« 2019年6月 | トップページ | 2019年8月 »

2019年7月に作成された記事

2019/07/28

独断的映画感想文:新聞記者

日記:2019年7月某日
UPLINK吉祥寺で映画「新聞記者」を見る.1_20190728203501
2019年.監督:藤井道人.製作:河村光庸.
出演:シム・ウンギョン(吉岡エリカ),松坂桃李(杉原拓海),本田翼(杉原奈津実),岡山天音(倉持大輔),郭智博(関戸保),長田成哉(河合真人),宮野陽名(神崎千佳),高橋努(都築亮一),西田尚美(神崎伸子),高橋和也(神崎俊尚),北村有起哉(陣野和正),田中哲司(多田智也).3_20190728203401
韓国人の母と日本人の父の間に生まれ,アメリカで育った東都新聞記者:吉岡エリカ.父も新聞記者だったが,誤報の責任を取って自殺したとされている.
新聞社に送られてきた匿名の資料は,特区制度を利用して内閣府主導で医療大学を作るという計画.エリカはキャップの陣野の指示で取材を開始する.2_20190728203401
一方内閣調査室に勤める杉原拓海は,外務省出身.上司・神崎は公文書改竄の責任を負って左遷,部下の杉原も内調に異動となった.日々の仕事は,政府に都合の悪い案件へのフェイク情報の素材を作製したり,それをSNS上に流したりする汚れ仕事.
杉原が久しぶりに神崎の誘いで会食した直後,神崎は自殺する.神崎が匿名資料の送り主ではないかとみていたエリカは,葬儀の会場で杉原と出会うが….
東京新聞の望月記者の著作を原案とした映画,原著作は未読.4_20190728203401
キャッチには「内閣官房VS女性記者」「官邸とメディアの裏側を描く」などとあるが,実際には政権の動きは描かれず,その意を酌んだ内調と新聞記者の闘いが主題である.
資料の送り主が誰かという謎解きや,杉原の協力を得て最新資料を取得する場面のサスペンス,自身のキャリアや家族という弱点を突かれ個々に潰されていく官僚の悲哀等は,それなりに見応えあり.
主演の二人は好演,脇を固めた北村有起哉,田中哲司等も良い.エンディングテーマのの「Where have you gone」も美しかった.5_20190728203401
しかし政権への批判的切り口としては,内調レベルの物語ではいささか物足りない.むしろ半世紀程昔の事件でも良いから,(アメリカで)公開された資料に基づき実名を挙げた政治ドラマをしっかり製作した方が,面白いのではないか.
★★★☆(★5個が満点)

にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2019/07/21

番外:独断的歌舞伎感想文 7月大歌舞伎夜の部 通し狂言星合世十三團

日記:2019年7月某日
歌舞伎座で「7月大歌舞伎 夜の部」を見る.July_special_poster
竹田出雲 作,三好松洛 作,並木千柳 作,織田紘二 補綴・演出,石川耕士 補綴・演出,川崎哲男 補綴・演出,藤間勘十郎 補綴・演出:「通し狂言星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん). 成田千本桜. 市川海老蔵十三役早替り宙乗り相勤め申し候. 発端 福原平家御殿跡の場.序幕 第一場 大内の場,第二場 堀川御所の場,第三場 同 塀外の場.二幕目 第一場 伏見稲荷鳥居前の場,第二場 渡海屋の場,第三場 同 奥座敷の場,第四場 大物浦の場.三幕目 第一場 北嵯峨庵室の場,第二場 下市村椎の木の場,第三場 同 竹薮小金吾討死の場,第四場 同 釣瓶鮨屋の場.大詰 第一場 吉野山の場 第二場 川連法眼館の場」.
出演:左大臣藤原朝方,卿の君,川越太郎,武蔵坊弁慶,渡海屋銀平実は新中納言知盛,入江丹蔵,主馬小金吾,いがみの権太,鮨屋弥左衛門,弥助実は三位中将維盛,佐藤忠信,佐藤忠信実は源九郎狐 ,横川覚範実は能登守教,以上13役 海老蔵),静御前(雀右衛門),相模五郎(右團次),若葉の内侍/小せん(児太郎),伊勢三郎(男寅),亀井六郎(鷹之資),お里(梅丸),鷲尾十郎(市川福太郎),土佐坊昌俊(新十郎),逸見藤太(猿四郎),横川覚範(新蔵),片岡八郎(廣松),駿河次郎(九團次),猪熊大之進(市蔵),お米(齊入),百姓吾作(家橘),尼妙林(萬次郎),お柳実は典侍の局(魁春),梶原平三景時(左團次),源義経(梅玉).
義経千本桜を通しでやってその間に海老蔵が13役の早替わりをやろうという,海老蔵奮闘の通し狂言.13役の早替わりはめまぐるしく,時には舞台上に3~4人の海老蔵がいることになったりして,なかなか面白い.
通しを夜の部の実質四時間でやるので内容はダイジェスト版,そこかしこに無理もあるのだが,それでも碇知盛の悲劇性や,狐忠信の愛らしさは素敵だった.
特に碇知盛が海に没した後,早替わりの弁慶が六方を踏んで花道を引っ込み,更に再度知盛の亡霊が現れて宙乗りで消えていく場面は秀逸.
鮓屋の権太手負いの場面,大詰め川連法眼館の場での動き回る金襖をかいくぐって4役が争闘するスペクタクルは,共に早替わりの妙味を堪能できる.
最後は劇場を埋め尽くす桜吹雪に圧倒されて劇場を出た.見応え充分である.
にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2019/07/15

番外:独断的歌舞伎感想文 国立劇場歌舞伎鑑賞教室 車引/棒しばり

日記:2019年7月某日
国立劇場歌舞伎鑑賞教室「菅原伝授手習鑑 車引」「棒しばり」を見る.20197kabukiomote2-1
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作.「菅原伝授手習鑑 (すがわらでんじゅてならいかがみ) 一幕」.出演:舎人松王丸(尾上松緑),舎人梅王丸(坂東亀蔵),舎人桜丸(坂東新悟),舎人杉王丸(尾上左近),藤原時平(中村松江).岡村柿紅=作.「棒しばり(ぼうしばり) 長唄囃子連中)」.出演:次郎冠者(尾上松緑),太郎冠者(坂東亀蔵),曽根松兵衛(中村松江).
車引は,この様式的荒事が若い出演者では舞台が支配できないのか,いささか退屈,何度か爆睡した.一方棒しばりは松緑・亀蔵の踊りが達者で伸びやか,間断することなく最後まで踊りきって,まことに見応えあり.
公演後のアフタートークもなかなか良い雰囲気で実に楽しかった.終演17時半頃.Img_20190715_172723 Img_20190715_170213

| コメント (0)

2019/07/14

番外:独断的歌舞伎感想文 七月大歌舞伎 昼の部 高時/西郷と豚姫/素襖落/外郎売り

日記:2019年7月某日
歌舞伎座で「七月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza201907h_517d6d1345c796d525d57e36
河竹黙阿弥 作.「一、新歌舞伎十八番の内 高時(たかとき)」.出演:北条高時(右團次),愛妾衣笠(児太郎),安達三郎(九團次),渚(梅花),秋田入道(寿猿),大佛陸奥守(市蔵).池田大伍 作,久保田万太郎 演出,今井豊茂 演出.「二、西郷と豚姫(さいごうとぶたひめ)」.出演:お玉(獅童),大久保市助(権十郎),芸妓岸野(児太郎),舞妓雛勇(梅丸),同心新蔵(國矢),同心兵馬(左升),仲居頭おふく(歌女之丞),廻しの男留吉(橘三郎),中村半次郎(歌昇),西郷吉之助(錦之助).福地桜痴 作.「三、新歌舞伎十八番の内 素襖落(すおうおとし)」.出演:太郎冠者(海老蔵),次郎冠者(友右衛門),姫御寮(児太郎),鈍太郎(市蔵),三郎吾(権十郎),大名某(獅童).野口達二 改訂.「四、歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり) 堀越勸玄早口言立て相勤め申し候」.出演:外郎売実は曽我五郎(海老蔵),貴甘坊(堀越勸玄),小林朝比奈(獅童),小林妹舞鶴(児太郎),遊君亀菊(梅丸),遊君喜瀬川(廣松),梶原平次景高(九團次),茶道珍斎(市蔵),梶原平三景時(家橘),化粧坂少将(雀右衛門),大磯の虎(魁春),工藤祐経(梅玉).
高時は鎌倉幕府最後の執権・高時の物語.高時が,右團次の特有の台詞回しでなかなか似合っているのと,天狗の群舞が舞台を圧するスペクタクルで,面白く見た.
「西郷と豚姫」は,獅童の豚姫が好演.西郷が共に死のうと言ってくれる場面では涙を禁じ得ない.久光公の勘気がとけ西郷が勇躍立っていく別れのシーンも良い.この2編は初見だが印象に残った.
素襖落は海老蔵の踊りで判り易い.
外郎売りは堀越勸玄の独壇場で,この年で本格的な台詞回しで早口言い立てをやってのけるのだから大手柄.1907kabukiza_tokubetsu_uirou_abz 1907kabukiza_tokubetsu_uirou_kag
出ずっぱりの児太郎(愛妾,芸者,姫御寮,舞鶴)もそれぞれに美しく素敵.演目の組み合わせも面白く,楽しい昼の部だった.

