独断的映画感想文:女王陛下のお気に入り
日記:2019年9月某日
映画「女王陛下のお気に入り」をみる. 2018年.監督:ヨルゴス・ランティモス.
出演:オリヴィア・コールマン(アン女王),エマ・ストーン(アビゲイル・ヒル),レイチェル・ワイズ(レディ・サラ),ニコラス・ホルト(ロバート・ハーリー),ジョー・アルウィン(サミュエル・マシャム),マーク・ゲイティス(モールバラ公(ジョン・チャーチル)),ジェームズ・スミス(ゴドルフィン). 18世紀初頭・アン女王の治世,イギリスがフランスとの戦争状態にあった時代.実父に賭博のかたでドイツ人に売られたアビゲイルは,従姉妹のレディ・サラのもとに転げ込み女中として採用される.レディ・サラ・モールバラはアン女王の同窓生,頭脳明晰で判断力抜群,アン女王の信頼厚くイングランドの政策は実質彼女が背負っていた.夫のモールバラ公はフランス遠征軍の指揮官である.
アビゲイルはレディ・サラの侍女として薬草の知識で女王の痛風の治療に貢献,女王の信頼を得る.更にアビゲイルは,本を探しに忍び込んだレディ・サラの自室で,サラと女王の愛を交わす現場を目撃してしまう…. 女王とその寵愛を争う女性2人の息詰まるやり取りを描く英国時代劇.といっても描写は極めて現代的で,女王へのアプローチに失敗したアビゲイルが「くそっ(FUCK)」と連呼しながら王宮の廊下を歩いて行くシーンには笑ってしまう.
サラとアビゲイルの確執には,スペイン継承戦争の行方とホイッグ党・トーリー党の政権争いも絡み,絶対君主・アン女王のむら気と病勢も影響して,その決着は予断を許さない. 映画は冷静沈着なサラと,激しい感情と強気を前面に押し出すアビゲイルの,対照的な描写が面白い.一方で生まれた全ての子(17人)を失った女王の哀しみと,そこにアビゲイルがつけ込むシーンも心に残る.また,個性的な音楽と暗鬱なイングランドの自然描写も印象的.
まあ,日本では天皇や将軍の性生活や欠点を描く映画を作る自由は事実上ないことを考えると,こういう映画にはことさら魅力を感じるのだろうか.★★★★(★5個が満点).
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