独断的映画感想文:ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
日記:2019年3月某日
映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」を見る. 2017年.監督:スティーヴン・スピルバーグ.
出演:メリル・ストリープ(キャサリン・グラハム),トム・ハンクス(ベン・ブラッドリー),サラ・ポールソン(トニー・ブラッドリー),ボブ・オデンカーク(ベン・バグディキアン),トレイシー・レッツ(フリッツ・ビーブ),ブラッドリー・ウィットフォード(アーサー・パーソンズ),アリソン・ブリー(ラリー・グラハム・ウェイマウス),ブルース・グリーンウッド(ロバート・マクナマラ),マシュー・リス(ダニエル・エルズバーグ). 1966年.ベトナムの前線を視察したダニエル・エルスバーグは,自身の米軍不利のレポートを上司マクナマラ国防長官が採用したにもかかわらず,対外的には米軍有利と発表したことに失望,秘密文書の外部持ち出しとコピーを始める.
一方ワシントンポストの女性社主キャサリン・グラハムは,父の死後同社を引き継いだ夫フィリップが自殺したのち1969年に同社主に就任した.1971年,彼女は役員の勧めによりポスト紙の株公開に打って出る.
この頃ニューヨーク・タイムスはベトナム秘密文書(ペンタゴン・ペーパーズ)の内容暴露の記事を発表,アイゼンハワー大統領時代から引き続いて国民を偽ってベトナム戦争を拡大してきたその内容はセンセーションを巻き起こす.ニクソン政権は直ちに機密保護法違反で記事の差し止めを命じる.
一方ポスト記者のベン・バグディキアンは旧友ダニエル・エルズバーグとの連絡に成功,ペンタゴン・ペーパーズの全文を入手,ポスト紙はその資料に基づく記事を作成し,掲載紙の発行許可をキャサリンに求める.株式公開直後のこの状況にキャサリンは決断に苦しむが…. 本作は報道の自由と国家のつく嘘を巡る極めてスリリングな政治ドラマである.その一方で,父と夫へのコンプレックスに苦しむ一女性の自己の確立と決意の物語でもある.
それを演じるメリル・ストリープの演技はどうだ.彼女が電話会議で掲載の最後の決断を下す場面,キャサリンの胸の動悸とあえぎが観客に聞こえてくる様である.メリル・ストリープの名演に敬礼するばかり.映画はラストシーンをニクソン政権の命運にかかわる別の事件のプロローグに繋げて終わるが,この演出も心憎い. この映画を現代の日本の新聞社は正視する勇気があるだろうか?某大新聞社の映画コラムで本作を取り上げているが,まるでエンタテインメント映画一般の取り上げ方で,我が身を省みる気配は皆無.さすがと寒心した次第であった.
★★★★☆(★5個が満点)
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