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2019年3月に作成された記事

2019/03/31

独断的映画感想文:ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

日記:2019年3月某日
映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」を見る.1_6 2017年.監督:スティーヴン・スピルバーグ.
出演:メリル・ストリープ(キャサリン・グラハム),トム・ハンクス(ベン・ブラッドリー),サラ・ポールソン(トニー・ブラッドリー),ボブ・オデンカーク(ベン・バグディキアン),トレイシー・レッツ(フリッツ・ビーブ),ブラッドリー・ウィットフォード(アーサー・パーソンズ),アリソン・ブリー(ラリー・グラハム・ウェイマウス),ブルース・グリーンウッド(ロバート・マクナマラ),マシュー・リス(ダニエル・エルズバーグ).5_3 1966年.ベトナムの前線を視察したダニエル・エルスバーグは,自身の米軍不利のレポートを上司マクナマラ国防長官が採用したにもかかわらず,対外的には米軍有利と発表したことに失望,秘密文書の外部持ち出しとコピーを始める.
一方ワシントンポストの女性社主キャサリン・グラハムは,父の死後同社を引き継いだ夫フィリップが自殺したのち1969年に同社主に就任した.1971年,彼女は役員の勧めによりポスト紙の株公開に打って出る.
この頃ニューヨーク・タイムスはベトナム秘密文書(ペンタゴン・ペーパーズ)の内容暴露の記事を発表,アイゼンハワー大統領時代から引き続いて国民を偽ってベトナム戦争を拡大してきたその内容はセンセーションを巻き起こす.ニクソン政権は直ちに機密保護法違反で記事の差し止めを命じる.
一方ポスト記者のベン・バグディキアンは旧友ダニエル・エルズバーグとの連絡に成功,ペンタゴン・ペーパーズの全文を入手,ポスト紙はその資料に基づく記事を作成し,掲載紙の発行許可をキャサリンに求める.株式公開直後のこの状況にキャサリンは決断に苦しむが….6_1 本作は報道の自由と国家のつく嘘を巡る極めてスリリングな政治ドラマである.その一方で,父と夫へのコンプレックスに苦しむ一女性の自己の確立と決意の物語でもある.
それを演じるメリル・ストリープの演技はどうだ.彼女が電話会議で掲載の最後の決断を下す場面,キャサリンの胸の動悸とあえぎが観客に聞こえてくる様である.メリル・ストリープの名演に敬礼するばかり.映画はラストシーンをニクソン政権の命運にかかわる別の事件のプロローグに繋げて終わるが,この演出も心憎い.4_3 この映画を現代の日本の新聞社は正視する勇気があるだろうか?某大新聞社の映画コラムで本作を取り上げているが,まるでエンタテインメント映画一般の取り上げ方で,我が身を省みる気配は皆無.さすがと寒心した次第であった.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:探偵はBARにいる3

日記:2019年3月某日
映画「探偵はBARにいる3」を見る.1_5
2017年.監督:吉田照幸.
出演:大泉洋(探偵),松田龍平(高田),北川景子(マリ),前田敦子(諏訪麗子),鈴木砂羽(モンロー),リリー・フランキー(北城仁也),田口トモロヲ(松尾),志尊淳(波留),マギー(源),安藤玉恵(峰子),正名僕蔵(教頭先生),篠井英介(フローラ),松重豊(相田).2_4
探偵の相棒・高田から,後輩の彼女・麗子が行方不明になったので探して欲しい旨の依頼が来る.麗子のバイト先を突き止めた探偵は,そのモデル事務所実は風俗店を訪れ麗子の名前を出す.
事務所はシラを切り,翌日探偵と高田はやくざに袋だたきにされるが,事務所の女所長マリに救われる.事件はやくざ2グループ間での覚醒剤争奪と絡む殺人事件に関連し,麗子はその目撃者であることが分かる.事務所のオーナー北城が一方のやくざの頭目であることが分かるが,探偵はマリに昔会った記憶があった….5_2
札幌を舞台とする人気シリーズ3作目.全2作に比べるとB級感が弱くなり薄味になった感じが否めない本作.探偵はバーにいると言ってもそのバーの映画における存在感もまた薄い.4_2
話は一応なるほどと思ったけれど,今までのやんちゃ感は何処に行ったのか.前田敦子や志尊淳が出ている割には話への絡み方がさほどでもない.マリの犯罪動機も(あれ?これはネタバレかな?)到底通用しない話で,受け容れ難い.
その場限りの娯楽作品という感じ.3_3
★☆(★5個が満点)
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2019/03/24

