独断的映画感想文:カメラを止めるな
日記:2019年7月某日
映画「カメラを止めるな」を見る.
2017年.監督・脚本:上田慎一郎.
出演:濱津隆之(日暮隆之),真魚(日暮真央),しゅはまはるみ(日暮晴美),長屋和彰(神谷和明),秋山ゆずき(松本逢花).
映画の冒頭から始まる37分間のノンストップノーカットの映像.山奥の廃墟でゾンビ映画を撮っている撮影隊,撮影中本物のゾンビが現れてスタッフは次々にゾンビ化,現場は大混乱に陥るが,監督は本当の映像が撮れるとばかりに撮影を続行する.やがて殆どのスタッフが死に絶え,呪いの五芒星の中央で立ちすくむヒロインの姿で映像は終わる….
この後から始まる1ヶ月前の出来事,日暮は「早い,安い,そこそこ」を売りとする映像作家.新しく立ち上がったゾンビ専門チャンネルから,開局記念にノーカット生放送のゾンビドラマの作成を依頼される.この無茶苦茶な依頼を引き受けた日暮だが,集まってきたのは癖のあるキャスト・スタッフばかり,元女優の妻・監督志望の娘が心配するなか,遂に撮影当日が来る….
この映画はゾンビ映画の形態を取っているが,実際はミステリーである.
3部構成となっていて,第1部最初の37分間はミステリで言えば「犯罪」の提示である.第2部は展開部で,登場人物それぞれの紹介がここで行われる.第3部は放映当日の現場の状況を描く映像で,第1部で提示された「犯罪」の解決編にあたる.
即ち,第1部で示されたいささか変な構成や違和感ある展開と,全体としてはB級映画のチープ感あふれる映像が,第3部ではどのようなスタッフの離れ業で提供されたかが明らかにされる.
この様に観客の期待を裏切る映画も希有であろう.
つまりチープなB級作品と思えた映像は,最終的には提示された伏線を全て解決し,しかも映画というものの本来の魅力を観客の心にしっかり焼き付けるからだ.大笑いしながら解決編を見ていた観客は,ラストシーンで折り重なったキャスト・スタッフの一群のシーンを見たとき,大きな感動を覚えるであろう.
映画への熱い想いを共有できるという点でも希有な映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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