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2019年4月に作成された記事

2019/04/18

番外・独断的歌舞伎感想文:4月大歌舞伎夜の部 黒塚

日記:2019年4月某日57503272_3481878361932809_18918386003125

歌舞伎座で「4月大歌舞伎夜の部 黒塚」を幕見で見る.

猿翁十種の内.「黒塚(くろづか)」.出演:老女岩手実は安達原の鬼女(猿之助),山伏大和坊(種之助),山伏讃岐坊(鷹之資),強力太郎吾(猿弥),阿闍梨祐慶(錦之助).

安達ヶ原の鬼女伝説による能の「黒塚」が原曲,昭和14年初代市川猿翁初演の新舞踊劇.安達ヶ原に住む老女岩手は実は鬼女.一夜の宿を貸した阿闍梨に仏に帰依すれば救われると聞き,心の闇が晴れたとススキの原で踊る岩手.しかし禁を犯して奥の部屋を覗いた強力は死骸の山を見つけ,正体を悟られた岩手は鬼女の正体を現す.

猿之助始め出演者充実の舞台.猿之助の踊りはまことに美しい.ぎごちない老女の踊りがいつしか童女の様なやわらかな踊りとなる.月の影を踏みながら踊る場面は,月下の薄の原の舞台装置も美しく,魅了された.そして強力と出会って鬼女の正体を覗かせる瞬間の恐ろしさ・哀しさ,息をつくのも忘れて舞台に引き込まれる.

音楽も琴を交えた長唄連中が素晴らしく,終盤の大薩摩の連れ弾きも魅力的.1時間15分の踊りだが,一気に見た感じだ.

 

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2019/04/17

独断的映画感想文:ブラック・クランズマン

日記:2019年4月某日

映画「ブラック・クランズマン」を見る.1_12

2018年.監督:スパイク・リー.

出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン(ロン・ストールワース),アダム・ドライヴァー(フリップ・ジマーマン),ローラ・ハリアー(パトリス・デュマス),トファー・グレイス(デビッド・デューク),コーリー・ホーキンズ(クワメ・トゥーレ),ライアン・エッゴールド(ウォルター・ブリーチウェイ),ヤスペル・ペーコネン(フェリックス),アシュリー・アトキンソン(コニー),ポール・ウォルター・ハウザー(アイヴァンホー).2_11

1970年代前半,コロラド州コロラドスプリングス警察署初の黒人警官となったロンは,潜入捜査担当を命じられる.黒人大学生組織が開催したブラックパンサー党の演説会に潜入したロンは,主催者のローラと知り合う.

他方,ロンは新聞広告に掲載されていた過激な白人至上主義団体KKK<クー・クラックス・クラン>のメンバー募集に電話をかけ黒人差別をアピール,幹部から採用面接に来る様誘われる.ロンは同僚のユダヤ人刑事・フリップを説き伏せ,フリップが面接を受けまんまと会員になることに成功する.3_9

かくてロンは電話で,フリップは参加して,黒人とユダヤ人排撃のKKKの内部捜査を進めることになる.KKK内部の過激派フェリックス夫妻はローラ等黒人活動家への爆弾テロを計画,一方ロンはコロラドにやって来るKKKの幹部デュークの警護担当を命じられるが….

コメディと称しているが,スパイク・リー監督らしい尖った作品.終盤のスリリングな展開は結構面白いし,ロンとローラの今後が予断を許さないものであることを暗示するラストシーンも印象的.エピローグもアメリカの現状を反映したイタい映像で締めくくられ,スパイク・リー監督の現代を見る眼差しを感じる.5_6

ジョン・デヴィッド・ワシントンの父デンゼル・ワシントンは26年前,この監督で「マルコムX」を撮ったが,本作冒頭のブラックパンサー党・ストークリー・カーマイケルのアジテーションに,「マルコムX」のそれを思い出した.

本作は設定が奇想天外でそれ自体がコメディと思えるが,後味はいささか苦い映画,見て損はなし.

★★★☆(★5個が満点).