番外:独断的歌舞伎感想文 国立劇場小劇場「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿/積恋雪関扉」

日記:2019年3月某日
国立劇場小場で劇歌舞伎「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿/積恋雪関扉」を見る.20190317page1
真山青果=作/真山美保=演出.「元禄忠臣蔵 (げんろくちゅうしんぐら) 二幕五場 御浜御殿綱豊卿 (おはまごてんつなとよきょう)」.伊藤熹朔=美術,中嶋八郎=美術.第一幕 御浜御殿松の茶屋 第二幕 御浜御殿綱豊卿御座の間,同 入側お廊下,同 元の御座の間,同 御能舞台の背面」.宝田寿来=作.「積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと) 常磐津連中 国立劇場美術係=美術」 .『元禄忠臣蔵』.出演:徳川綱豊卿(中村扇雀),富森助右衛門(中村歌昇),中臈お喜世(中村虎之介),新井勘解由(中村又五郎),他.『積恋雪関扉』.出演:関守関兵衛実ハ大伴黒主(尾上菊之助),良峯少将宗貞(中村萬太郎),小野小町姫/傾城墨染実ハ小町桜の精(中村梅枝).
真山青果ものは苦手である.登場人物が互いの台詞に感動してテンションが高まっていく辺りは,あまり感心しない.更に,激昂した場面で台詞が聴き取り難くなるのは残念.とは言え扇雀はさすがの落ち着きと品位で見応えあり.息子の虎之助の中臈お喜世が美しい.
積恋雪関扉は菊之助初演の関守/黒主.この日の扮装は驚く程菊五郎の若い時に似ている(様な気がする).梅枝の小町/墨染は色気があって風情があって魅力的.この二人の踊りが面白く,長丁場をだれることなく鑑賞できた.
小劇場は2回目だが,この広さの方が歌舞伎を見るのには具合が良い.
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独断的映画感想文:運び屋

日記:2019年3月某日
TOHOシネマズ新宿で映画「運び屋」を見る.6
2018年.監督:クリント・イーストウッド.出演:クリント・イーストウッド(アール・ストーン),ブラッドリー・クーパー(コリン・ベイツ),ローレンス・フィッシュバーン(DEAエージェント),マイケル・ペーニャ(トレヴィノ),ダイアン・ウィースト(メアリー),タイッサ・ファーミガ(ジニー),アリソン・イーストウッド(アイリス),アンディ・ガルシア(レイトン).
アールは退役軍人,ユリの栽培に没頭し品評会でも賞を取るが家族は顧みず,妻メアリーとは離婚し結婚式をすっぽかした娘アイリスは12年間口をきいてくれない.2_3
ところがインターネット販売に押され彼のユリ園は破産,アールは孫ジニーの婚約式で出会った若者に誘われ,荷物の運搬を引き受ける.当初はその中身を知らなかったが,ドラッグと知っても臆さず運び続けるアール.ジニーの結婚式の2次会費用をプレゼントしたり,焼失した退役軍人会館の厨房の再建費用を負担したりする.
交通違反の履歴一つなく高齢の退役軍人であるアールは,ノーマークで大量のドラッグを陸送し続けるが,やがて麻薬取締局DEAのベイツ捜査官の手が迫ってくる….
アールという人物が元気で茶目っ気たっぷり,言いたいことを言い度胸もあるというその魅力がまず楽しい.親分のレイトンは,アールが好き勝手に道を変えたり寄り道したりすることを,却って足が付かないから良いと支持するが,現場の見張り役は気が気ではない.その見張り役も,アールの車につけた盗聴器を通じて流れてくるラジオ音楽とそれに合わせて鼻歌を歌うアールの機嫌良さに,思わず一緒に歌い出すというシーンが可笑しい.3_2
アールの最大の関心事は,DEAの追及でもなければ組織の締め付けでもなく,家族の絆の再構築にある.アールがベイツ捜査官と朝の珈琲を飲みながら話すシーン(ベイツはアールが目指すホシだとはまだ気付いていない),ベイツが家族の記念日を失念していたらしいのを知ったアールが,「家族が何よりも大切だ,自分はそれに失敗した」と説教する場面は印象的.メアリーとアールの和解のシーンも感銘的だ.4_1
ドラッグが犯罪という概念をある種飛び越えたところで,アールの人生・家族との絆のドラマが展開することが面白い.イーストウッド映画らしく音楽も相変わらず良い.エンドロールで流れる「年を忘れよう」という内容の唄も魅力的.とにかくイーストウッドを見るのが楽しい,見て損はなし.1_4
★★★★☆.
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番外:独断的歌舞伎感想文 3月大歌舞伎夜の部 盛綱陣屋/雷船頭/弁天娘女男白浪

