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2019年6月に作成された記事

2019/06/25

独断的映画感想文:友罪

日記:2019年6月25日
映画「友罪」を見る.
2018年.監督・脚本:瀬々敬久.0_20190626215401
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出演:益田純一(生田斗真),鈴木秀人 / 青柳健太郎(瑛太),藤沢美代子(夏帆),杉本清美(山本美月),白石弥生(富田靖子),清水(奥野瑛太),内海(飯田芳),川島社長(小市慢太郎),村上院長(矢島健一),バーテン・小杉(青木崇高),唐木達也(忍成修吾),山内智子(西田尚美),飯島武士(村上淳),飯島麻奈美(片岡礼子),山内正人(石田法嗣),千尋(北浦愛),桜井さちこ(坂井真紀),須藤編集長(古舘寛治),白石唯(蒔田彩珠),篠塚朝子(渡辺真起子),篠塚(光石研(特別出演)),山内修司(佐藤浩市).2_20190626215401
埼玉県のとある町工場,鈴木と益田が見習採用される.二人とも先輩の清水と内海の住む独身寮に住むことになる.
益田は工場勤務は初めて,元は週刊誌の記者だった.鈴木は資格も持ち工場勤めには馴れている風だったが,殆ど誰とも話さず心も開かない.折りしも近くの街で小学生が殺される事件が起こる.ネットには,犯人はかって小学生連続殺人事件を起こした青柳ではないかとの噂が載り,益田は元妻で週刊誌記者の清美からその情報を得る.3_20190626215401
益田はかって自身が担当した青柳の事件の資料から,青柳は鈴木ではないかとの疑いを抱く.一方鈴木は,男に絡まれていた美代子を助け,付き合うようになる.同じ街のタクシー運転手・山内は,息子がかって無免許運転で3人を死亡させる事故を起こした事件の重荷を背負って生きている.かって少年院で青柳を担当していた白石弥生は,退院以来行方が分からなかった青柳から,会いたいとの連絡を受ける….
益田,鈴木(青柳),美代子,山内,白石がそれぞれ抱える問題を交錯させながら,贖罪・更正・家族というキーワードに沿って展開する群像劇.シリアスなテーマを扱っている力作,緊張感高く間断することのない展開は見応え充分.
但し群像劇としてはバランスが偏っていて,白石弥生と娘のエピソードは全体のテーマに沿ってはいるが蛇足の感を免れ得ない.またエピローグで各エピソードがそれなりの落着となる予兆が示されるが,それまでの悲惨で救いのない物語は,なかなか辛いものがある.4_20190626215401
俳優では瑛太がこの人にしかできない怪演,生田斗真も熱演している.脇を固める俳優達もベテラン揃いで,安心してドラマを追うことができる.
★★★☆(★5個が満点)
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2019/06/23

番外:独断的歌舞伎感想文:6月大歌舞伎 昼の部 壽式三番叟/女車引/石切梶原/封印切り

日記:2019年6月某日
歌舞伎座で「6月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_1906_h_078892e47b8b1d9b7fb605e2
「一、寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう) 松本幸四郎・尾上松也 三番叟相勤め申し候」.出演:三番叟(幸四郎),三番叟(松也),千歳(松江),翁(東蔵).「二、女車引(おんなくるまびき)」.出演:千代(魁春),八重(児太郎),春(雀右衛門).「三、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり) 鶴ヶ岡八幡社頭の場」.出演:梶原平三景時(吉右衛門),大庭三郎(又五郎),俣野五郎(歌昇),梢(米吉),大名山口十郎(桂三),同 川島八平(松江),同 岡崎将監(種之助),同 森村兵衛(鷹之資),囚人剣菱呑助(吉之丞),奴萬平(錦之助),青貝師六郎太夫(歌六).「四、恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい) 封印切」.出演:亀屋忠兵衛(仁左衛門),傾城梅川(孝太郎),丹波屋八右衛門(愛之助),阿波の大尽(由次郎),槌屋治右衛門(彌十郎),井筒屋おえん(秀太郎).
式三番叟は男性の,女車引は女性のそれぞれ短い踊り.松也・幸四郎の三番叟が豪快で素晴らしい.
石切梶原は吉右衛門の定番を堪能,俣野五郎をピシッと決めつける貫禄や,六郎太夫・梢親子に対する情愛など,いちいち決まるべきところが決まって気持ちが良い.
仁左衛門の封印義理は東京では30年ぶりの出演だそうで,無論見るのは初めて.忠兵衛のおかしみに満ちた登場シーンから,八右衛門の執拗な挑発に耐えかねて封印切りに至る場面まで,目が離せない.静まりかえった場内に忠兵衛の懐から落ちる小判の音が響く,緊張感に溢れたシーンが素敵.見応えある昼の部だった.

