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2019/05/17

独断的映画感想文:ガルヴェストン

日記:2019年5月某日
新宿のシネマカリテで映画「ガルヴェストン」を見る.1_14
2018年.監督:メラニー・ロラン.
出演:ベン・フォスター(ロイ),エル・ファニング(ロッキー),ロバート・アラマヨ(トレイ),マリア・バルベルデ(カルメン),CK・マクファーランド(ナンシー),ボー・ブリッジス(スタン).5_8
故郷を捨て裏社会で生きてきたロイがその日,ボスの勧めで行った病院で見せられたのは,まるで雪が舞うように白くモヤがかかった自分の肺のレントゲン写真だった.命の終りが近いことを悟った彼は「どうせクソみたいな人生だ.死ぬならそれも仕方ない」そう自分に言い聞かせる.だが死への恐怖は彼を追い込み,苛立たせてゆく.
その夜いつものようにボスに命じられるまま向かった“仕事先”で,ロイは突然何者かに襲われる.組織に切り捨てられたことを知った彼は,とっさに相手を撃ち殺し,その場に囚われていた若い女を連れて逃亡する.彼女の名前はロッキー.家をとびだし,行くあてもなく身体を売って生活していたという.組織は確実に2人を追ってくるだろう.全てを失い孤独な平穏を願いながらも女を見捨てることのできないロイと,他に頼る者もなく孤独な未来を恐れるロッキー.傷だらけの2人の,果てなき逃避行が幕を開ける(公式サイトのストーリー).4_11
映画の冒頭は1988年ハリケーン下のニューオーリンズ.逃亡先に選んだのはそこから西へ600キロ程離れたガルヴェストン,ヒューストンの沖に浮かぶ島の街だ.
ところがロッキーはその手前のオレンジ郡で自宅に立ち寄る様ロイに依頼,継父を撃って幼い妹を連れ飛び出してくる.いずれも追われる身となった2人は,ガルヴェストンのモーテルでようやく落ち着いた日々を迎えるが….
希望と絶望,諦念に彩られた2人の僅かなやすらぎの日々.観客はしかしこの物語の結末がどうなるか,息を呑んで見守っている.
悲劇的な展開は予想通り,しかし2つのどんでん返しが映画の最後に控えていた.20年後再びハリケーンに見舞われるニューオーリンズ,哀切だが癒されるエピローグが印象に残る.6_5
主演二人が素晴らしい.ベン・フォスターはいかにもやくざな暮らしをしてきた男らしく,しかし死を前に悪ぶらないロイを好演.エル・ファニングは希望と絶望に翻弄される若いロッキーを,透明感ある美貌で演じる.モーテルの女主人のCK・マクファーランドも素敵.
監督は「イングロリアス・バスターズ」,「オーケストラ!」のヒロインを演じたメラニー・ロラン.才女ですな.
★★★★(★5個が満点)

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