日記:2019年3月某日
3月大歌舞伎夜の部を見る.Moritsuna
「一、近江源氏先陣館 盛綱陣屋(もりつなじんや)」.出演:佐々木盛綱(仁左衛門),篝火(雀右衛門),信楽太郎(錦之助),早瀬(孝太郎),四天王(廣太郎),四天王(種之助),四天王(米吉),四天王(千之助),高綱一子小四郎(勘太郎),盛綱一子小三郎(寺嶋眞秀),竹下孫八(錦吾),伊吹藤太(猿弥),古郡新左衛門(秀調),北條時政(歌六),微妙(秀太郎),和田兵衛秀盛(左團次).「二、雷船頭(かみなりせんどう)」.出演:女船頭(猿之助),雷(弘太郎).河竹黙阿弥 作.「三、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ) 浜松屋見世先より 稲瀬川勢揃いまで」.出演:弁天小僧菊之助(幸四郎),南郷力丸(猿弥),鳶頭清次(猿之助),忠信利平(亀鶴),赤星十三郎(笑也),浜松屋伜宗之助(鷹之資),番頭与九郎(橘三郎),狼の悪次郎(錦吾),浜松屋幸兵衛(友右衛門),日本駄右衛門(白鸚).Benten
盛綱陣屋は役者が揃った中で,仁左衛門が堂々として美しく,なおかつ心理描写が判り易く印象的だ.特に偽首を見てからの自身への決意と,小四郎・篝火に対する情けが素晴らしい.この仁左衛門に応答する切腹して手負いの小四郎を演じる勘太郎が,立派な芝居.役の小四郎も演ずる勘太郎もいたいけで感動する.Img_20190323_160238
雷船頭は軽妙な踊り,猿之助の色っぽい踊りと弘太郎の愛嬌ある踊りが楽しかった.
弁天娘女男白浪は幸四郎版で.名台詞の連続で軽快な展開.

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2019/03/22

独断的映画感想文:グリーンブック

日記:2019年3月某日
TOHOシネマズ新宿で映画「グリーンブック」を見る.0
2018年.監督:ピーター・ファレリー.
出演:ヴィゴ・モーテンセン(トニー・“リップ”・バレロンガ),マハーシャラ・アリ(ドクター・ドナルド・シャーリー),リンダ・カーデリーニ(ドロレス・バレロンガ),ディミテル・D・マリノフ(オレグ),マイク・ハットン(ジョージ).
1962年のアメリカ,トニーは腕の立つ用心棒兼運転手.勤めていたN.Y.のコパカバーナが改装閉店したため,新しい職を探す.紹介されたのは黒人ジャズ演奏家ドクター・シャーリーのツアー運転手,8週間かけて南部を演奏旅行するという.渋るトニーをシャーリーは好条件で説き伏せ,2人のロードムービー・友情物語が始まる.3_1
シャーリーは幼くして才能を見出され留学したピアニスト,しかしクラシック界では黒人は受け入れられないとジャズに転身し,今はカーネギー・ホールの階上に住む成功者だ.しかし彼には南部ツアーを成功させたい理由があった.2_2
旅は様々な軋轢を含みながら始まるが,二人は次第に理解し合いうち解けて行く.トニーが車の中でのお喋りや煙草をシャーリーに押さえ込まれるシーンや,シャーリーがトニーの勧めで初めてケンタッキーフライドチキンを食べるやり取りは傑作.トニーは粗野で下品なイタリア系だが,妻を愛し仕事を選ぶしっかり者だ(失業中にマフィア系の仕事を断るシーンがある).4
何より素晴らしいのは,トニーが音楽を理解し(さすがイタリア人)アーティストに敬意を抱くことだ.最初にシャーリーのトリオの演奏を聴いた時のトニーの表情はどうだろう.トニーはアーチストにとって契約がどういうものかを理解しているし,その為に自分がするべきことも心得ている.必ずスタンウェイピアノを確保するという契約を守らせるために,トニーは身体を張るのだ.こういうことが2人の信頼を育んでいく過程を,観客は確認することが出来る.5
音楽も素晴らしい.この時代のヒット曲が矢継ぎ早に流れる一方で,ツアーの公演ではシャーリー・トリオの素晴らしいジャズを聴くことが出来る.終盤のブルースハウスで,シャーリーがショパンのエチュードイ短調をド迫力で弾いた後,ブルースマン達と繰り広げるセッションは圧巻.映画の面白さ,感動を充分味わうことの出来る好編,お勧めです.1_3
★★★★☆.
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番外:独断的歌舞伎感想文 3月大歌舞伎昼の部 女鳴神/傀儡師/傾城反魂香

