女・美花),大谷亮平(長谷川さん),ハン・ドンギュ(尹大樹),イム・ヒチョル(呉日白),大江晋平(末っ子・時生),宇野祥平(呉信吉),根岸季衣(美根子),イ・ジョンウン(母・英順),キム・サンホ(父・龍吉).2
万博間近の1969年,空港に隣接する大阪の下町にある在日コリアンの焼き肉屋「ドラゴン」.
父・龍吉は済州島の出身で、戦争で左腕を失った.先妻との間の二女と後妻・英順の連れ子美花,英順との間の子・時生と暮らしている.3
今日は次女・梨花と同じ在日の哲夫の結婚式だというのに,役所の差別的言辞に怒った哲夫が結婚届を破ってしまい,梨花と哲夫が大げんかをしながら戻って来る.長女の静花が二人を仲直りさせるが,哲夫は以前は静花の恋人だったらしい.静花は店の客・尹に好意を持たれている.三女・美花は歌手を目指しクラブのマスター長谷川と恋仲だが,長谷川には妻がいる.5
中学生の時生は父の計らいで進学校に通っているが,いじめに遭って失語症に陥っている.この一家の,時代に翻弄されながら生きていく姿を描く映画.
物語は家族の生い立ちや男女の確執の変転を追ってテンポ良く展開し,間断するところがない.4
俳優達それぞれが達者な演技を示すが,特に両親を演じるイ・ジョンウンとキム・サンホの存在感は圧倒的.終盤,美花に長谷川が求婚する場面での龍吉の訥々とした日本語の台詞には,涙を禁じ得なかった.
登場人物達は個々の事情で最後には別れ別れになっていくが,それぞれが逞しく生きていくことを示唆するラストシーンは感銘的である.映画らしい映画,見て損はなし.
★★★★☆(★5個が満点)
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