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2019/04/07

番外:独断的歌舞伎感想文 4月大歌舞伎 昼の部 平成代名残絵巻/新版歌祭文 座摩社・野崎村/寿栄藤末廣/御存 鈴ヶ森

日記:2019年4月某日
歌舞伎「4月大歌舞伎 昼の部 平成代名残絵巻/新版歌祭文 座摩社・野崎村/寿栄藤末廣/御存 鈴ヶ森」を見る.Kabukiza_201904_fff_1a1f449660a35dde674d
今井豊茂 作,藤間勘十郎 演出・振付.「一、平成代名残絵巻(おさまるみよなごりのえまき)」.出演:常盤御前(福助),藤原基房(権十郎),平宗盛(男女蔵),平知盛(巳之助),平徳子(壱太郎),遮那王(児太郎),左源太(男寅),平重衡(吉之丞),右源太(竹松),平時子(笑三郎),建春門院滋子(笑也),鎌田正近(市蔵),平宗清(彌十郎).「二、新版歌祭文(しんぱんうたざいもん) 座摩社 野崎村」.出演:〈座摩社〉油屋娘お染(雀右衛門),丁稚久松(錦之助),弥忠太(家橘),勘六(寿治郎),山伏法印(松之助),山家屋佐四郎(門之助),手代小助(又五郎).〈野崎村〉久作娘お光(時蔵),油屋娘お染(雀右衛門),丁稚久松(錦之助),手代小助(又五郎),百姓久作(歌六),後家お常(秀太郎).坂田藤十郎米寿記念.「三、寿栄藤末廣(さかえことほぐふじのすえひろ) 鶴亀」.出演:女帝(藤十郎),亀(猿之助),従者(歌昇),従者(壱太郎),従者(種之助),従者(米吉),従者(児太郎),従者(亀鶴),鶴(鴈治郎).四世鶴屋南北 作.「四、御存 鈴ヶ森 (ごぞんじすずがもり)」.出演:白井権八(菊五郎),東海の勘蔵(左團次),飛脚早助(又五郎),北海の熊六(楽善),幡随院長兵衛(吉右衛門).Tokubetsu1904_kichiemon
4月らしい豪華な顔合わせ.平成代名残絵巻と寿栄藤末廣は華麗な舞踊劇,それぞれ福助と藤十郎が元気で顔を出しているのが嬉しい.若手の踊りも綺麗で華やか.前者では巳之助・壱太郎の両花道での踊りが素敵,久しぶりに柴のぶちゃんも見られた.Tokubetsu1904_kikugoro
座摩社・野崎村はベテランの芝居,この2幕を通すことでお染・久松の野崎村に至る経過が分かる.また野崎村では,両花道に別れたお染の船・久松の駕籠が,駕籠かきの棒杖の拍子・竹本の連れ弾きに合わせ去って行く場面は面白い.
鈴ヶ森は大ベテランの芝居.菊五郎・吉右衛門の名台詞で昼の部を締める形となって,なかなかの見応え.
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2019/04/05

独断的映画感想文:娼年

日記:2019年4月某日
映画「娼年」を見る.1_9
2017年.監督:三浦大輔.
出演:松坂桃李(森中領),真飛聖(御堂静香),冨手麻妙(咲良),猪塚健太(平戸東),小柳友(田島進也),西岡徳馬(泉川),江波杏子(老女).
森中領は一流大学に入りながら大学生活に興味が持てず,バーテンダーのバイトに精を出す虚無的な生活を送っている.ふとしたことで知り合った御堂靜香に娼夫としてスカウトされ,セックステストを受けることになるが,相手は靜香の娘・咲良だった.2_8
咲良相手のセックスで辛うじて合格した領は,意外にも年上の顧客に好評で,様々な相手とのセックスに思わぬ興味を惹かれる様になる….
自分のアイデンティティを娼夫という場で見出す青年の物語.全編ほぼセックスシーンというポルノグラフと言って良い映画だが,松阪桃李の演技はそれなりに筋が通っていて映画を成立させている.真飛聖も魅力的.4_6
★★★(★5個が満点)

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独断的映画感想文:ナラタージュ

日記:2019年4月3日
映画「ナラタージュ」を見る.1_8 2017年.監督:行定勲.
出演:松本潤(葉山貴司),有村架純(工藤泉),坂口健太郎(小野怜二),瀬戸康史(宮沢慶太),市川実日子(葉山美雪),大西礼芳(山田志緒),古舘佑太郎(黒川博文),神岡実希(塚本柚子),駒木根隆介(金田伊織),金子大地(新藤慶).2_7 映画の冒頭は夜のオフィスで一人残業中の泉,外は雨である.雨を眺めて追憶にふける泉.
大学生時代の泉は,高校時代の恩師葉山の呼び出しを受け,所属していた演劇部の学園祭上演の助っ人に入ることになる.そこでやはり助っ人の一人小野怜二と出会うが,泉には葉山への断ちがたい思いがあった.大学生の泉は高校時代の葉山と自分の関係を追憶する….3_6 という訳で追憶されている本人が追憶にふけるというややこしい映画.高校卒業時に自分の思いを葉山に伝えた泉だが,葉山には別居中の妻があり泉の思いは受け止められなかった.泉はその思いを抱えたまま一旦小野怜二と付き合うが,やはり葉山のことを諦めきれない.学園祭劇の稽古が続く中泉の思いは揺れ動く….
なかなか結論の出ないぐだぐだの恋愛劇が延々と続く.140分はなんぼ何でも長すぎる.俳優は松潤の葉山先生がひどすぎて映画にならない.
舞台はどうも富山県のようだが,誰も富山弁らしい人がいないのでどこか架空の国の映画の様だ(その割にはクレジットに方言指導という人が書いてある.誰に何を指導したのか?).4_5 葉山先生が突然自分の私生活を生徒(泉)相手にしゃべったり,小野怜二の実家が突然舞台となったりするのに,泉の生い立ち・家庭状況は一切分からず,このバランスにも違和感を感じる.
共感できず映画に入り込めない.
★☆(★5個が満点)