日記:2019年3月某日
3月大歌舞伎昼の部を見る.Onnanarukamimin-1
「一、女鳴神(おんななるかみ)龍王ヶ峰岩屋の場」.出演:鳴神尼(孝太郎),雲野絶間之助/佐久間玄蕃盛政(鴈治郎).「二、傀儡師(かいらいし)」.出演:傀儡師(幸四郎).近松門左衛門 作.「三、傾城反魂香(けいせいはんごんこう) 近江国高嶋館の場より土佐将監閑居の場まで〈高嶋館・竹藪〉」.出演:狩野四郎二郎元信(幸四郎),不破入道道犬(猿弥),銀杏の前(米吉),長谷部雲谷(松之助),不破伴左衛門(廣太郎),宮内卿の局(笑三郎),狩野雅楽之助(鴈治郎).「同 〈土佐将監閑居〉」.出演:浮世又平後に土佐又平光起(白鸚),女房おとく(猿之助),土佐修理之助(高麗蔵),百姓庄右衛門(寿猿),将監北の方(門之助),土佐将監光信(彌十郎),狩野雅楽之助(鴈治郎).
鳴神と逆転の女鳴神は,孝太郎の程よい色気と凄みが相俟って,なかなか面白かった.特に最後の鴈治郎の押し戻しが,狂言のバランスをまさに押し戻して素晴らしい.劇場に轟き渡る鴈治郎の大音声が印象的.
傾城反魂香は,初めて見た〈高嶋館・竹藪〉の場が,虎の活躍もあって印象に残ったが,結局姫君がどうなるのかは判らず終い.〈土佐将監閑居〉の場との繋がりも腑に落ちず.
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2019/03/08

独断的映画感想文:ショーシャンクの空に

日記:2019年3月某日
映画「ショーシャンクの空に」を見る.1_3
1994年.監督:フランク・ダラボン.
出演:ティム・ロビンス(アンディ),モーガン・フリーマン(レッド (エリス・ボイド)),ウィリアム・サドラー(ヘイウッド),ボブ・ガントン(ウォーデン・サミュエル・ノートン),ジェームズ・ホイットモア(ブルックス・ヘイトレン),クランシー・ブラウン(バイロン・ハドリー),ギル・ベローズ(トミー・ウィリアムズ),マーク・ロルストン(ボッグス・ダイアモンド).5_3
銀行副頭取だった青年:アンディは妻とその愛人殺しの容疑で逮捕され,無実を主張するが終身刑の判決を受け服役する.当初は人を寄せ付けなかったアンディだが,「調達屋」のレッドとはうち解け,やがて穏やかな人柄と税務会計能力を発揮して,囚人のみならず看守からも一目置かれる存在となる.3_3
その能力を認められ図書係となるが,所長は自分の汚職の会計係として彼を使う様になる….
不条理な状況下でも自分を見失わず,希望を持ち続けたアンディの物語.
自分の能力を発揮して洗濯係から図書係,所長の会計係と処遇を改善していったアンディだが,自分の無実を証明する手掛かりが見えた時,最も残酷な運命が待っていた.それを彼は如何に突破し得たのか.
6
「希望」とは何を礎とするのかを,改めて考えさせる映画である.
ティム・ロビンス・モーガン・フリーマンの演技が素晴らしい.刑務所暮らしの彼等の日常と時折訪れる希望と絶望が間断することなく表現されて,全体のテンポも良く最後まで一気に見ることが出来る.
所長役のボブ・ガントン,看守役のクランシー・ブラウン,老懲役囚のジェームズ・ホイットモアも印象に残った.
2_3
終盤,レッドが仮釈放後バクストンで樫の木を目指すシーンでの音楽が,心に染み入って美しい.映画らしい映画,文句なし.
★★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 2019年2月歌舞伎座昼の部 すし屋/暗闇の丑松/団子売