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2019/06/18

独断的映画感想文:ちはやふる 結び

日記:2019年6月某日
映画「ちはやふる 結び」を見る.1_20190625115901
2018年.監督:小泉徳宏.
出演:広瀬すず(綾瀬千早),野村周平(真島太一),真剣佑(綿谷新),上白石萌音(大江奏),矢本悠馬(西田優征),森永悠希(駒野勉),清水尋也(須藤暁人),優希美青(花野菫),佐野勇斗(筑波秋博),清原果耶(我妻伊織),松岡茉優(若宮詩暢),賀来賢人(周防久志),松田美由紀(宮内妙子),國村隼(原田秀雄).4_20190625115901
瑞澤高校カルタ部は強豪校ながら部員は高3のみ,千早,太一等は新入生獲得に奔走する.しかし入部した筑波は実力ありながら人と折り合えない性格,菫は周平に憧れただけの経験ゼロ.
新入生指導に悪戦苦闘しながら辛くも都大会を突破した瑞澤高校.しかし太一は進学のため部を辞める.一方太一,千早の幼馴染み新は,千早達と戦うべくカルタ部を立ち上げ,全国大会に乗り込んできた.太一を魅了する名人・周防と最年少クィーン・詩暢も絡みながら始まる全国大会….5_20190625115901
カルタという分野の部活青春映画.部活青春映画は侮れない.3_20190625115901
しかも汗臭い男子だらけの野球なんぞと違って,カルタ部は男女混合.幼馴染み,高校,カルタ部,闘い,恋心というキーワードが映画を飛び交って,目が眩むようだ.原作が良く出来ているのだろうが,百人一首に関する知識の注入や,カルタ競技の紹介,カルタ部の練習風景等がバランス良く描かれ,その中で進行する千早達のドラマが程よい緊張感で進行する.
最終局面,全国大会での戦いの結末には感動した.エンタテインメントとして上質な映画,俳優では広瀬すず,松岡茉優が素晴らしい.2_20190625115901
★★★☆(★5個が満点)
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2019/06/16

番外:独断的歌舞伎感想文 歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」

日記:2019年6月某日
歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」を見る.201906kabukikanshoukyoushituomote
福内鬼外(平賀源内)作.「神霊矢口渡 (しんれいやぐちのわたし)  一幕 国立劇場美術係=美術 頓兵衛住家の場」.主な配役:渡し守頓兵衛(中村鴈治郎),娘お舟(中村壱太郎),船頭八助(中村寿治郎),傾城うてな(上村吉太朗),新田義峰(中村虎之介),下男六蔵(中村亀鶴).
神霊矢口渡の頓兵衛・お舟は,以前歌六・芝雀,橋吾・柴のぶで見た.今回は鴈治郎・壱太郎.
今回の趣向である人形振りは,無表情にきっと正面を向いた壱太郎の顔が情念を湛え,まことに魅力的.ここからクライマックスまで魅了された.
解説・歌舞伎のみかたは中村虎之助担当.Img_20190616_145429_burst001_cover