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独断的映画感想文:ラ・ラ・ランド

日記:2019年4月某日
映画「ラ・ラ・ランド」を見る.1_10
2016年.監督:デイミアン・チャゼル.2_9
出演:ライアン・ゴズリング(セバスチャン(セブ)),エマ・ストーン(ミア),ジョン・レジェンド(キース),ローズマリー・デウィット(ローラ),ソノヤ・ミズノ(ケイトリン),J・K・シモンズ(ビル),フィン・ウィットロック(グレッグ).4_7
女優を目指すミアは,毎日オーディションを受けながらなかなか芽が出ない.或る日ピアノの音に惹かれて訪れた酒場で出会ったセブ,彼は自分の思い通りのジャズを客に聴かせる店を作る為,悪戦苦闘していた.
やがて恋に落ちた二人,ミアは一人芝居の自作自演に挑み,一方セブは不本意ながら商業主義的バンドのキーボードとして売れ始める.それぞれに挫折と将来への不安を抱く二人だったが….3_7
この映画は冒頭の,渋滞するハイウェイで見渡す限りの車のボンネット上で踊り狂う人々の,群舞のシーンにまず圧倒される.その後も狂騒的な群舞シーンが繰り返され,自分などはすっかり嫌気が差してくる頃に,ミアとセブの出会いと恋の物語がようやく始まるのだ.
ところが一旦ミアとセブの物語になると,映画はすっかり落ち着いて,歌はバラードになり,これにセブの美しいピアノ,ジャズコンボの演奏が寄り添っていく.この後は安心してドラマを楽しむことが出来る.しかもそのドラマはハッピーエンドではないほろ苦い人生のドラマだ.どうして感動しないでいられよう.5_4
楽曲としてはミアの歌う「オーディション」,ミアとセブが繰り返し歌う「シティ・オブ・スター」が素晴らしい.主演の二人は魅力充分,監督の前作「セッション」でジャズマンとしての圧倒的存在感を見せつけたJ・K・シモンズが,セブのジャズを否定する店主の役で顔を出すのはご愛敬.6_2
最後に出会った二人が,もしこうであったら別な人生が開けていただろうかという一瞬の夢を見るエピローグが,切なくて哀しい.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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2019/04/02

独断的映画感想文:天国でまた会おう

渋谷ユーロスペースで映画「天国でまた会おう」を見る.1_7 2017年.監督:アルベール・デュポンテル.原作:ピエール・ルメートル.
出演:ナウエル・ペレス・ビスカヤール(エドゥアール・ペリクール),アルベール・デュポンテル(アルベール・マイヤール),ロラン・ラフィット(プラデル),ニエル・アレストリュプ(マルセル・ペリクール),メラニー・ティエリー(ポリーヌ),エロイーズ・バルステ(ルイーズ),ジル・ガストン=ドレフュス(市長),フィリップ・ウシャン(区長),アンドレ・マルコン(憲兵),ミシェル・ヴュイエルモーズ(ジョゼフ・メルラン),キヤン・コジャンディ(デュプレ).4_4 1920年モロッコのフランス軍憲兵隊.逮捕されたアルベールの長い陳述が始まる.
1918年第1次大戦の西部戦線,休戦の指示を握りつぶしたプラデル中尉は部下に突撃を命令,アルベールはプラデルの悪事の証拠を目撃したため砲弾の穴に突き落とされ生き埋めになる.年若い戦友のエドゥアールに命を救われるが,エドゥアールは顔に重傷を負う.
野戦病院で意識を取り戻したエドゥアールは自身の顔の損傷を知り,また厳格な父に自分の画才を認められず確執があったため,自分は戦死したことにしてくれるようアルベールに懇願する.アルベールは書類をすり替え,エドゥアールは別人として生きることになる.3_5 二人はパリに戻ったが世間は復員者に冷たく,アルベールは経理係の仕事に復職できずサンドイッチマンとして糊口をしのぐ.エドゥアールは自らデザインした仮面をかぶることで自信を取り戻し,戦死者記念塔設立のデザインを請け負い,制作はしないで逃げるという詐欺で,国家に仕返しすることを考える.一方政界の実力者でもあるエドゥアールの父は,息子の死を悼み自分の街に戦死者記念塔を設立しようとするが,その娘婿にプラデル中尉が潜り込んでいた….
日本でも人気の推理小説作家ルメートル原作の映画,なかなか複雑なプロットだがテンポ良く映画は進む.
二人の戦争への思い,エドゥアールの父との確執,アルベールのプラデルへの復讐がもつれ合って進行するが,エドゥアールのバラエティ豊かな仮面の着用や,只一人エドゥアールの発する音声を言語に通訳できる少女ルイーズの登場など,物語は豊かな展開を見せる.2_6 敵役のプラデルが詐欺師としての二人を次第に追い詰めていく過程や,終盤の悲劇的な経過は見応えあり.最後のどんでん返しは,ルメートルならではと思わせる.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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