日記:2019年2月某日
二月大歌舞伎昼の部を見る.Kabukiza_1poster201902
「一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) すし屋」.初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言.出演:いがみの権太(松緑),弥助実は三位中将維盛(菊之助),娘お里(梅枝),若葉の内侍(新悟),梶原の臣(吉之丞),梶原の臣(男寅),梶原の臣(玉太郎),六代君(亀三郎),弥左衛門女房おくら(橘太郎),鮓屋弥左衛門(團蔵),梶原平三景時(芝翫).「二、暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)」.初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言.長谷川 伸 作,村上元三 演出.出演:暗闇の丑松(菊五郎),丑松女房お米(時蔵),浪人潮止当四郎(團蔵),料理人作公(男女蔵),料理人伝公(彦三郎),料理人巳之吉(坂東亀蔵),料理人祐次(松也),建具職人熊吉(萬太郎),建具職人八五郎(巳之助),杉屋遣手おくの(梅花),湯屋番頭甚太郎(橘太郎),お米の母お熊(橘三郎),杉屋妓夫三吉(片岡亀蔵),岡っ引常松(権十郎).四郎兵衛女房お今(東蔵),四郎兵衛(左團次).「三、団子売(だんごうり)」.出演:杵造(芝翫),お臼(孝太郎).Kabukiza_2poster201902
すし屋は時代歌舞伎を演じることの難しさ(特にいがみの権太が手負いとなってから幕となるまで)をつくづく感じた.松緑は渾身の芝居で,見応えあり.
暗闇の丑松は優れた狂言だが,菊五郎の丑松は暗さや尖ったところがあまりない丑松に見えた.いつか松緑がやる丑松を見てみたい.湯屋番の橘太郎が出色の出来で面白い.
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番外:独断的歌舞伎感想文 2019年2月歌舞伎座夜の部 熊谷陣屋/當年祝春駒/名月八幡祭

日記:2019年2月某日
二月大歌舞伎夜の部を見る.Kabukiza_201902_fff_f330feebf46a183
一、一谷嫩軍記-熊谷陣屋(くまがいじんや)」.出演:熊谷直実(吉右衛門),藤の方(雀右衛門),源義経(菊之助),亀井六郎(歌昇),片岡八郎(種之助),伊勢三郎(菊市郎),駿河次郎(菊史郎),梶原平次景高(吉之丞),堤軍次(又五郎),白毫弥陀六(歌六),相模(魁春).「二、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)」.出演:工藤祐経(梅玉),曽我五郎(左近),大磯の虎(米吉),化粧坂少将(梅丸),曽我十郎(錦之助),小林朝比奈(又五郎).「三、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)」.初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言.池田大伍 作,池田弥三郎 演出.出演:縮屋新助(松緑),芸者美代吉(玉三郎),魚惣(歌六),船頭長吉(松江),魚惣女房お竹(梅花),美代吉母およし(歌女之丞),藤岡慶十郎(梅玉),船頭三次(仁左衛門).
熊谷陣屋は当代吉右衛門の当たり役,その素晴らしい演技を堪能した.
特に最後の場面,我が子の首を凝視した後花道を去って行く,何とも言えない哀しさ・寂しさの中にやるべきことをしたという微かな笑みを含んだ姿が,感銘的.
名月八幡祭は仁左衛門と玉三郎のお似合いの好演,松緑の狂気にいたる律儀な田舎者の追い詰められ様が,共にはまり役で見応えあり.両方の芝居で歌六の演技がこの人ならではで印象に残った.
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独断的映画感想文:金子文子と朴烈