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2019/06/11

独断的映画感想文:誰もがそれを知っている

日記:2019年6月某日
ヒューマントラストシネマ有楽町で映画「誰もがそれを知っている」を見る.1_20
2018年.監督:アスガー・ファルハディ.
出演:ハビエル・バルデム(パコ),ペネロペ・クルス(ラウラ),リカルド・ダリン(アレハンドロ),エドゥアルド・フェルナンデス(フェルナンド),バルバラ・レニー(ベア),インマ・クエスタ(アナ),エルビラ・ミンゲス(マリアナ),ラモン・バレア(アントニオ),カルラ・カンプラ(イレーネ),サラ・サラモ(ロシオ).4_17
妹アナの結婚式に,アルゼンチンに住んでいる姉ラウラが娘・イレーネ,その弟・ディアゴと共にスペインの実家に帰ってくる.かっての恋人パコと再会するが,パコはラウラから買い取った土地を立派なワイン農場に育て上げ,美しい妻と共に暮らしている.
結婚式の晩,16歳のイレーネは奔放にはしゃぎ廻っていたが,急に眠くなったと言って寝室で休むことに.その後雨の中停電が起こるが,パコが自家発電装置を担ぎ込んで披露宴は無事終わる.ところがそのさなかにイレーネは寝室から忽然と姿を消す.更にラウラの携帯に犯人からの脅迫が届き,ベッドには近年の少女誘拐殺人事件の切り抜きが置かれていた.6_8
ラウラは警察に通報する決断がつかず,アルゼンチンから急遽夫・アレハンドロがやって来る.犯人からは続いて巨額の身代金の要求が届く.パコは時間稼ぎのため,自身の農場を売る商談を共同経営者に持ちかけるが,ラウラは現実にパコ以外に金を出せる者はいない状況に,ある決意をする….5_13  
思いがけない誘拐事件に直面した家族の状況.
父アントニオは博打で失敗し,土地をかっての使用人に売る羽目になったらしい.パコも元来はアントニオの使用人の息子だった.兄フェルナンドは店を開いているが,ローンを抱えて苦しい家計.アレハンドロは実業家と称しているが,この2年間失業している.何故同じ部屋にいた幼児ディアゴではなく,イレーネが誘拐されたのか.映画はこの様な事情を次々に明らかにし,物語は重苦しい緊張感の中進行する.3_17  
俳優はいずれも良いが,ハビエル・バルデム,ペネロペ・クルス,リカルド・ダリンの3名が圧倒的な存在感.ハビエル・バルデムは思わぬ運命に直面した男の苦悩を淡々と演じる.映画の題名は,登場人物の最大の秘密を,当事者以外のみんなが知っているという皮肉な状況を指している.ラストシーンで,かすかに微笑んで横たわるパコのシーンが印象的だ.
映像も美しい重厚なドラマ,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2019/06/07

