独断的映画感想文:グリーンブック
日記:2019年3月某日
TOHOシネマズ新宿で映画「グリーンブック」を見る.

2018年.監督:ピーター・ファレリー.
出演:ヴィゴ・モーテンセン(トニー・“リップ”・バレロンガ),マハーシャラ・アリ(ドクター・ドナルド・シャーリー),リンダ・カーデリーニ(ドロレス・バレロンガ),ディミテル・D・マリノフ(オレグ),マイク・ハットン(ジョージ).
1962年のアメリカ,トニーは腕の立つ用心棒兼運転手.勤めていたN.Y.のコパカバーナが改装閉店したため,新しい職を探す.紹介されたのは黒人ジャズ演奏家ドクター・シャーリーのツアー運転手,8週間かけて南部を演奏旅行するという.渋るトニーをシャーリーは好条件で説き伏せ,2人のロードムービー・友情物語が始まる.

シャーリーは幼くして才能を見出され留学したピアニスト,しかしクラシック界では黒人は受け入れられないとジャズに転身し,今はカーネギー・ホールの階上に住む成功者だ.しかし彼には南部ツアーを成功させたい理由があった.

旅は様々な軋轢を含みながら始まるが,二人は次第に理解し合いうち解けて行く.トニーが車の中でのお喋りや煙草をシャーリーに押さえ込まれるシーンや,シャーリーがトニーの勧めで初めてケンタッキーフライドチキンを食べるやり取りは傑作.トニーは粗野で下品なイタリア系だが,妻を愛し仕事を選ぶしっかり者だ(失業中にマフィア系の仕事を断るシーンがある).

何より素晴らしいのは,トニーが音楽を理解し(さすがイタリア人)アーティストに敬意を抱くことだ.最初にシャーリーのトリオの演奏を聴いた時のトニーの表情はどうだろう.トニーはアーチストにとって契約がどういうものかを理解しているし,その為に自分がするべきことも心得ている.必ずスタンウェイピアノを確保するという契約を守らせるために,トニーは身体を張るのだ.こういうことが2人の信頼を育んでいく過程を,観客は確認することが出来る.

音楽も素晴らしい.この時代のヒット曲が矢継ぎ早に流れる一方で,ツアーの公演ではシャーリー・トリオの素晴らしいジャズを聴くことが出来る.終盤のブルースハウスで,シャーリーがショパンのエチュードイ短調をド迫力で弾いた後,ブルースマン達と繰り広げるセッションは圧巻.映画の面白さ,感動を充分味わうことの出来る好編,お勧めです.

★★★★☆.
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