日記:2019年2月某日
映画「金子文子と朴烈」を見る.00_2
2017年.監督:イ・ジュンイク.
出演:イ・ジェフン(朴烈(パクヨル)),チェ・ヒソ(金子文子),キム・インウ(水野錬太郎),山野内扶(布施辰治),キム・ジュンハン(立松懐清),金守珍(牧野菊之助).1_2
東京で人力車夫として生計を立てる朴烈は無政府主義者,朝鮮人を中心とした無政府主義者の結社「不逞社」の一員である.彼等が根城にする岩崎おでん屋の女給・金子文子は,朴烈の詩「犬ころ」に共感,朴烈と同棲をする.
この頃朴烈は上海から爆裂弾の購入を企図,また自作の爆裂弾も試作するが,いずれも失敗に終わる.3_2
関東大震災が起こると,朝鮮人による井戸への毒薬投入・暴動の噂が流れ,自警団による朝鮮人殺しが横行,また警察による予防検束が行われる.
朴烈・金子文子も逮捕されるが,爆裂弾購入に関与した一員が朴烈の名前を出し,また二人が「やるなら皇太子(昭和天皇裕仁)である」との考えを示したため,両名は大逆罪で起訴されることになる.これは朝鮮人虐殺の批判をかわすための,内大臣の方針でもあった.

4_2
二人は死を賭して,大逆罪裁判での弁論にその主張を訴えることを選択する….
骨太の歴史映画である.
根拠も脆弱な大逆罪起訴にあえて身を投げ入れる両名,無為な死としか見えない行為は,彼等としては命をかけた闘いである.若いアナーキスト二人の,その闘いでの生命力溢れる描写が誠に印象的だ.5_2
特にイ・ジェフン演じる朴烈,チェ・ヒソ演じる,金子文子の魅力はどうだろう.文子は裁判判決時に未だ23歳,その政治主張はいかにも生硬だが,朴烈に対する愛情のひたむきさには心を打たれる.イ・ジェフンの朴烈も素晴らしい存在感.他にキム・ジュンハン演じる立松懐清等が印象的だった.
コンチネンタルタンゴを思わせる主題歌を始め音楽も素晴らしい.映画として見応え充分,お勧めである.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:夜明け(2019)

日記:2019年2月某日
映画「夜明け(2019)」を見る.1
2019.監督:広瀬奈々子.
出演:柳楽優弥(シンイチ/芦沢光),YOUNG DAIS(庄司大介),鈴木常吉(米山源太),堀内敬子(成田宏美),小林薫(涌井哲郎).3
映画の冒頭,夜明け前の鉄橋から花束を投げる青年.
翌朝,釣に行く途中の哲郎は川辺で倒れている青年を発見する.やもめ暮らしの哲郎はそのまま青年を連れて帰る.青年はシンイチと名乗るが,それは哲郎の8年前に交通事故死した一人息子と同じ名前だった.
哲郎は訳あり風のシンイチを家に引き取り,自分の木工所で木工を仕込むことにする.徐々に周囲に溶け込んでいくシンイチだが,シンイチには名前を偽らねばならない彼なりの事情があった.
哲郎は近々従業員の宏美と再婚同士の結婚式を控えている.哲郎はシンイチを息子同様に扱おうとするが,哲郎にも死んだ妻と息子との辛い過去があった….4
過去にトラウマを抱えた同士の疑似親子の試みがどうなるのかというヒューマンドラマ.
プロット自体には思いがけないものはない.予想される困難が出来し,予想される結末がやって来る.ラストシーンのシンイチのアップは,これから彼がどうするのか,観客に問いかけるかの様だ.
気弱で優しいシンイチを演じる柳楽優弥が見応えあり.表情も乏しく,常に囁くような声で喋るシンイチを演じて,次第にシンイチがどういう人間なのか,シンイチの苦しみは何なのかを観客に滲み込ませて行く.小林薫も矛盾ある哲郎を過不足無く演じ素敵.2
木工所の従業員が出入りする酒場のマスターのパワハラエピソードなど,描き方はもう一つ納得出来ないが,監督の今後に期待する.
★★★(★5個が満点)
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