独断的映画感想文:金子文子と朴烈
日記:2019年2月某日
映画「金子文子と朴烈」を見る.
2017年.監督:イ・ジュンイク.
出演:イ・ジェフン(朴烈(パクヨル)),チェ・ヒソ(金子文子),キム・インウ(水野錬太郎),山野内扶(布施辰治),キム・ジュンハン(立松懐清),金守珍(牧野菊之助).
東京で人力車夫として生計を立てる朴烈は無政府主義者,朝鮮人を中心とした無政府主義者の結社「不逞社」の一員である.彼等が根城にする岩崎おでん屋の女給・金子文子は,朴烈の詩「犬ころ」に共感,朴烈と同棲をする.
この頃朴烈は上海から爆裂弾の購入を企図,また自作の爆裂弾も試作するが,いずれも失敗に終わる.
関東大震災が起こると,朝鮮人による井戸への毒薬投入・暴動の噂が流れ,自警団による朝鮮人殺しが横行,また警察による予防検束が行われる.
朴烈・金子文子も逮捕されるが,爆裂弾購入に関与した一員が朴烈の名前を出し,また二人が「やるなら皇太子(昭和天皇裕仁)である」との考えを示したため,両名は大逆罪で起訴されることになる.これは朝鮮人虐殺の批判をかわすための,内大臣の方針でもあった.
二人は死を賭して,大逆罪裁判での弁論にその主張を訴えることを選択する….
骨太の歴史映画である.
根拠も脆弱な大逆罪起訴にあえて身を投げ入れる両名,無為な死としか見えない行為は,彼等としては命をかけた闘いである.若いアナーキスト二人の,その闘いでの生命力溢れる描写が誠に印象的だ.
特にイ・ジェフン演じる朴烈,チェ・ヒソ演じる,金子文子の魅力はどうだろう.文子は裁判判決時に未だ23歳,その政治主張はいかにも生硬だが,朴烈に対する愛情のひたむきさには心を打たれる.イ・ジェフンの朴烈も素晴らしい存在感.他にキム・ジュンハン演じる立松懐清等が印象的だった.
コンチネンタルタンゴを思わせる主題歌を始め音楽も素晴らしい.映画として見応え充分,お勧めである.
★★★★☆(★5個が満点)
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