独断的映画感想文:ふきげんな過去
日記:2019年5月某日
映画「ふきげんな過去」を見る.
2016年.監督:前田司郎.
出演:小泉今日子(未来子),二階堂ふみ(果子),高良健吾(康則),山田望叶(カナ),兵藤公美(サトエ),梅沢昌代(サチ),板尾創路(タイチ).
果子は不機嫌な日常を過ごす高校生.今日も「海苔の本田屋の嫁」が子供をワニに喰われたと主張する運河を眺め暮らす.母サトエは年の離れた新生児の妹を育てているが,未だ名前すらつけていない.父は右手の指2本が欠損していて,無為な生活を過ごしている.
一家は「エジプト風マメ料理」の飲み屋を営んでいる.ところがそこへ18年前に死んだ筈の伯母・未来子が突然姿を現す.爆弾作りに精を出し,爆破事件を起こして姿をくらました伯母は既に死んだ筈で戸籍もない.父の指も爆弾で失ったものらしい.
未来子はその日から果子の部屋に同居して暮らし始め,果子の苛々は頂点に達するが,未来子はある晩,爆弾に必要な硝石を取りに行こうと果子を誘う….
退屈な現在に苛立つ果子に訪れた,突然の新しい未来が巻き起こす一夏の出来事.この一家のマメの皮を剥きながらの会話がとにかく違和感だらけで,そこに苛々で弾けそうな果子が加わる画面が基本的に面白い.
死んだ筈でしかもなお爆弾作りを続ける(殆ど楽しんでいると言って良い)未来子の登場で,映画は更に突き抜ける(こういうシチュエーションの小泉今日子ははまり役である).未来子,果子,カナ(果子の従姉妹)が,硝石取りに夜の運河を漕ぎ下っていくシーンはなかなか美しい.
映画の最後,「海苔の本田屋の嫁」が子供をワニに喰われた件の思いがけない展開が秀逸,そのシーンの果子の表情が印象的だ.未来の上から目線と過去の不機嫌が映画のテーマらしいが,面白い映画.
★★★☆(★5個が満点)
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