独断的映画感想文:ドッグマン
日記:2019年9月某日
ヒューマントラストシネマ渋谷で映画「ドッグマン」をみる.
2018年.監督:マッテオ・ガローネ.
出演:マルチェロ・フォンテ(マルチェロ),エドアルド・ペッシェ(シモーネ),アダモ・ディオニージ(フランコ),アリダ・カラブリア(アリダ),ラウラ・ピッツィラーニ(元妻).
イタリアのうらぶれた海辺の町で,犬のトリミングサロンを営んでいるマルチェロ.別れた妻との関係はまずまずで,一人娘のアリダをこよなく愛している.腕も良く,町の人とも良好な関係だが,町のごろつきシモネとは腐れ縁が続いている.小柄で気弱なマルチェロは,圧倒的なシモネの暴力に屈服して,たびたび悪事を手伝わされていた.
ある日シモネが,マルチェロの店から壁越しに隣の貴金属商・フランコの店に押し込もうと言い出す.全てを失うことになると必死で反対するマルチェロ,しかしシモネの暴力に止むなく店の鍵を渡してしまう.フランコの店は襲われマルチェロは逮捕されるが….
何とも不条理でやるせない男の物語.シモネは町中の嫌われ者,彼にひどい目に会わされたスロットマシン屋の親父は殺し屋を雇おうとまで言い出すのだが,マルチェロは賛否も明らかにせず黙ったまま.
如何に圧倒的な暴力性があろうと,相手はマフィア組織ではなく一人のごろつきに過ぎない,自身と家族を守るためにはもうちょっと何とかならないのだろうか.そういう観客の思いとは裏腹に,マルチェロは只ひたすら屈従する.
物語の進行と共に,マルチェロはシモネの幼馴染みでは?という感じもしてくるのだ.マルチェロはシモネにヤクを融通しているが,自分だって勿論ヤクをやる.シモネに無理矢理泥棒の手助けを強要されるが,その分け前も(少ないが)しっかりもらっている.シモネと付き合っているといいこともある,そういう関係が少年の頃からできているのではないか.そこにマルチェロの狡さも感じられ,話はますます救いがない.
映画は演出,カメラ,音楽,そして主演:マルチェロ・フォンテの演技を挙げて,この救いの無さを見事に描いている.予告編を見てスカッとするエンディングを予想していたが,果たしてそうなるかどうか,それもお楽しみ.印象に残る映画.★★★★(★5個が満点).
人気ブログランキングへ
コメント