| コメント (0)

2019/07/10

独断的映画感想文:カメラを止めるな

日記:2019年7月某日
映画「カメラを止めるな」を見る.
2017年.監督・脚本:上田慎一郎.1_20190710220501
出演:濱津隆之(日暮隆之),真魚(日暮真央),しゅはまはるみ(日暮晴美),長屋和彰(神谷和明),秋山ゆずき(松本逢花).
映画の冒頭から始まる37分間のノンストップノーカットの映像.山奥の廃墟でゾンビ映画を撮っている撮影隊,撮影中本物のゾンビが現れてスタッフは次々にゾンビ化,現場は大混乱に陥るが,監督は本当の映像が撮れるとばかりに撮影を続行する.やがて殆どのスタッフが死に絶え,呪いの五芒星の中央で立ちすくむヒロインの姿で映像は終わる….3_20190710220501
この後から始まる1ヶ月前の出来事,日暮は「早い,安い,そこそこ」を売りとする映像作家.新しく立ち上がったゾンビ専門チャンネルから,開局記念にノーカット生放送のゾンビドラマの作成を依頼される.この無茶苦茶な依頼を引き受けた日暮だが,集まってきたのは癖のあるキャスト・スタッフばかり,元女優の妻・監督志望の娘が心配するなか,遂に撮影当日が来る….2_20190710220501
この映画はゾンビ映画の形態を取っているが,実際はミステリーである.
3部構成となっていて,第1部最初の37分間はミステリで言えば「犯罪」の提示である.第2部は展開部で,登場人物それぞれの紹介がここで行われる.第3部は放映当日の現場の状況を描く映像で,第1部で提示された「犯罪」の解決編にあたる.
即ち,第1部で示されたいささか変な構成や違和感ある展開と,全体としてはB級映画のチープ感あふれる映像が,第3部ではどのようなスタッフの離れ業で提供されたかが明らかにされる.
この様に観客の期待を裏切る映画も希有であろう.5_20190710220501
つまりチープなB級作品と思えた映像は,最終的には提示された伏線を全て解決し,しかも映画というものの本来の魅力を観客の心にしっかり焼き付けるからだ.大笑いしながら解決編を見ていた観客は,ラストシーンで折り重なったキャスト・スタッフの一群のシーンを見たとき,大きな感動を覚えるであろう.4_20190710220501
映画への熱い想いを共有できるという点でも希有な映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2019/07/05