独断的映画感想文:ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

日記:2019年6月某日
映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」を見る.1_19
2017年.監督:ジョー・ライト.
出演:ゲイリー・オールドマン(ウィンストン・チャーチル),クリスティン・スコット・トーマス(クレメンティーン・チャーチル),リリー・ジェームズ(エリザベス・レイトン),スティーヴン・ディレイン(ハリファックス子爵),ロナルド・ピックアップ(ネヴィル・チェンバレン),ベン・メンデルソーン(国王ジョージ6世).3_16
多少ネタバレがあります,注意.
1940年5月10日,ナチスドイツに対する北欧での闘いで劣勢となり支持を失った英首相・チェンバレンは,後任の首相にチャーチルを指名する.チャーチルは労働党も参加する5名からなる戦時内閣を組織,しかし保守党から参加のチェンバレン,ハリファクスはいずれも,対独徹底抗戦を主張するチャーチルに反対していた.
この日ドイツはオランダ・ベルギーに侵攻,ついでフランス国境を突破する.チャーチルは国会とラジオ演説で,対仏支援を行い勝利を目指すことを強調するが,日を追って戦況は悪化,フランス派遣の英国部隊40万はダンケルクに追い詰められる.チャーチルはダンケルクを支援するため,カレーの守備隊4000人に徹底抗戦を命令すると同時に,ダンケルクの将兵の撤退を模索するが,ドイツ制空権下の救出作戦の目途は立たない.2_18
ここに至ってドイツの英国侵攻の怖れが強まり,国王のカナダ亡命が計画される事態となる.ハリファクスは対独和平交渉の採用をチャーチルに迫り,遂にチャーチルはハリファクスに交渉仲介国イタリアとの接触を認めるが….4_16  
1940年5月9日から5月27日に至る,チャーチルの活動を追った伝記ドラマ.英国とチャーチルがぎりぎりまで追い詰められたこの時(原題はDARKEST HOUR),チャーチルが如何に勇気を奮い起こし自信を回復することができたか,を記述する.
チャーチルを演じたゲイリー・オールドマンが素晴らしい.辻一弘がアカデミー賞を獲得した特殊メイクで全く相貌の変わったオールドマンが,チャーチルの変転する心理を演じて見応えあり.またチャーチルを叱咤激励する夫人・クレメンティンを演じたクリスティン・スコット・トーマスも存在感があって素敵.5_12
チャーチルの矛盾に満ちた人物像は面白いが,彼が地下鉄で人々と意見を交わすという筋書は,いささか嘘くさかった.但し,戦時内閣で孤立したチャーチルが,閣外閣僚と議会を相手に熱弁をふるい圧倒的支持を獲得するラストシーンは迫力あり.見て損はない.
★★★★(★5個が満点)
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2019/06/04

独断的映画感想文:主戦場

日記:2019年6月某日
渋谷のシアター・イメージフォーラムで映画「主戦場」を見る.1_18

2018年.監督・製作・脚本・撮影・編集・ナレーション:ミキ・デザキ.製作:モモコ・ハタ.音楽:マサタカ・オダカ.
ユーチューバー出身の監督が,日韓のみならずアメリカをも巻き込んで進む慰安婦問題の論争を描く,長編ドキュメンタリー.登場人物は日本の右派・左派(こういう言い方は好きではないが,この映画の扱いに沿って便宜的にこう呼ぶ)の各論客・運動家・元日本軍兵士,韓国の元慰安婦の娘・支援者・学者,アメリカの元慰安婦支援者・その反対派等々.
こういう人々へのインタビューと街頭インタビューやニュース映像,新聞や公文書のコピーが軽快なテンポで次々に画面に映し出される.映画は監督が当初抱いた疑問に沿って,元在特会の山本優美子氏のインタビューからスタート,その主張の展開や反対派側からの反論という具合に,次はそこが知りたいというポイントが小気味良く映像として現れる.
監督は最終的にはこの問題が,安倍政権とその背後にある日本会議に関わることを示唆して映画を終え,自身の懸念するところを明らかにする.そういう意味ではこの映画は「公平な立場」という立ち位置にないことはあきらかだ.3_15

この映画については,5月30日に右派論客7名(櫻井よしこ氏,ケント・ギルバート氏,トニー・マラーノ氏,加瀬英明氏,山本優美子氏,藤岡信勝氏,藤木俊一氏)が抗議声明を出すといった「場外乱闘」の状況が発生しているが,右派論客の主張のみが揶揄されたり切り取りされたりといった印象は基本的にない.4_15
慰安婦問題は重大な問題であると同時に,極めて政治的であり,感情を伴うものであり,倫理と差別とに関わる問題である.そのことはこの映画のインタビューを通じ自ずから明らかになる.この映画の魅力は,そういう力を持ったドキュメントであることに尽きるであろう.単調だが力強い音楽も素晴らしい.ドキュメント映画として充分な見応えあり. 
★★★★(★5個が満点).
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