独断的映画感想文:誰もがそれを知っている
日記:2019年6月某日
ヒューマントラストシネマ有楽町で映画「誰もがそれを知っている」を見る.
2018年.監督:アスガー・ファルハディ.
出演:ハビエル・バルデム(パコ),ペネロペ・クルス(ラウラ),リカルド・ダリン(アレハンドロ),エドゥアルド・フェルナンデス(フェルナンド),バルバラ・レニー(ベア),インマ・クエスタ(アナ),エルビラ・ミンゲス(マリアナ),ラモン・バレア(アントニオ),カルラ・カンプラ(イレーネ),サラ・サラモ(ロシオ).
妹アナの結婚式に,アルゼンチンに住んでいる姉ラウラが娘・イレーネ,その弟・ディアゴと共にスペインの実家に帰ってくる.かっての恋人パコと再会するが,パコはラウラから買い取った土地を立派なワイン農場に育て上げ,美しい妻と共に暮らしている.
結婚式の晩,16歳のイレーネは奔放にはしゃぎ廻っていたが,急に眠くなったと言って寝室で休むことに.その後雨の中停電が起こるが,パコが自家発電装置を担ぎ込んで披露宴は無事終わる.ところがそのさなかにイレーネは寝室から忽然と姿を消す.更にラウラの携帯に犯人からの脅迫が届き,ベッドには近年の少女誘拐殺人事件の切り抜きが置かれていた.
ラウラは警察に通報する決断がつかず,アルゼンチンから急遽夫・アレハンドロがやって来る.犯人からは続いて巨額の身代金の要求が届く.パコは時間稼ぎのため,自身の農場を売る商談を共同経営者に持ちかけるが,ラウラは現実にパコ以外に金を出せる者はいない状況に,ある決意をする….
思いがけない誘拐事件に直面した家族の状況.
父アントニオは博打で失敗し,土地をかっての使用人に売る羽目になったらしい.パコも元来はアントニオの使用人の息子だった.兄フェルナンドは店を開いているが,ローンを抱えて苦しい家計.アレハンドロは実業家と称しているが,この2年間失業している.何故同じ部屋にいた幼児ディアゴではなく,イレーネが誘拐されたのか.映画はこの様な事情を次々に明らかにし,物語は重苦しい緊張感の中進行する.
俳優はいずれも良いが,ハビエル・バルデム,ペネロペ・クルス,リカルド・ダリンの3名が圧倒的な存在感.ハビエル・バルデムは思わぬ運命に直面した男の苦悩を淡々と演じる.映画の題名は,登場人物の最大の秘密を,当事者以外のみんなが知っているという皮肉な状況を指している.ラストシーンで,かすかに微笑んで横たわるパコのシーンが印象的だ.
映像も美しい重厚なドラマ,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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