独断的映画感想文:ミッション:インポッシブル/フォールアウト

日記:2019年7月某日
映画「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」を見る.1_20190709164401
2018年.監督:クリストファー・マッカリー.
出演:トム・クルーズ(イーサン・ハント),ヘンリー・カヴィル(オーガスト・ウォーカー),ヴィング・レイムス(ルーサー・スティッケル),サイモン・ペッグ(ベンジー・ダン),レベッカ・ファーガソン(イルサ・ファウスト),ショーン・ハリス(ソロモン・レーン),アンジェラ・バセット(エリカ・スローン),ヴァネッサ・カービー(ホワイト・ウィドウ),ミシェル・モナハン(ジュリア),アレック・ボールドウィン(アラン・ハンリー),ウェス・ベントリー(パトリック),フレデリック・シュミット(ゾラ).2_20190709164401
人気シリーズの第6作.
愛妻ジュリアとの結婚式に犯罪組織「シンジケート」のボス:レーンが現れる悪夢から目覚めたIMFエージェントのイーサン・ハント,盗まれた3個のプルトニウム爆弾奪回のためベルリンに飛ぶ.マフィアからこの爆弾を買い取る受け渡し現場で,「シンジケート」の残党アポストルに襲われたハントは,同僚ルーサーを救っている間に爆弾を奪われてしまう.
IMFに不信感を持ったCIA長官は介入し,部下のウォーカーにハントと共同行動を取るように命じる.2人はパリのパーティー会場で謎の男ラークがホワイト・ウィドウと名乗るブローカーから爆弾を買い取るとの情報を得,その会場に潜入,ラークを補足するが逆襲される.間一髪MI6のルイサがハントを救うが,ラークは射殺される.5_20190709164401
止むなくラークになりすましたハントはウィドウと接触し契約に成功,手付けに爆弾1個を回収するが,あと2個の引き渡しは捕縛されているレーンを脱獄させることが条件となる.ハントは奇策を使って誰も殺さずにレーンの奪取に成功するが,合流してきたIMF長官ハンリーから,CIAはハントこそがジョン・ラークであると疑い証拠も掴んでいるという話を聞く….3_20190709164401
アクションに次ぐアクション,謀略に次ぐ謀略,どんでん返しの連続と,147分の長尺終わる頃には最初のエピソードはもう飛んでいる.
後から考えるとこのエピソードは伏線として生きていないんじゃないかとか,何故このアクションをする必然があったのかとかいう話だらけだが,映画見ている間はもう夢中,そんなことに気付くどころじゃありません.最後までトム・クルーズに持って行かれます.とにかく映画とアクションに賭けるトム・クルーズの執念にはひれ伏すしかない.
でも脚本はもうちょっと整理できなかったかな.最後には誰が敵か味方かすら分からなくなった.エピローグでのジュリアとルイサのエピソードが良かったけど.7_20190709164401 6_20190709164401
★★★☆(★5個が満点).
にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ

| コメント (0)

2019/07/02

番外:独断的歌舞伎感想文 巡業東コース松竹大歌舞伎 引き窓/かさね

日記:2019年7月某日
北とぴあで巡業東コース松竹大歌舞伎を見る.Jungyo_h_f537663a062c478a4711ec18e708c00
「一、二代目松本白鸚,十代目松本幸四郎 襲名披露 口上(こうじょう)」.幸四郎改め松本白鸚,染五郎改め松本四郎,幹部俳優出演.「二、双蝶々曲輪日記 引窓(ひきまど)」.出演:南与兵衛後に南方十次兵衛(染五郎改め松本幸四郎),女房お早(市川高麗蔵),三原伝造(大谷廣太郎),母お幸(松本幸雀),平岡丹平(松本錦吾),濡髪長五郎(幸四郎改め松本白鸚).「三、色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)かさね」.出演:かさね(市川猿之助),与右衛門(染五郎改め松本幸四郎).
白鸚・幸四郎の襲名興行もこれが最終か.口上もすっかりくつろいだ調子で,「ご当地王子の皆様」を持ち上げ楽しい雰囲気.引き窓は親子共演,かさねは同世代共演で,どちらも見応えあり.特に猿之助・幸四郎のかさねは,美しい男女の色模様から凄惨な殺しのシーンまで,息のあった踊りで素敵だった.
ところで両狂言とも,花道からむしろにくるまって主人公が出てくるという出だしで始まる.片方は白鸚(濡髪)で,片方は幸四郎(与右衛門).これもなんだか可笑しい.
にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ

| コメント (0)

« 2019年6月 | トップページ | 2019年8月 »