独断的映画感想文:斬、
2019年1月某日
渋谷ユーロスペースで映画「斬、」を見る.
2018年.監督,脚本,製作,撮影:塚本晋也.
出演:池松壮亮(都筑杢之進),蒼井優(ゆう),中村達也(源田源左衛門),前田隆成(市助),塚本晋也(澤村次郎左衛門).
杢之進はいずれ江戸に出ようという剣客,今はこの村で農作業の手伝いをする居候である.農家の少年市助に剣術の稽古をつけている.
その姉ゆうは杢之進を好いているが杢之進は行動に出ることがない.
或る日村に現れた凄腕の浪人澤村,浪士隊を組織して公儀に奉公したいと言い,杢之進と市助を勧誘する.二人は澤村と共に出立することになるが,その朝杢之進は病に倒れる.
市助は出立できない鬱憤のまま村外れに逗留していた浪人達と衝突し,袋だたきにされる.澤村は手下となった市助への危害には報復しなければならないと言い,杢之進の止めるのに耳を貸さず浪人達を切ってしまう.しかし逃れた2名の浪人が仲間を連れゆうの家を襲撃した….
池松壮亮の殺陣の動きは素晴らしく,寡黙な演技も印象的.蒼井優も期待通りの好演だ.映画は緊張感高く,並々ならぬ力量を傾けて製作されたものであることは間違いない.
しかし認めがたい点も多々ある.「野火」に続く塚本晋也監督の作品だが,本作には「野火」にあった戦争という大前提に匹敵するものが見出しがたい.キャッチコピーの「なぜ人は人を斬るのか」という言葉は,戦争に比べれば全然普遍的な命題ではない.
また,殺陣のシーンは映像が暗く手持ちカメラのぶれが激しく,何が起こっているのか判らない.誰が誰を斬ったのか,負傷の程度はどれほどか,ドラマの根幹に関わる点が判らぬまま映画が進行する.
こういう点が消化不良なまま,映画は終わってしまった.圧倒されたが何か釈然としない映画.
★★(★5個が満点)
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