番外・独断的歌舞伎感想文:4月大歌舞伎夜の部 黒塚
歌舞伎座で「4月大歌舞伎夜の部 黒塚」を幕見で見る.
猿翁十種の内.「黒塚(くろづか)」.出演:老女岩手実は安達原の鬼女(猿之助),山伏大和坊(種之助),山伏讃岐坊(鷹之資),強力太郎吾(猿弥),阿闍梨祐慶(錦之助).
安達ヶ原の鬼女伝説による能の「黒塚」が原曲,昭和14年初代市川猿翁初演の新舞踊劇.安達ヶ原に住む老女岩手は実は鬼女.一夜の宿を貸した阿闍梨に仏に帰依すれば救われると聞き,心の闇が晴れたとススキの原で踊る岩手.しかし禁を犯して奥の部屋を覗いた強力は死骸の山を見つけ,正体を悟られた岩手は鬼女の正体を現す.
猿之助始め出演者充実の舞台.猿之助の踊りはまことに美しい.ぎごちない老女の踊りがいつしか童女の様なやわらかな踊りとなる.月の影を踏みながら踊る場面は,月下の薄の原の舞台装置も美しく,魅了された.そして強力と出会って鬼女の正体を覗かせる瞬間の恐ろしさ・哀しさ,息をつくのも忘れて舞台に引き込まれる.
音楽も琴を交えた長唄連中が素晴らしく,終盤の大薩摩の連れ弾きも魅力的.1時間15分の踊りだが,一気に見た感じだ.
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